税務調査が来たら何をすべきか——元国税調査官が初動対応から終了まで解説

税務調査は、突然やってくる。

「税務署から連絡が来た」「調査官が来訪すると言われた」——そのとき、あなたはどう動きますか。

大阪国税局・資料調査課出身の税理士として、私(市田)が数多くの調査現場で見てきた経験をもとに、税務調査の初動から終了までを解説します。

1. 税務調査の件数は今どうなっているか

国税庁の公表データによると、令和6事務年度の所得税の調査等の件数は73.6万件(対前年比121.7%)と大きく増加し、追徴税額は1,431億円と過去最高を更新しました。

私が税務弘報2026年3月号(中央経済社)に執筆した論稿でも分析したとおり、この背景にはAIを活用した調査選定の効率化と、「簡易な接触」の大幅な増加があります。

ポイントは、実地調査の件数自体は減少傾向にある一方で、1件当たりの追徴税額が241万円(対前年比107.6%)と高水準にあることです。つまり当局は、件数を絞り込みながら「高額・悪質事案」に集中して深度ある調査を実施しています。

2. 「接触区分」を最初に確認せよ

税務調査の連絡が来たとき、まず確認すべきことがあります。それは「接触区分」です。

税務署からの連絡が、単なる任意の行政指導(簡易な接触)なのか、質問検査権の行使を伴う本格的な実地調査なのかによって、対応の方針が根本的に変わります。

具体的には以下の点を確認します。

  • 担当者の所属部署と役職
  • 調査の目的と対象年分
  • 事前通知の有無と内容

税務署から送付される調査通知書や電話での説明内容を丁寧に確認し、曖昧な場合は担当者に直接確認することが重要です。

3. 調査当日までの準備

実地調査の通知を受けたら、調査日までに以下を整備します。

帳簿・証憑の整理

売上・経費に関する帳簿、領収書、契約書、通帳をすべて揃えます。特に現金商売や水商売の方は、日々の売上記録が調査の焦点になりやすいため、通帳と帳簿の整合性を事前に確認しておくことが重要です。

取引の経緯の確認

調査官は必ず「この取引はどういう経緯でしたか」と聞いてきます。事実関係を時系列で整理し、説明できる状態にしておきましょう。

顧問税理士への連絡

調査に税理士が立ち会う場合、税理士法第30条に基づく「税務代理権限証書」を提出することが必要です。調査当日の前日までに税理士と打ち合わせを行いましょう。

4. 調査当日の対応

調査官が来訪したら、以下の点に注意してください。

同意の上で対応する

資料調査課のような上位部署が来訪した場合でも、基本的には任意調査です。帳簿や書類の確認は、納税者の同意の上で行われます。

質問には正確に答える

知らないことは「わかりません」と答えて構いません。曖昧な記憶で答えることが、後のトラブルの原因になります。

質問応答記録書に注意する

調査官が「質問応答記録書」を作成しようとする場合、その内容を丁寧に確認することが重要です。

私の共著「質問応答記録書のポイントと税理士の対応策」(税務研究会出版局、2025年)でも詳述していますが、質問応答記録書は重加算税の賦課要件を立証するための重要書類として機能します。記載内容が実際の事実関係と乖離していないか、慎重に確認してから署名・押印することが求められます。

5. 重加算税を課されないために

税務調査で最も避けたいのが「重加算税」の賦課です。通常の過少申告加算税(10〜15%)と異なり、重加算税は35〜40%と大幅に重い負担となります。

重加算税が課されるのは「仮装隠蔽行為」がある場合です。具体的には、二重帳簿の作成、架空契約書の作成、売上の意図的な除外などが該当します。

重要なのは、単なる記帳ミスや計算誤りは、仮装隠蔽行為には該当しないという点です。

調査に際して焦りや不安から「事実と異なる説明」をしてしまうことが最も危険です。わからないことは素直に「確認します」と答える姿勢が、結果的に納税者の権利を守ることにつながります。

6. 調査が終わったら

調査終了後には、以下のいずれかの結果が通知されます。

  • 是認(問題なし)
  • 修正申告の勧奨
  • 更正処分

修正申告を勧奨された場合、応じるかどうかは納税者の判断です。ただし、更正処分に対して不服申立てをする場合は、審査請求や訴訟といった手続きを経ることになるため、時間的・費用的なコストも考慮する必要があります。

まとめ

税務調査は、準備と対応次第で結果が大きく変わります。

  • 接触区分を最初に確認する
  • 帳簿・証憑を丁寧に整備しておく
  • 質問応答記録書の内容を慎重に確認する
  • 事実に基づいた正確な説明をする

この4点を押さえるだけで、不必要な追徴課税を防ぐことができます。

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