KSK2とは何か——令和8年導入の新システムが税務調査に与える影響を元国税調査官が解説

令和8年中に国税庁の基幹システムが刷新されます。

「KSK2」——この名称を聞いたことがある方は少ないかもしれません。しかし、このシステムの導入は納税者にとって無視できない変化をもたらします。元国税調査官として、KSK2の実態と税務調査への影響を解説します。

1. KSKとKSK2とは何か

KSKとは「国税総合管理システム」の略称で、国税庁が全国の申告・納税データを一元管理するための基幹システムです。現行のKSKは平成14年に全国展開されて以来、約20年以上にわたり国税行政の根幹を支えてきました。

そのKSKの後継システムとして令和8年中に導入が予定されているのがKSK2です。

私が税務弘報2026年3月号(中央経済社)に執筆した論稿でも分析したとおり、KSK2の導入は「経験則」から「データ活用」への転換を決定的なものにします。

2. KSK2で何が変わるのか

KSK2の本質は「データ中心の事務処理」と「課税・徴収の効率化・高度化」を推進する基盤となることです。具体的には以下の3点が変わります。

(1)調査対象の選定精度が飛躍的に向上する

現行のKSKでも申告データの分析は行われていますが、KSK2ではAIを活用したデータ分析が標準化されます。申告書の数字だけでなく、各種情報源から収集した情報を組み合わせることで、申告漏れの可能性が高い納税者をより精度高く絞り込めるようになります。

調査官の「経験と勘」に頼った選定から、データに基づく科学的な選定へ——この転換が、KSK2の最も大きな意味です。

(2)内部事務のセンター化が全署で実現する

令和8事務年度には内部事務センター化の全署実施が見込まれています。センター化によって確保した事務量は、「実地調査や徴収のほか、行政指導やデータ分析など、環境変化に適切に対応するための事務量に充てる」とされており、調査に振り向けられる人的資源が増加することが見込まれます。

(3)管理対象者だけでなく関係する個人・法人も一体管理される

KSK2は「管理対象者だけでなく、関係する個人及び法人も含めて継続的・一体的に管理する」という富裕層管理の根幹を、データ活用の面から強力に後押しする基盤となります。

これは特に富裕層調査において、個人と法人をグループとして把握し、関係者全体の資産・所得を横断的に管理することを意味します。

3. 納税者への影響——何が変わるのか

KSK2の導入によって、納税者の視点から見て最も重要な変化は「調査選定の精度向上」です。

これまでは「自分のような小規模な事業者に調査は来ない」という安心感があったかもしれません。しかしデータ活用による選定の高度化が進むと、規模の大小にかかわらず、申告内容に不審点があれば選定対象になりやすくなります。

また、簡易な接触(税務署からの文書・電話による連絡)の件数増加も見込まれます。KSK2導入に伴い、申告内容を精緻に分析した上で、コンプライアンスリスクに応じて実地調査と簡易な接触を使い分ける運用がさらに徹底されるからです。

4. KSK2導入後も変わらないこと

一方で、KSK2の導入をもって直ちに調査事務運営が一変するような劇的な変化は生じないとも考えられます。

システムが刷新されても、現場職員の習熟には相応の時間を要します。また、データ活用による選定が高度化しても、日々の適正な記帳と誠実な申告という基本的な対応策は何も変わりません。

ただし、いずれ訪れる激動の変化を見据え、国税当局の動向を注視し続ける必要があります。

5. 今からできる対策

KSK2時代に向けて、今から取り組むべきことは以下の3点です。

①正確な帳簿の整備

データ活用による選定が高度化しても、帳簿が整備されており申告内容が適正であれば調査対象として選定されるリスクは大幅に下がります。日々の記帳の正確さが最大の防御です。

②グループ全体の税務管理

KSK2は関係する個人・法人を一体的に管理する方向に進みます。個人と法人を分けて考えるのではなく、グループ全体の税務リスクを把握しておくことが重要です。

③専門家との継続的な連携

KSK2が本格稼働することで、調査選定の精度が上がり、これまで見逃されていた申告漏れが発覚するケースが増える可能性があります。日頃から税務の専門家と連携し、申告内容を適正に保つことが最大のリスク対策となります。

まとめ

KSK2の導入は、国税行政が「経験則」から「データ活用」へと本格的に転換するターニングポイントです。AIを活用した調査選定の高度化・内部事務センター化・関係者の一体管理——これらが組み合わさることで、税務調査の運営は質・量ともに大きく変化していきます。

いずれ訪れるこの変化を見据え、今から正確な帳簿整備と適正申告を心がけることが、納税者にとって最善の対応策です。

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よくあるご質問

Q1. KSK2とは何ですか?現行のKSKと何が違いますか?

KSKとは「国税総合管理システム」で、全国の申告・納税データを一元管理する国税庁の基幹システムです。令和8年9月24日に国税システムの更改が予定されています。KSK2対応により、申告書・申請書・法定調書の様式変更やe-Tax仕様の変更が進められており、データ中心の事務処理や調査対象選定の高度化が進む可能性があります。

Q2. KSK2の導入で、税務調査の対象になりやすくなりますか?

調査対象の選定精度が高まる可能性があります。申告内容に不整合がある場合や無申告状態にある場合は、把握されやすくなることが考えられます。一方で、正確な申告と書類整備をしている納税者への影響は限定的とされています。

Q3. KSK2導入後も変わらないことはありますか?

税務調査の核心部分(現場での調査官による事実確認・質問・帳簿確認)は変わりません。システムは「入口」の選定を効率化するものであり、調査そのものを自動化するものではありません。正確な記帳と根拠書類の整備が基本的な対策である点も変わりません。

Q4. KSK2時代に納税者が備えておくべきことは何ですか?

複数の税目にわたる申告内容の整合性を意識すること、「なぜその数字なのか」を説明できる根拠書類を整備すること、電子帳簿保存法への対応を進めることが有効です。申告内容に不安がある方は、調査を待つ前に早めにご相談ください。

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