税務調査で「重加算税になる」と言われたら|元大阪国税局・資料調査課の税理士が判断基準と対応を解説

著者:市田佳祐(税理士・元大阪国税局 資料調査課)

「税務調査で『これは重加算税になる』と調査官に言われた」
「『悪質だ』『仮装隠蔽だ』という言葉を使われた」
「修正申告に応じれば重加算税にしないと言われたが、本当に応じてよいのか」

税務調査でこのような状況になっている経営者の方からのご相談が増えています。重加算税は、追徴税額のうち隠蔽・仮装に基づく部分の税額を基礎として、過少申告の場合は原則35%、無申告の場合は原則40%の割合で課されます。さらに過去5年以内に、同じ税目について一定の無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合には10%が加重され、最大で50%となることもあります。資金繰りへの影響も大きく、絶対に避けたい論点です。

しかし、調査官から「重加算税になる」と言われたケースのすべてが、実際に重加算税の要件を満たしているとは限りません。本来は重加算税の要件を満たさない事案でも、調査時の虚偽答弁や、質問応答記録書での不用意な認定により、隠蔽・仮装があったと評価されるリスクがあります。

この記事では、税務調査で重加算税が論点となっている方、これから調査を控えていて過去の処理に不安がある方に向けて、「自分の場合は本当に重加算税の対象になるのか」を判断するためのポイントを、元国税調査官の立場から整理します。


Table of Contents

1. まず確認すべき——重加算税の要件は意外と厳しい

調査官から「重加算税になる」と言われた段階では、まだ確定していません。重加算税の要件は、税法上、意外と厳しく定められています

(1) 「隠蔽または仮装」がなければ重加算税にならない

国税通則法68条1項は、過少申告加算税に代えて課される重加算税の要件として、「事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」と定めています(無申告型の重加算税は同条2項、不納付型の重加算税は同条3項)。

つまり、単に申告内容に誤りがあっただけでは重加算税にはなりません。積極的に事実を隠したり、虚偽の事実を作り出したりした行為が必要です。

(2) 「過少申告したこと」自体は隠蔽・仮装にならない

重要なポイントとして、「申告書に少ない金額を書いたこと」自体は、隠蔽・仮装ではないとされています。最高裁判例でも、「重加算税を課するためには、過少申告行為そのものとは別に、隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する」と判示されています。

調査官が「過少申告の意図があった」というだけでは、重加算税の要件は満たしません。過少申告とは別の、隠蔽・仮装行為があるかどうかが問題となります。

もっとも、架空名義の利用や資料の隠匿のような典型的な積極行為がない場合でも、当初から過少申告を意図し、その意図を外部からうかがわせる特段の行動がある場合には、重加算税の要件を満たすと判断されることがあります(最高裁平成6年11月22日判決、最高裁平成7年4月28日判決)。


2. 重加算税の対象になる典型例

国税庁の事務運営指針「法人税の重加算税の取扱いについて」では、「隠蔽または仮装」の典型例が示されています。実際にこれらの行為があるかどうかが、重加算税の判断の出発点になります。

(1) 二重帳簿を作成していた

真実の取引を記録した帳簿とは別に、税務申告用の虚偽の帳簿を作成していた場合は、典型的な仮装行為です。

(2) 帳簿書類を破棄・隠匿していた

帳簿、原始記録、請求書、領収書、契約書などを破棄・隠匿していた場合は、隠蔽行為に該当し得ます。また、調査時に帳簿書類を隠したり、虚偽の回答をしたりする行為は、重加算税認定の重要な証拠となるだけでなく、別途罰則の問題が生じる可能性もあります。

(3) 帳簿書類を改ざん・虚偽記載していた

帳簿書類への虚偽記載、改ざん(偽造・変造を含む)、相手方との通謀による虚偽の証憑書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算などは、仮装行為に該当します。

(4) 売上を意図的に除外していた

売上の一部を意図的に帳簿に計上しない、現金売上を除外する、別口座に入金していたなどの行為は、隠蔽行為に該当します。

(5) 架空経費を計上していた

実在しない取引を経費として計上したり、架空の人物への支払いを計上したりする行為は、仮装行為に該当します。

(6) 名義の借用・架空名義の使用

合理的な理由なく他人名義や架空名義を使用して取引や口座開設を行う行為も、仮装行為とされる場合があります。


3. 重加算税の対象にならない可能性があるケース

一方で、調査官から「重加算税になる」と指摘されても、実際には要件を満たさず、過少申告加算税にとどまる可能性があるケースもあります。

(1) 計算ミス・勘定科目の誤り・見落とし

意図性がなく、かつ隠蔽・仮装と評価される外形的事実が伴わない誤りは、重加算税の対象になりません。たとえば、消費税の課税区分を間違えていた、減価償却の計算を誤っていた、経費計上の時期を誤っていたなどは、原則として過少申告加算税の対象です。

国税庁の事務運営指針でも、売上等の繰延べが翌期に収益計上されている場合や、経費の繰上計上で翌期支出が確認できる場合などは、相手方との通謀や証憑書類の破棄・隠匿・改ざん等がなければ、隠蔽・仮装に該当しないと整理されています。

(2) 税法・通達の解釈の相違

「この支出は経費になると考えていた」「この処理が正しいと考えていた」など、納税者と課税庁の解釈が異なるだけのケースは、重加算税の対象になりません。

(3) 隠蔽・仮装と評価すべき行為が存在しない場合

過少申告の事実があっても、それとは別の隠蔽・仮装行為が存在しない場合には、重加算税の要件を満たしません。「意識的な過少申告」というだけでは要件を満たさないと判断された裁決例も複数あります。

(4) 税理士・従業員が行った場合

税理士や経理担当者などが行った隠蔽・仮装行為については、その者の地位・権限、納税者との意思連絡、選任・監督状況、納税者が認識または容易に認識できたか等を踏まえ、納税者本人の行為と同視できるかが問題となります。

本人と同視できないと判断されれば、納税者本人への重加算税賦課が取り消される可能性もあります。ただし、これは個別事情の立証が必要で、簡単に認められるものではありません。


4. 「重加算税になる」と言われたときに確認すべきこと

調査官から重加算税の指摘を受けた段階では、以下の点を冷静に確認することが重要です。

(1) 調査官が指摘している「隠蔽・仮装」の具体的内容は何か

「悪質だ」「仮装隠蔽だ」という抽象的な指摘だけでは、重加算税の要件を満たしません。具体的にどの行為が隠蔽・仮装に該当するのかを明確にする必要があります。

(2) 過少申告とは別の積極的な行為があるか

申告内容が誤っていたという事実とは別に、帳簿の改ざん、二重帳簿、虚偽証憑、名義の借用などの具体的な行為があるかを確認します。

(3) 客観的な証拠は何か

重加算税の認定には、客観的な証拠が必要です。調査官の心証や推測だけで認定されるものではありません。どのような証拠に基づいて指摘しているのかを確認します。

(4) 質問応答記録書の内容

調査官が作成する質問応答記録書は、後の重加算税認定に大きな影響を与えます。記録書の内容を十分に確認せず署名・押印してしまうと、本来であれば争えたはずの論点まで認めてしまう結果になることがあります。


5. 「修正申告すれば重加算税にしない」と言われたとき

税務調査の現場で時折みられるのが、「修正申告に応じれば重加算税にはしない」「素直に認めれば軽減する」といった調査官側からの提案です。

これは慎重に対応すべき場面です。

(1) 修正申告と更正処分の違い

修正申告は納税者が自ら申告内容を修正するもので、その修正申告に係る再調査の請求や審査請求はできません。ただし、要件を満たせば更正の請求ができる場合はあります。

一方、更正処分は税務署が課税内容を決定する処分で、不服申立てや訴訟が可能です。

つまり、納得できないまま修正申告に応じると、争う手段が大きく制限されます

(2) 重加算税の認定は「事実」で決まる

重加算税が課されるかどうかは、客観的な事実(隠蔽・仮装行為があったかどうか)で決まるべきものであり、納税者が修正申告に応じるかどうかで決まるものではありません。本来重加算税の要件を満たさない事案であれば、修正申告に応じないことだけを理由に重加算税が課されるべきではありません

(3) 早期解決のメリットとリスクの両方を考える

もちろん、争いを長引かせるよりも早期に解決した方がよいケースもあります。重要なのは、事実関係と法令を踏まえた上で、納得して判断することです。判断材料が不十分な状態で修正申告に応じることは避けるべきです。


6. 重加算税が課された場合の影響

重加算税が課されると、税負担以外にも複数の影響が生じます。判断にあたって押さえておくべき影響を整理します。

(1) 税負担

重加算税の税率は、過少申告の場合で原則35%、無申告の場合で原則40%です。さらに過去5年以内に、同じ税目について一定の無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合には10%が加重され、過少申告型の重加算税は45%、無申告型の重加算税は50%となることがあります。

なお、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税については、一定期間繰り返し無申告が行われた場合にも、無申告型の重加算税が50%となる場合があります(令和5年度税制改正)。

本税に加えてこれだけの負担が生じるため、事案によっては資金繰りに重大な影響を及ぼします。

(2) 青色申告承認の取消し

重加算税の対象となる行為は、青色申告承認の取消事由となる場合があります。青色申告承認が取り消されると、個人の場合は青色申告特別控除など、法人の場合は取消後の事業年度に生じる欠損金の取扱いなど、青色申告に基づく各種特典に影響が生じます。

もっとも、既に発生している欠損金の繰越控除などは、発生年度や申告状況により取扱いが異なるため、個別確認が必要です。

(3) 調査の遡及期間の延長

通常の税務調査の遡及期間は5年ですが、不正があった場合(偽りその他不正の行為)は7年に延長されます。重加算税の対象となる行為は、この遡及期間延長の対象となる場合があります。

(4) 今後の調査での見られ方

過去に重加算税を課された事業者は、今後の税務調査でも厳しく見られる傾向があります。これは継続的な事業運営に影響します。


7. 重加算税が論点となる事案で重要なこと

税務調査で重加算税が論点となっている場合、または論点となる可能性がある場合、以下の対応が重要です。

(1) 早期に税務調査の経験がある税理士に相談する

重加算税の認定は、調査の初期段階の対応で大きく変わります。調査が進んで質問応答記録書が作成された後では、争える論点が大幅に減ってしまいます。

(2) 質問応答記録書には慎重に対応する

記憶が曖昧な事項について断定的に回答しない、内容を十分確認しないまま署名・押印しないことが重要です。私自身、共著『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年)でも整理しましたが、質問応答記録書の内容は後の課税処分や重加算税認定に大きな影響を与えます。

(3) 隠蔽・仮装の具体的事実を整理する

調査官が指摘している「隠蔽・仮装」の具体的内容を整理し、本当に要件を満たすのかを冷静に検討します。事実関係と法令・判例を照らし合わせれば、重加算税ではなく過少申告加算税にとどまる可能性が見えてくる場合もあります。

(4) 修正申告か更正処分かの選択を慎重に

修正申告に応じれば早期解決にはなりますが、その修正申告に係る再調査の請求や審査請求はできなくなり、争う手段が大きく制限されます納得できる結論かどうかを慎重に判断する必要があります。


税務調査で重加算税を指摘されている方へ

以下のような状況の方は、できるだけ早くご相談ください。

  • 調査官から「これは重加算税になる」「悪質だ」「仮装隠蔽だ」と言われている
  • 「修正申告に応じれば重加算税にしない」と言われ、判断に迷っている
  • 質問応答記録書への署名を求められている
  • 過去の売上計上漏れ・経費計上について調査で指摘されている
  • 税務調査の事前通知を受けて、過去の処理に不安がある
  • 顧問税理士はいるが、税務調査対応の経験が浅いと感じている

大阪国税局・資料調査課出身の税理士が、重加算税が論点となる事案への対応をサポートします。調査の初期段階での対応が、最終的な結論を大きく左右します

顧問税理士がいる方の調査立会いのみのご依頼も可能です。ご依頼内容に応じて、当事務所での対応または提携する国税OB税理士のネットワークを活用し、最適な対応を提供します。

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引用・参考文献
・国税通則法68条(重加算税)
・国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
・財務省「令和5年度税制改正関係資料(一定期間繰り返し行われる無申告行為に対する無申告加算税等の加重措置)」
・最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁)
・最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
・市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年)

著者:市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表。元大阪国税局・資料調査課勤務。税務調査、水商売・夜職、暗号資産、せどり等のインターネット取引、国際課税・富裕層案件など、税務調査リスクの高い分野を中心に税務サポートを提供。