京都で税務調査の連絡が来たら?|元国税調査官が当日までの準備を解説
著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官/大阪国税局 資料調査課 出身)
「京都の事業を担当するのは、どこの税務署なのだろうか」
「観光客相手の売上や予約サイト経由の入金まで調べられるのだろうか」
「京都の事務所ではなく、大阪の税理士にも立会いを頼めるのだろうか」
税務署から税務調査の連絡を受けた京都の事業者の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。連絡は多くの場合、突然の電話で届きます。初めてであれば、不安になるのは自然なことです。
この記事では、私自身が元国税調査官(大阪国税局 個人課税課・資料調査課)として調査事務に従事してきた経験を踏まえ、京都府の税務調査の仕組みと、連絡が来てから調査当日までに準備すべきことを、順を追って解説します。
結論:京都の税務調査は大阪国税局管内の調査。慌てず「通知内容の確認」と「資料整理」から
先に結論をお伝えします。京都府の税務調査は、大阪国税局と、その管内にある京都府内の税務署が実施します。連絡が来た時点でまずやるべきことは、次の3つです。
(1)事前通知で伝えられた事項(日時・場所・税目・対象期間・準備する帳簿書類)をメモに残して正確に把握する
(2)合理的な理由がある場合は、その場で即答せず、日程変更を協議する
(3)対象期間の帳簿・請求書・領収書・通帳などの資料を整理し、必要に応じて税務調査の経験がある税理士に相談する
連絡が来たこと自体は、直ちに「大きな問題がある」という意味ではありません。準備の質で、調査当日の負担は大きく変わります。
この記事でわかること
・京都府の税務調査を担当する組織(大阪国税局と府内の税務署の役割分担)
・調査官が重点的に確認するポイント(元調査官の内側視点)
・事前通知で確認すべき事項と日程調整の考え方
・調査当日までに準備する資料のリスト
・京都で問題になりやすい論点と、税理士に依頼する場合の選び方
1. 京都の税務調査は誰が行うのか:大阪国税局と府内の税務署
京都府は、大阪国税局の管轄区域に含まれます。大阪国税局は大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県の2府4県を管轄しており、京都府内には13の税務署があり、京都市内には上京・中京・下京・東山・右京・左京・伏見の各税務署が置かれています。
(1)通常の調査は所轄の税務署が担当する
個人事業主や中小規模の法人に対する通常の税務調査は、納税地を所轄する税務署の調査担当部門が実施します。事前通知の電話も、原則として所轄税務署の職員からかかってきます。
(2)事案によっては大阪国税局が直接調査することがある
事案の規模や内容、収集された資料情報等によっては、大阪国税局の担当部署(資料調査課など)が直接調査する場合があります。私が在籍していた資料調査課は、京都府内の事案も担当範囲としていました。国税組織の全体像は、国税組織の全体像と税務調査の担当部署の記事で詳しく解説しています。
2. 調査官が重点的に確認するポイント:元調査官の内側視点
調査官は、当日に手ぶらで来るわけではありません。事前に申告書の内容と、税務署が保有する資料情報を突き合わせたうえで臨場します。
(1)「現金だから分からない」は通用しにくい
現金を含む売上であっても、調査官は周辺情報から売上規模を推測できます。予約サイトからの入金記録、クレジットカードやコード決済のデータ、仕入量や酒類・食材の発注量、支払調書、取引先への反面調査、通帳の入出金。こうした複数の情報を組み合わせれば、申告された売上との間に不自然な差があるかどうかは見当がつきます。
(2)選定の段階で「見るポイント」は絞られている
私が資料調査課(国税局で大口事案・悪質事案を担当する部署。通称「料調」)で調査を担当していた経験から言えば、調査先の選定段階で「どの論点を確認するか」はある程度絞り込まれています。国税庁も、令和6事務年度(令和6年7月から令和7年6月)の所得税の調査について、選定にAIを活用するなど効率的に調査等を行った結果、調査等による追徴税額の総額が1,431億円と過去最高になったと公表しています。実地調査の件数は約4万7千件で、1件当たりの追徴税額は241万円でした(国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」)。
AIを選定に活用するなど効率的かつ的確な調査等が進められているからこそ、調査の連絡が来た場合には「何かしらの確認したい点がある」と受け止めて、準備することが大切です。個人事業主の選定の仕組みは個人事業主・フリーランスに税務調査は来る?の記事もご参照ください。
3. 事前通知で伝えられる内容と、電話で確認すべきこと
実地の税務調査では、原則として調査の前に事前通知が行われます(国税通則法第74条の9)。通知される主な事項は、次のとおりです。
(1)実地の調査を行う旨
(2)調査を開始する日時と場所
(3)調査の目的
(4)対象となる税目(所得税・消費税など)
(5)対象となる期間(何年分か)
(6)準備しておく帳簿書類その他の物件
電話を受けたら、これらをメモに残してください。特に「税目」と「対象期間」は、準備する資料の範囲を決める重要な情報です。
(1)日程はその場で即答しなくてよい
通知された日時に業務上の都合が悪い場合、合理的な理由があれば日程変更の協議を求めることができます(国税通則法第74条の9第2項)。合理的な理由としては、病気やけがによる一時的な入院、親族の葬儀等の一身上のやむを得ない事情、業務上やむを得ない事情などが例示されています。電話の場では「予定を確認して折り返します」と伝えて構いません。国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」でも、日程調整の取扱いが説明されています。
(2)顧問税理士がいる場合は税理士に通知されることもある
税務代理権限証書に納税者の同意の記載がある場合、事前通知は税理士に対して行えば足りるとされています。顧問税理士がいる方は、調査の連絡が入ったらすぐに共有し、通知事項の確認と日程調整を任せるのが確実です。
(3)事前通知なしで調査官が来る場合もある
例外的に、事前通知なしで調査が行われる場合もあります(国税通則法第74条の10)。その場合でも、対応の基本は同じです。慌てて資料を渡し切らず、まず税目・期間・目的を確認し、税理士に連絡する時間をもらうことを検討してください。
4. 調査当日までに準備する資料
事前通知から調査当日までは、日程調整の結果、一定の準備期間が設けられることが一般的です。その間に、対象期間について次の資料を整理します。
(1)帳簿(総勘定元帳・現金出納帳・売上帳など)
(2)売上関係:請求書控え、レシートロール・レジデータ、予約サイトや決済代行の明細
(3)仕入・経費関係:請求書、領収書、クレジットカード明細
(4)通帳:事業用に加え、事業の入出金が混在しているプライベート口座も動きを説明できるように
(5)契約書・注文書、給与台帳やシフト表、棚卸表
ポイントは「そろえること」だけでなく、「聞かれたら説明できる状態にしておくこと」です。大きな入金や使途不明の出金は、事前に自分で経緯を確認しておくと、当日の質疑が落ち着いて進みます。なお、調査の前段階として文書で問い合わせが届くこともあります。その対応は税務署から「お尋ね」が届いたらの記事で解説しています。
5. 京都で問題になりやすい論点
「京都だから調査が厳しい」ということはありません。ここでは、京都で比較的身近な事業分野について、税務上注意したい論点を挙げます。
(1)観光・宿泊:予約サイト経由の売上と民泊
旅館業や簡易宿所、住宅宿泊事業(民泊)では、海外予約サイトを含む複数のプラットフォームから入金が分かれるため、売上の集計漏れが起きやすい構造があります。国税当局はシェアリングエコノミー等の新分野の取引について資料情報の収集・分析を進めており、令和6事務年度には、民泊のほかネット通販やネット広告などを含む全国集計で1,155件の実地調査(特別・一般)が行われています(同統計)。
(2)飲食・料飲:現金を含む売上の管理
飲食店や料飲業では、現金を含む売上の計上管理とレジデータの保存状況が確認されやすい論点です。予約台帳や仕入量との整合性も見られます。
(3)伝統工芸・作家業、インバウンド免税販売
工芸作家や職人の方は、委託販売・催事売上・直販が混在しやすく、売上計上時期のずれが論点になりがちです。また、輸出物品販売場(免税店)を営む場合は、免税販売手続の要件充足が確認対象になります。
(4)不動産:町家の売却と民泊への転用は別の論点
京町家などの不動産を売却した場合には、売却した年分の譲渡所得の申告が論点になります。全国では、土地建物等(国税庁統計上の区分で、土地・建物のほか金地金等を含みます)の譲渡所得に係る調査等が令和6事務年度に約1万2千件行われ、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は約9千件でした(同統計)。登記情報等も資料情報として活用され得るため、売却があった年分は申告内容を丁寧に確認しておくことが大切です。一方、建物を売却せずに宿泊施設へ転用する場合には、譲渡所得ではなく、減価償却や修繕費と資本的支出の区分などの所得計算に加え、消費税の取扱いが論点になります。
6. 調査で指摘されやすい項目
業種を問わず、指摘されやすい項目は共通しています。
(1)売上の計上時期のずれ・計上漏れ(期末前後の売上、予約サイトの未入金分など)
(2)家事関連費(自宅兼事務所の家賃・車両・交際費の按分)
(3)消費税(課税区分の誤り、簡易課税の事業区分、インボイスの保存要件)
(4)無申告(そもそも申告していない年分がある場合)
特に無申告は厳格に対応される分野で、令和6事務年度の所得税無申告者に対する実地調査(特別・一般)では、1件当たりの追徴税額が524万円と過去最高になっています(同統計)。心当たりがある場合は、調査を待たず自主的に期限後申告を検討することをおすすめします。
7. 調査当日の対応と質問応答記録書
当日の対応の基本は、シンプルです。
(1)嘘をつかない:その場しのぎの説明は、後で矛盾が明らかになったときにかえって不利になります
(2)即答できないことは持ち帰る:「確認して後日回答します」で構いません
(3)求められた資料の範囲を確認する:調査に必要な範囲かどうか疑問があれば、理由を尋ねて構いません
調査の過程で、調査官が納税者の説明を「質問応答記録書」という書面にまとめ、内容の確認や署名を求めることがあります。この書面は後の処分の判断に影響し得るもので、内容を十分に確認してから署名の可否を判断すべきものです。私も共著『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)で整理しましたが、初動の受け答えが調査の結果を左右することは少なくありません。
8. 京都の事業者が税理士に依頼するには:大阪の税理士でも立会い可能
税務調査の立会いは、税務代理権限証書を提出した税理士であれば対応できます。税理士業務に都道府県単位の地域制限はないため、大阪の税理士も京都の税務調査に対応できます。当事務所も、京都を含む関西全域の調査に対応しています。
選ぶ際の目安は、「税務調査の対応経験が十分にあるか」です。国税OB税理士の強みと限界については、国税OB税理士の役割と税務調査の記事で率直に解説しています。
よくある質問
Q1. 京都の税務調査はどこが担当しますか?
京都府は大阪国税局の管轄です。通常の調査は納税地を所轄する京都府内の税務署が担当し、事案の規模や内容、収集された資料情報等によっては大阪国税局の担当部署が直接調査する場合があります。
Q2. 事前通知で伝えられた日程は変更できますか?
合理的な理由があれば、日程変更の協議を求めることができます(国税通則法第74条の9第2項)。電話の場で即答せず、予定を確認してから折り返す対応で問題ありません。
Q3. 連絡から調査当日までにどのくらい準備期間がありますか?
法令で日数が決まっているわけではありませんが、日程調整の結果、一定の準備期間が設けられることが一般的です。都合が悪い場合は早めに変更の協議を申し出てください。
Q4. プライベートの通帳も見られますか?
調査に必要と判断された範囲では、事業の入出金が混在する個人口座について提示を求められることがあります。大きな入金や出金の経緯は、事前に説明できるよう整理しておくと安心です。
Q5. 税務調査は何年分さかのぼりますか?
実務上、当初は3年分が対象とされることがあり、調査の状況によって5年分に広がる場合があります。偽りその他不正の行為があると認められる場合は、7年分まで更正等が可能とされています(国税通則法第70条)。
Q6. 京都の事業者ですが、大阪の税理士に調査の立会いを依頼できますか?
可能です。税務代理権限証書を提出すれば、事務所所在地に関係なく税理士が立会いできます。税理士業務に都道府県単位の地域制限はないため、大阪の税理士も京都の税務調査に対応できます。
まとめ:連絡が来ても、準備次第で落ち着いて対応できる
京都府の税務調査は、大阪国税局とその管内の税務署が実施します。連絡が来たら、通知事項の正確な把握、日程調整、資料の整理という順で初動を進めてください。調査官は事前に情報を持って臨場しますが、納税者の側も準備をすれば、事実に基づいて落ち着いて説明できます。不安が大きい場合や論点が複雑な場合は、早い段階で税務調査の経験がある税理士に相談することが、結果的に負担を小さくする近道です。
税務調査の連絡が来た方、申告に不安がある方へ
元国税調査官(大阪国税局 資料調査課 出身)の税理士が、調査する側の実務を踏まえて対応します。ご依頼内容に応じて、当事務所で対応するほか、必要に応じて外部専門家との連携も検討し、状況に応じた適切な対応を提供します。
顧問契約・税務調査に関する初回相談は無料です。ただし、個別具体的な税務判断、セカンドオピニオン等はスポット相談として有料にて承ります。関西全域・オンラインで全国対応。
京都をはじめ関西で税務調査の連絡が来てお困りの方は、対応の流れや料金をまとめた「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもあわせてご覧ください。
引用・参考文献
・国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
・国税通則法第74条の9(事前通知)、第74条の9第2項、第74条の10(事前通知を要しない場合)、第70条(更正決定等の期間制限)
・国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
・国税庁「税務署所在地・案内(大阪国税局・京都府)」
・市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)
・市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)
この記事を書いた人
市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。

