兵庫で税務調査の連絡が来たら?|元国税調査官が当日までの準備を解説

著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官/大阪国税局 資料調査課 出身)

「神戸の税務署から調査の連絡が来た。何から手を付ければよいのか分からない」
「兵庫の会社だが、税務調査は税務署が来るのか、それとも国税局が来るのか」
「当日までにどんな書類を用意すればよいのか、日程はずらせるのか知りたい」

税務調査の事前通知は、通常、税務署等からの電話によって行われます。兵庫県内の事業者の方からも、突然の連絡を受けて初めて「誰に相談すればよいのか」と検索される方が少なくありません。

最初にお伝えしたいのは、事前通知が来た時点で結果が決まっているわけではない、ということです。当日までに事実関係と資料を整理しておくことで、説明の正確性が高まり、調査対応の負担や不要な誤解を減らせます。

私は元国税調査官(大阪国税局 個人課税課・資料調査課)の税理士です。兵庫県内の税務署は、すべて私が勤務していた大阪国税局の管轄です。調査する側にいた経験を踏まえて、事前通知が来たときの対応と当日までの準備を解説します。

結論:兵庫の調査も枠組みは全国共通。通知内容の確認と当日までの準備で対応できる

先に結論をまとめます。兵庫県内の21税務署はすべて大阪国税局の管轄であり、調査の手続は国税通則法に基づく全国共通の枠組みで進みます。事前通知の電話ではその場で日程を即答せず、通知事項と予定を確認し、必要があれば合理的な理由を伝えて日程を協議すること。そして当日までに帳簿・書類を整理し、説明の筋道を用意しておくこと。この2つが対応の柱です。

この記事でわかること

  • 兵庫県の税務調査を担当する組織(税務署と大阪国税局の関係)
  • 調査官が事前に把握している情報と、重点的に確認するポイント
  • 事前通知の電話で伝えられる内容と、日程調整の考え方
  • 調査当日までに準備すべき書類と、当日の流れ
  • 調査後の手続(修正申告・加算税)と、税理士に依頼する意味

1. 兵庫県の税務調査は誰が来るのか:税務署と大阪国税局の関係

兵庫県には、神戸・西宮・尼崎・姫路など21の税務署が置かれています。これらはすべて大阪国税局の管轄です。大阪国税局は大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県の2府4県、計83署を統括しています。

ここで押さえておきたいのは、調査には大きく2つの主体があるという点です。

(1)税務署による調査

個人事業主や中小企業に対する一般的な税務調査は、納税地を管轄する税務署の調査官が担当します。事前通知のある実地調査の多くはこの類型で、一般的な税務署調査では調査官1〜2名で行われる例が多くみられます。

(2)大阪国税局による調査

事案の規模や内容、収集された資料情報等によっては、大阪国税局の担当部署(資料調査課など)が直接調査することがあります。私が在籍していた資料調査課はまさにこの部署で、兵庫県内の事案も大阪の局から担当していました。

電話で事前通知を受けたら、まず「どこの所属の、誰からの連絡か」を確認してください。なお、神戸市兵庫区には「兵庫税務署」という名前の税務署がありますが、これは兵庫区・北区・三田市を管轄する一つの署であり、兵庫県全体を管轄する組織ではありません。

2. 調査官が重点的に確認するポイント:調査する側にいた立場から

調査官は、何も情報を持たずに来るわけではありません。調査先の選定段階で、申告内容と資料情報の分析が行われています。

(1)調査官は資料情報を分析した上で来る

調査先の選定段階では、申告書、取引先が提出する支払調書などの法定調書、過去の申告・調査情報、国外送金等調書といった資料が分析されています。国税庁も、選定にAIを活用していることを公表しています。事案によっては、調査の過程で金融機関への照会や取引先への反面調査が行われることもあります。「現金でもらった売上だから分からないだろう」という考えは、調査の現場では通用しません。売上そのものが見えなくても、仕入や外注費、通帳の動きといった周辺情報から、収入の規模は推測されるからです。

(2)売上の計上漏れと期ずれ

重点的に確認されるのは、まず売上です。請求書の連番の欠落、決算期末前後の計上時期のずれ、事業用と生活用の口座に混在した入金などは、定番の確認ポイントです。個人口座や家族名義の口座がどこまで確認されるのかは、別の記事で詳しく解説しています(関連記事:税務調査で通帳はどこまで見られる?|元国税調査官が個人口座・家族口座の扱いを解説)。

(3)海外取引や不動産取引がある場合の留意点

神戸港を有する兵庫県には、貿易・輸出入や海外送金を伴う事業者も存在します。兵庫県に限った取扱いではありませんが、国外送金等調書やCRS情報(各国の税務当局が交換する金融口座情報)などにより、海外との資金移動と申告内容の整合性が確認されることがあります。また、不動産の譲渡や賃貸、民泊・宿泊業のような取引についても、取引資料と申告内容の整合性が確認されます。私が資料調査課(国税局で大口事案・悪質事案を担当する部署。通称「料調」)に在籍した経験から言えば、海外との資金移動が絡む事案は、こうした資料情報との突き合わせから調査が展開していくことが多いと感じています。

3. 事前通知の電話で伝えられる内容と日程調整

実地調査を行う場合、税務署等はあらかじめ納税者に対して、調査開始の日時・場所、調査の目的、対象となる税目、対象期間、対象となる帳簿書類などを通知することとされています(国税通則法第74条の9)。調査対象となる税目・期間について提出済みの税務代理権限証書に、事前通知に関する同意の記載がある場合は、原則として税理士(税務代理人)への通知だけで足りる取扱いです。同意がない場合は、原則として納税者と税務代理人の双方に通知されます。

電話を受けたときのポイントは3つです。

(1)その場で日程を即答しない

通知された日程は、合理的な理由があれば変更を協議できます。病気やけがによる一時的な入院、親族の葬儀などの一身上のやむを得ない事情や、業務上やむを得ない事情がある場合が想定されています。電話口で即答せず、「予定を確認して折り返します」と一呼吸置くことをおすすめします。

(2)通知事項をメモする

担当者の所属・氏名、対象税目、対象期間、調査場所をその場でメモしてください。対象期間が何年分かは、準備する書類の範囲に直結します。調査で何年分さかのぼられるのかの考え方は、別の記事で整理しています(関連記事:税務調査は何年分さかのぼる?|元国税調査官が3年・5年・7年の違いと決まり方を解説)。

(3)税理士への依頼を検討する

税理士に調査立会いを依頼する場合、この段階で連絡するのが最も効果的です。事前通知から調査開始日までの期間に、法令上の一律の定めはありません。実務上は1〜3週間程度となる例もありますが、事案や日程調整の状況によって異なります。この期間に専門家と一緒に準備できるかどうかで、当日の負担は大きく変わります。

4. 調査当日までの準備:書類の整理と説明の筋道

当日までにやるべきことは、突き詰めると「書類の整理」と「説明の準備」の2つです。

(1)そろえておく書類

対象期間分の帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)、請求書・領収書・契約書、通帳、給与関係の書類、申告書の控えが基本セットです。書類が見つからない場合も、隠したり作り直したりせず、「ない」という事実のまま臨んでください。事実と異なる書類を用意することは、後述する重加算税の典型的な原因になります。

(2)自分の申告を見直しておく

申告書と帳簿を突き合わせ、説明に窮しそうな箇所を先に洗い出しておきます。なお、調査通知に該当する連絡を受けた後に修正申告をした場合、更正を予知する前であっても、原則として一定の過少申告加算税が課され、調査通知前の自主的な修正申告と同じ扱いにはなりません。修正申告を行う時期や誤りの内容によって取扱いが異なるため、対応方針は早めに税理士と相談してください。

(3)当日の体制を決める

調査場所の確保(事務所の一室など)、対応する人、経理担当者の同席の要否を決めておきます。

5. 調査当日の流れと質問応答記録書

当日は午前10時頃から開始される例が多く、最初に事業の概況についての聞き取りが行われます。創業の経緯や仕事の流れといった世間話に近い質問から始まりますが、この概況聞き取りは後の帳簿確認の土台になる重要な工程です。事実をありのままに、簡潔に答えてください。

その後は帳簿・書類の確認が中心になります。聞かれたことに答え、根拠となる書類を示すのが基本姿勢です。あいまいな記憶で断定的に答えず、「確認して後日回答します」という対応で構いません。

調査の過程で、調査官が納税者の回答を書面にまとめ、署名を求めることがあります。これが質問応答記録書です。記録書は後の加算税の判断などに使われる重要な証拠になるため、内容を十分確認し、事実と異なる記載があれば訂正を求めてください。納得できないまま署名する必要はありません。私はこのテーマについて共著『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)で詳しく整理しましたが、現場での受け答えの記録が結果を左右する場面は少なくありません。

当日の初動対応の全体像は、別の記事でも解説しています(関連記事:税務調査が来たら何をすべきか)。

6. 調査後の流れ:修正申告と加算税

実地調査の当日で調査が終わるわけではありません。調査官は持ち帰った資料を検討し、指摘事項があれば調査結果の内容の説明が行われます。

指摘に納得できれば修正申告を提出し、追納税額が生じる場合には、原則として過少申告加算税(国税通則法第65条)などが課されます。期限内申告をしていなかった場合は、原則として無申告加算税(同法第66条)の対象となります。そして、売上を意図的に隠すなどの隠蔽・仮装があったと判断されると、重加算税(同法第68条)というより重い負担になります。重加算税と言われた場合の考え方は、別の記事で詳しく解説しています(関連記事:税務調査で重加算税と言われたら?|回避できるケースと対応を元国税調査官が解説)。

参考までに、国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、所得税の調査等の状況として公表された実地調査件数は全国で約4万7千件でした。なお、この件数には所得税と消費税の実地調査が含まれています。実地調査1件当たりの追徴税額は241万円、文書や電話などによる簡易な接触は約68万9千件でした。実地調査と簡易な接触を合わせた追徴税額は、調査対象となった全ての年分の合計で、加算税を含め1,431億円と過去最高でした。

なお、調査官の指摘に納得できない場合は、安易に受け入れる必要はありません。事実関係と法令の根拠を確認し、主張すべき点は主張してください。ここは調査の実務経験がある税理士の力が最も生きる場面です。

7. 事前通知がない調査(無予告調査)が来た場合

事前通知は原則ですが、通知することで調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合には、通知なしで調査が行われることがあります(国税通則法第74条の10)。実務上は、現金売上の比重が大きく、事前通知をすると証拠の保全や正確な事実関係の把握に支障が生じるおそれがあると判断される事案などで行われることがあります。

突然調査官が来た場合も、慌てる必要はありません。身分証明書と所属を確認した上で、税理士へ連絡し、立会いを希望する旨を伝えることはできます。ただし、納税者側の一方的な判断で調査を拒否又は延期できるとは限りません。当日の調査範囲や資料の提示時期などについて、調査官と協議しながら対応します。詳しくは別の記事で解説しています(関連記事:無予告調査とは何か)。

8. 兵庫の事業者が税理士に依頼する意味:大阪の事務所でも対応できます

税務調査の立会いを依頼する税理士は、事務所の所在地よりも、調査対応の経験で選ぶことをおすすめします。兵庫県の調査を担当するのは大阪国税局管内の調査官であり、局の調査手法や考え方を内側から知る税理士であれば、所在地が大阪でも対応に支障はありません。当事務所も大阪市内にありますが、神戸・阪神間をはじめ兵庫県内の調査立会いに対応しています。

税理士に依頼すると、調査対象となる税目・期間について税務代理権限証書を提出し、事前通知に関する同意を記載するなど、必要な手続を整えれば、事前通知の窓口を税理士に一本化できます。当日までの準備も専門家の視点で進められます。調査当日は立会いのもとで受け答えでき、調査後の税務署とのやりとりも任せられます。

よくある質問

Q1. 兵庫県の税務調査は、どこの組織が担当するのですか?

兵庫県内の21税務署はすべて大阪国税局の管轄です。一般的な調査は納税地を管轄する税務署が担当し、事案の規模や内容、収集された資料情報等によっては、大阪国税局の担当部署が直接調査することがあります。

Q2. 事前通知の電話で、日程は変更できますか?

合理的な理由があれば、調査開始日時は協議の上で変更できます。病気やけがによる一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情などが例示されています。電話口で即答せず、予定を確認してから折り返す対応をおすすめします。

Q3. 事前通知から調査当日まで、どのくらいの期間がありますか?

事前通知を調査開始日の何日前に行うかについて、法令上の一律の定めはありません。実務上は1〜3週間程度となる例もありますが、事案や日程調整の状況によって異なります。期間の長さにかかわらず、書類の整理と申告内容の見直しを早めに進めることをおすすめします。

Q4. 当日までに何を準備すればよいですか?

対象期間分の帳簿、請求書・領収書・契約書、通帳、給与関係書類、申告書の控えが基本です。あわせて申告書と帳簿を突き合わせ、説明が必要になりそうな箇所を整理しておくと当日の負担が減ります。

Q5. 大阪の税理士に、兵庫の税務調査の立会いを依頼できますか?

依頼できます。税理士の対応地域に法律上の制限はなく、兵庫県の調査を行うのは大阪国税局管内の調査官のため、大阪の税理士でも対応に支障はありません。当事務所も兵庫県内の調査立会いに対応しています。

Q6. 申告に誤りがあることに気づいています。調査までにどうすればよいですか?

誤りを隠したり、書類を作り直したりする対応は、重加算税につながるおそれがあり避けるべきです。なお、調査通知に該当する連絡を受けた後に修正申告をした場合、更正を予知する前であっても、原則として一定の過少申告加算税が課されます。修正申告を行う時期や誤りの内容によって取扱いが異なるため、早めに税理士に相談して方針を決めることをおすすめします。

まとめ:通知から当日までに、事実関係と資料を整理することが重要

兵庫県の税務調査は、県内21の税務署と、それを統括する大阪国税局が担当します。手続の枠組みは全国共通で、事前通知の電話を受けたら、通知事項を確認し、日程を落ち着いて調整し、当日までに事実関係と資料の整理を進める。やるべきことはこれに尽きます。

調査官は資料情報を分析した上で臨んできますが、それは「隠しごとは通用しない」という意味であって、「納税者に勝ち目がない」という意味ではありません。事実を整理し、根拠をもって説明できる状態を作ることが、円滑な調査対応につながります。不安を一人で抱え込まず、早めに専門家を頼ってください。

税務調査の連絡が来た方、申告に不安がある方へ

元国税調査官(大阪国税局 資料調査課 出身)の税理士が、調査する側の実務を踏まえて対応します。ご依頼内容に応じて、当事務所で対応するほか、必要に応じて外部専門家との連携も検討し、状況に応じた適切な対応を提供します。

顧問契約・税務調査に関する初回相談は無料です。ただし、個別具体的な税務判断、セカンドオピニオン等はスポット相談として有料にて承ります。関西全域・オンラインで全国対応。

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引用・参考文献

  • 国税通則法第65条(過少申告加算税)、第66条(無申告加算税)、第68条(重加算税)、第74条の2(質問検査権)、第74条の9(事前通知)、第74条の10(事前通知を要しない場合)
  • 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
  • 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
  • 国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」
  • 国税庁「税務署所在地・案内(大阪国税局・兵庫県)」
  • 市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)
  • 市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)

この記事を書いた人

市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。