YouTuber・インフルエンサーの確定申告と税務調査|元国税調査官が無申告のリスクと対応を解説
著者:市田佳祐(税理士・元大阪国税局 資料調査課)
「YouTubeやInstagramの収入について税務署から連絡が来た」
「これまで確定申告をしてこなかったが、調査が来るのではないかと不安」
「経費としてどこまで認められるのか分からない」
「投げ銭・ギフトの収入はどう申告すればよいのか分からない」
YouTube、Instagram、TikTok、ライブ配信といったインターネット上の活動で収入を得ているYouTuber・インフルエンサーの方からのご相談が増えています。
国税庁は、シェアリングエコノミー等新分野の経済活動を重点的な取組み対象としており、近年では実際に複数のインフルエンサーに対する税務調査・追徴課税の事例が報じられています。
この記事では、YouTuber・インフルエンサーの税務調査の現状、税務調査の連絡を受けたときの対応、無申告の方が今からできること、確定申告で特に論点となる経費・投げ銭などの取扱いを、元国税調査官の立場から整理します。
1. YouTuber・インフルエンサーと税務調査の現状
(1) 国税庁が重点的に取り組むインターネット取引
国税庁は、シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への対応として、電子商取引専門調査チームを設置し、インターネット取引に対する情報収集・調査を強化してきました。
YouTuber・インフルエンサーは、収入の発生経路がインターネット上にあり、複数のプラットフォーム・広告主・代理店が関与するため、国税当局が情報収集・調査の対象として注視している分野です。
(2) 国税庁公表ランキングで「コンテンツ配信」が上位
国税庁が令和7年12月に公表した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」では、事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種のうち、第7位に「コンテンツ配信」がランクインしています(1件当たりの申告漏れ所得金額1,936万円)。
(3) 報じられている調査事例
近年、YouTuber・インフルエンサーに対する税務調査の事例が複数報じられています。
- 東京国税局による調査事例:インフルエンサーの女性9名が、6年間に合計約3億円の申告漏れを指摘され、合計約8,500万円の追徴課税を受けたと報じられました(2023年3月、テレビ朝日等の報道)。
- 大阪国税局による調査事例:企業からの依頼でSNSを活用し商品を宣伝するインフルエンサーの女性に対し、約9,500万円の申告漏れが指摘され、重加算税を含む約4,000万円が追徴課税されたと報じられました。
- YouTuberに対する調査事例:投げ銭などによる約3,600万円の収入が無申告であったYouTuberに対し、約700万円の追徴課税が行われたと報じられました。
国税庁レポート2024でも、無申告の調査事例として、インフルエンサーとして得た多額の利益を認識していたにもかかわらず申告しなかった事例が紹介されています。
(4) 国税庁はどこから情報を把握しているか
YouTuber・インフルエンサーの収入については、SNS上の公開情報や、取引先・プラットフォーム運営会社に関する資料情報などが、収入実態を確認する端緒となることがあります。
具体的な情報経路としては、以下が考えられます。
- 広告主・広告代理店への調査:企業からインフルエンサーへの支払い情報は、法定調書、取引先調査、各種資料情報を通じて税務署に把握されている場合があります
- プラットフォーム運営会社への調査:ライブ配信の運営会社等からの情報
- 第三者からの情報提供:課税・徴収漏れに関する情報提供制度
- 国税庁の電子商取引専門調査チームによる情報収集
「インターネット上の活動だから把握されにくい」という認識は、現在の国税当局の情報収集体制を踏まえると、現実的ではありません。
2. 申告漏れになりやすいYouTube・SNS収入
YouTuber・インフルエンサーの収入源は多岐にわたり、複数の収入を網羅的に把握できていないと、税務調査で売上の計上漏れを指摘される可能性があります。
主な収入源としては、以下のようなものがあります。
- YouTube広告収入(Google AdSense)
- スーパーチャット・スーパーサンクス(投げ銭)
- メンバーシップ収入
- 企業案件(タイアップ広告、商品紹介報酬)
- アフィリエイト収入
- 物販・グッズ販売
- ライブ配信プラットフォームからの収入(投げ銭・ギフト)
- SNS上での企業案件(Instagram、TikTok、X等)
これらの収入の中には、所得税のみならず消費税の課税区分等で個別の検討が必要なものも含まれます。複数のプラットフォームから収入を得ている場合、すべての収入源を整理し、漏れなく申告することが重要です。
事業所得か業務に係る雑所得かの判断
YouTube・SNS収入が事業所得となるか、業務に係る雑所得となるかは、活動の規模、営利性、継続性、反復性、帳簿書類の保存状況などを踏まえて判断されます。
事業所得として申告する場合、日々の取引を記録した帳簿の作成・保存は重要な判断要素となります。帳簿書類を保存していない場合には、事業所得ではなく業務に係る雑所得と判断される可能性が高くなるため注意が必要です。
3. 税務調査の連絡が来たときの対応
(1) まず「接触区分」を見極める
税務署からの連絡を受けたとき、その連絡が正式な「税務調査」なのか、それとも「行政指導」「お尋ね」の段階なのかを見極めることが重要です。
税務署からの接触は一様ではなく、納税者の任意の協力を求める「行政指導」なのか、質問検査権の行使を伴う「税務調査(署内調査・実地調査)」なのかを、初動の段階で明確に区別する必要があります。
この区分の違いによって、加算税の取扱いや修正申告に応じるべきか否かの判断など、採るべき実務上のアプローチが異なるため、初動判断が重要となります。
(2) 事前通知を受けた場合の対応
原則として、税務調査は事前通知が行われたうえで実施されます(国税通則法74条の9)。事前通知では、調査の日時・場所・対象税目・対象期間等が示されます。
事前通知を受けた段階では、以下の対応が重要です。
- 調査対象期間の帳簿・証憑書類の整理
- 過去の申告内容の確認
- 顧問税理士または税務調査対応の経験がある税理士への早期相談
事前通知から実地調査までの期間は、対応を検討する貴重な時間です。この段階で適切な準備を行うことで、調査の進行を冷静に進めることができます。
(3) 無予告調査を受けた場合の対応
事前通知をすることで、正確な課税標準等の把握が困難になるおそれがある場合などには、事前通知を要しない場合があります(国税通則法74条の10)。これがいわゆる無予告調査です。
無予告調査を受けた場合でも、慌てて対応するのではなく、以下を確認します。
- 調査官の身分証明書・質問検査章の確認
- 調査の目的・対象税目・対象期間
- 通常の税務調査(任意調査)なのか、査察・犯則調査に当たるものなのか
なお、無予告で来たからといって、直ちに強制調査という意味ではありません。通常の税務調査は任意調査であり、強制的な権限に基づく査察・犯則調査とは区別して考える必要があります。
無予告調査では、その場の説明や初動対応が後の判断に影響することがあります。記憶が曖昧な事項について断定的に回答したり、内容を十分確認しないまま書面に署名・押印したりすることは避け、必要に応じて税理士に確認しながら対応することが重要です。
(4) 質問応答記録書への対応
税務調査では、調査官が納税者の説明内容を整理した質問応答記録書が作成されることがあります。質問応答記録書は、納税者の説明内容が後の重加算税認定や課税処分の判断に影響することがある重要な書面です。内容を十分確認しないまま署名・押印することは避けるべきです。
4. YouTube・SNS収入が無申告のときに今からできること
(1) 無申告でいるとどうなるか
YouTube・SNSの収入があるにもかかわらず確定申告をしていない場合、税務調査で無申告が把握されると、本来納付すべき税額に加えて無申告加算税、延滞税等が課されます。
無申告加算税は、申告の時期や調査通知の有無、更正等を予知していたかどうかによって税率が異なります。例えば、税務署からの調査の事前通知前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は原則5%に軽減されます。一方、税務調査により無申告が把握された後など、更正等を予知してされた期限後申告の場合には、より高い割合の無申告加算税が課されます。
さらに、隠蔽・仮装の事実があった場合には、無申告加算税に代えて重加算税が課されます(国税通則法68条2項)。重加算税は、過少申告加算税に代えて課される場合は原則35%、無申告加算税に代えて課される場合は原則40%とされ、過去5年以内に一定の無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合には、さらに加重されることがあります。
(2) 自主的な期限後申告のメリット
無申告の状態を放置するのではなく、税務調査の連絡が来る前に自主的に期限後申告を行うことには、メリットがあります。「調査の連絡が来てから慌てて申告する」のではなく、自主的に過去分を整理して申告する方が、結果として税負担を抑えられる可能性があります。
(3) 過去分の申告で気をつけるべきこと
過去分の申告を行う場合、以下の点に注意が必要です。
- 収入の網羅性の確認(複数のプラットフォームからの収入をすべて把握する)
- 経費の整理(業務との関連性を客観的に立証できる資料の整備)
- 消費税の課否判定(課税売上高やインボイス登録の有無等によって申告義務が生じることがあります)
- 住民税・国民健康保険料への影響
特に、無申告期間が複数年に及ぶ場合、過去分の整理は専門的な判断を要します。早期に税理士に相談することで、適切な処理を進めることができます。
5. YouTuber・インフルエンサーで重加算税が論点となるケース
(1) どのような行為が「隠蔽・仮装」に該当するか
重加算税は、国税通則法68条に基づき、事実の隠蔽または仮装があった場合に、通常の加算税に代えて課される重いペナルティです。
YouTuber・インフルエンサーの調査で重加算税が論点となり得るケースとしては、以下のような行為が挙げられます。
- 収入の一部を意図的に申告しない
- 収入を別人名義の口座で受け取り、隠蔽する
- 架空の経費を計上する
- 私的支出であることを認識しながら、業務経費であるかのように装って計上する
- 調査時に帳簿書類を破棄・隠匿する
もっとも、「申告書に少ない金額を書いたこと」自体は、隠蔽・仮装ではないとされています。最高裁判例でも、過少申告行為そのものとは別に、隠蔽・仮装と評価すべき行為が存在することが必要とされています。
ただし、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがわせる特段の行動がある場合には、重加算税の要件を満たすと判断されることがあります(最高裁平成6年11月22日判決、最高裁平成7年4月28日判決)。
(2) 重加算税が課された場合の影響
重加算税が課された場合の影響は、税負担だけにとどまりません。
- 税負担:過少申告加算税に代えて課される場合は原則35%、無申告加算税に代えて課される場合は原則40%とされ、繰り返しの場合にはさらに加重されることがあります
- 青色申告承認の取消し:青色申告承認の取消事由となる場合があります(必ず取り消されるわけではありません)
- 調査対象期間への影響:重加算税が問題となるような事案では、「偽りその他不正の行為」に該当するかどうかも問題となり、該当する場合には更正・決定の期間が通常より長く、7年となることがあります
- その後の調査対応への影響:重加算税が課された事実は、その後の申告状況や調査対応においても重要な事情として扱われる可能性があります
6. YouTuber・インフルエンサーの確定申告で特に論点となること
(1) 経費の範囲
YouTuber・インフルエンサーの確定申告で最も論点となりやすいのが経費の範囲です。経費として認められるかは、総収入金額を得るため直接要した費用か、または業務遂行上必要な費用といえるかが基本となります。
主な論点は以下のとおりです。
- 撮影機材(カメラ、マイク、照明等):業務専用であれば全額経費。プライベートとの兼用がある場合は按分が必要
- 動画編集ソフト:業務での使用が明確であれば経費
- 衣装・コスメ:撮影時のみの使用が立証できれば経費。私物兼用の場合は否認されることもある
- 食事代・旅行代:業務との関連性が客観的に立証できる場合に限り経費。グルメ系・旅行系のチャンネルでも、すべてが経費として認められるとは限らない
- 自宅家賃の按分:撮影スペースとして使用している部分を、合理的な基準(面積按分等)で計上
- 通信費:業務での使用割合に応じて按分
プライベート利用と混在する家事関連費については、業務に必要な部分を合理的に区分できることが重要です。税務調査では、これらの経費の業務関連性が個別に確認されることがあります。撮影記録、業務との関連性を示す資料、按分の合理的根拠を整備しておくことが重要です。
(2) 物販・グッズ販売の収入
YouTuber・インフルエンサーの中には、グッズ販売、書籍出版、オンラインサロン運営など、複数の収入源を持つ方が増えています。
物販・グッズ販売については、売上の計上時期、在庫管理、仕入・販売手数料の処理に加え、課税売上高やインボイス登録の有無によって消費税の申告義務が問題となることがあります。
(3) ライブ配信の投げ銭・ギフト
ライブ配信プラットフォームでの投げ銭・ギフトによる収入も、確定申告の対象となります。YouTubeのスーパーチャット・スーパーサンクス、その他のライブ配信プラットフォームからの収入も、同様に申告対象となります。
「投げ銭は個人的な贈与だから申告不要」という認識は、税務上の取扱いとは整合しないため注意が必要です。
(4) Google AdSense等の海外プラットフォームからの収入
Google AdSenseなど海外プラットフォームを通じた広告収入については、取引の相手方、契約関係、役務提供の内容により消費税区分の判定が問題となります。国内企業からの企業案件や物販収入とは取扱いが異なる場合があるため、収入源ごとに区分して整理する必要があります。
7. 早期に税務調査の経験がある税理士に相談すべき理由
YouTuber・インフルエンサーの税務調査・無申告対応は、複数の専門的論点が絡む分野です。早期に税務調査の経験がある税理士に相談することには、以下のメリットがあります。
- 接触区分の見極め:税務署からの連絡が「調査」か「行政指導」かを正確に判断
- 調査開始前の準備:帳簿・証憑書類の整理、論点の事前検討
- 質問応答記録書への対応:後の重加算税認定に影響する文書への適切な対応
- 無申告対応・経費判断・消費税判定:過去分の申告での実務的な論点整理
特に、調査の初期段階の対応が、最終的な結論を大きく左右します。「調査が進んでから相談する」のではなく、調査の連絡を受けた段階、または無申告に気づいた段階で早期に相談することが重要です。
YouTuber・インフルエンサーの税務調査・確定申告でお困りの方へ
以下のような状況の方は、できるだけ早くご相談ください。
- YouTube・SNSの収入について税務署から連絡が来た
- YouTube・SNSの収入があるが、これまで確定申告をしていない
- 過去分の確定申告(期限後申告)を検討している
- 経費の範囲(撮影機材・自宅家賃按分等)の判断に迷っている
- 調査官から重加算税の指摘を受けている、または可能性を示唆されている
大阪国税局・資料調査課出身の税理士が、YouTuber・インフルエンサーの税務調査・無申告対応をサポートします。調査の初期段階での対応が、最終的な結論を大きく左右します。
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引用・参考文献
・国税通則法65条(過少申告加算税)、66条(無申告加算税)、68条(重加算税)、74条の9(事前通知)、74条の10(事前通知の例外)
・国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
・国税庁レポート2024「適正・公平な課税・徴収」
・国税庁「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応について」
・国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」
・国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」
・国税庁タックスアンサーNo.6501「納税義務の免除」
・国税庁「所得税基本通達の制定について」の一部改正(法第35条「雑所得」関係)
・最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁)
・最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
・市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年)
・市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)
・東京国税局によるインフルエンサー調査事例:テレビ朝日等の報道(2023年3月)
・大阪国税局によるインフルエンサー調査事例:日本経済新聞等の報道
・動画配信収入に係る無申告事例:日税ジャーナル「動画配信による収入を無申告 重加算税となった決め手は?」等
著者:市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。元大阪国税局・資料調査課勤務。インターネット取引、無申告、重加算税、国際課税・富裕層案件など、税務調査リスクの高い分野を中心に税務サポートを提供。共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。

