相続税の税務調査はいつ来る?|元国税調査官が多い時期と何年後まで来るか解説


著者:市田佳祐(税理士・国税OB)

「相続税を申告したが、税務調査はいつ頃来るのか、来るとしたら不安だ」
「申告から何年か経ったが、もう調査は来ないと考えてよいのか」
「相続税の調査は、何年後まで来る可能性があるのか知りたい」

相続税の申告を終えた後、多くの方が気にされるのが「いつ税務調査が来るのか」「いつになれば安心できるのか」という時期の問題です。相続税の調査は、所得税などの調査とは少し性質が異なり、申告してすぐではなく、しばらく経ってから来るのが特徴です。

結論を先にお伝えすると、相続税の税務調査は申告期限の1〜2年後に行われることが多く、秋ごろが一つの中心です。そして、「何年経てば絶対に来ない」と言い切れる時期があるわけではありません。更正・決定等ができる期間は原則5年(一定の場合は7年)とされているためです。

この記事では、調査する側だった元国税調査官(国税OB)の立場から、相続税の調査が多い時期、何年後まで来る可能性があるのか、なぜ申告後に時間をかけて選定されるのか、そして時期からみた心構えを解説します。

この記事でわかること

  • 相続税の調査が多い時期(申告期限の1〜2年後・秋が中心)
  • 何年後まで来る可能性があるのか(更正・決定等ができる期間)
  • なぜ申告後に時間をかけて調査先が選ばれるのか(内側の視点)
  • 調査の連絡が来たときの心構えと、申告後の備え

1. 相続税の調査は「申告してしばらく経ってから」来る

相続税の調査の時期を理解するうえで、まず押さえておきたいのが、相続税の調査は、申告した直後ではなく、しばらく経ってから来るという点です。

なお、本記事でいう「相続税の税務調査」は、主に、税務署の職員が相続人宅などに臨場して行う実地調査を念頭に置いています。相続税については、実地調査のほか、文書・電話・来署依頼などによる「簡易な接触」が行われることもあります。

相続税は、相続の開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付するのが原則です。この申告を終えると、ひとまず一区切りついた気持ちになりますが、税務署はそこから、提出された申告書の内容を検討し、過去の資料情報などと突き合わせていきます。その検討を経て、調査が必要と判断された案件について、実際の調査が行われます。

そのため、相続税の調査は、申告期限から1年、2年と経ってから連絡が来ることが多いのです。「申告して何事もなく1年が過ぎたから、もう大丈夫」とは限らない、というのが、相続税の調査の時期の特徴です。

なお、相続税の調査は、いったん対象になると、申告内容の見直しにつながる割合が高いことで知られています。国税庁が公表した令和6事務年度の相続税の実地調査では、調査が行われた件数のうち、申告漏れ等の非違が見つかった割合は8割を超えています(非違割合82.3%)。これは、税務署が、時間をかけて資料情報と突き合わせ、申告漏れが見込まれる案件を絞り込んだうえで調査に入っているためでもあります。だからこそ、調査の時期や、申告後の備えを知っておくことが大切になります。


2. 多いのは申告期限の「1〜2年後」、秋が一つの中心

(1) 申告期限の1〜2年後が一つの目安

実務上、相続税の実地調査は、申告期限のおおむね1〜2年後に行われることが多いとされています。これは、申告書が提出されてから、税務署がその内容を検討し、調査先を選定し、準備を整えるまでに、一定の期間がかかるためです。

もちろん、これはあくまで傾向であり、すべてがこの時期に行われるわけではありません。内容によっては、もっと早く連絡が来ることも、逆にさらに後になることもあります。

(2) 秋ごろが一つの繁忙期

時期の中では、秋(おおむね9月〜11月ごろ)が、相続税の調査の一つの中心になりやすいとされています。これは、税務署の事務年度の流れの中で、この時期に実地調査が集中しやすい傾向があるためです。もっとも、調査は年間を通じて行われるものであり、「秋以外は来ない」というわけではありません。あくまで傾向として、秋に多めになりやすい、という程度に理解しておくとよいでしょう。

(関連記事:税務調査は何月に多い?|元国税調査官が調査の時期・周期と今からの備えを解説)


3. 何年後まで来る可能性があるのか

(1) 「3年経てば安心」ではない

「相続税の調査は3年経てば来ない」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは正確ではありません。確かに、調査の多くは申告期限の1〜2年後に集中しますが、申告期限から1〜2年、あるいは3年が経過したからといって、必ず調査が来ないと断定できるわけではありません

(2) 更正・決定等ができる期間は原則5年

税務署が、申告の誤りを正したり(更正)、無申告の人の税額を定めたり(決定)できる期間には、法律上の制限があります。相続税についても、更正・決定等ができる期間は、原則として申告期限から5年です。そして、偽りその他不正の行為によって税を免れていた場合には、7年までさかのぼることができます。

つまり、調査が集中するのは1〜2年後であっても、制度上は、原則5年(一定の場合は7年)の範囲で調査が行われる可能性があるということです。「数年経ったから完全に安心」と考えるのではなく、申告期限から相当の期間は、調査の可能性が残ると理解しておくのが正確です。

(関連記事:税務調査は何年分さかのぼる?|元国税調査官が3年・5年・7年の違いと決まり方を解説)


4. なぜ申告後に時間をかけて選定されるのか——内側の視点

「なぜ申告してすぐに来ないのか」「なぜ1〜2年もかかるのか」と疑問に思われるかもしれません。調査する側にいた立場から、その理由を説明します。

(1) 申告書と資料情報の突き合わせに時間がかかる

相続税の調査先の選定では、提出された相続税の申告書の内容を、さまざまな資料情報と突き合わせる作業が行われます。被相続人や相続人の過去の収入の状況、不動産の保有状況、金融機関の情報など、税務署が保有・収集する情報と、申告された財産の内容が整合するかを検討します。

こうした検討には、相応の時間がかかります。被相続人が長年にわたって築いた財産の全体像を把握し、申告漏れがないかを見ていくため、申告直後すぐにではなく、一定の期間をかけて選定が進むのです。

(2) 蓄積されたデータとの照合

国税当局には、長年にわたって蓄積された各種の情報があります。過去の所得の状況や、財産に関する資料などです。相続税の申告内容を、これらの蓄積データと照合することで、申告された財産が、被相続人の生涯の所得や資産の動きと比べて不自然に少なくないか、といった視点での検討が行われます。

たとえば、生前の所得や資産の状況からすると、もっと財産があってもおかしくないのに、申告された財産が少ない場合には、名義預金(家族名義になっているが実質は被相続人の財産)や、申告漏れの財産がないかが、確認の対象になりやすくなります。こうした分析にも、時間を要するのです。


5. 調査の連絡が来たら——時期からみた心構え

相続税の調査は、多くの場合、事前に連絡があったうえで行われる任意調査です。ある日突然、予告なく調査官が来る、というものではありません(一部の例外的な場合を除きます)。

申告期限から1〜2年が経った頃に税務署から連絡があった場合、それは相続税の調査の可能性があります。慌てる必要はありませんが、次の点を心がけてください。

  • 申告を依頼した税理士に連絡する:相続税の申告を税理士に依頼していた場合は、まずその税理士に連絡し、対応を相談してください。
  • 申告時の資料を確認する:申告のもとになった資料(残高証明書、不動産の評価資料、過去の通帳など)を確認できるようにしておきます。
  • 日程は調整できる:連絡された日程の都合が悪ければ、調整を申し出ることは可能です。

(関連記事:税務調査で通帳はどこまで見られる?|元国税調査官が個人口座・家族口座の扱いを解説)


6. 正しい備え——申告後も資料を保管しておく

相続税の調査が申告の1〜2年後、場合によってはさらに後に来ることを踏まえると、備えとして大切なのは、申告が終わった後も、関係資料を保管しておくことです。

  • 申告のもとになった資料を保管する:残高証明書、不動産の評価資料、生命保険の関係書類、過去の通帳のコピーなど、申告の根拠となった資料を、調査に備えて保管しておきます。
  • 過去の入出金の経緯をたどれるようにする:特に、大きな金額の入出金や、家族名義の預金の原資については、その経緯を説明できる資料があると安心です。
  • 不安があれば、申告後でも専門家に相談する:申告内容に不安が残っている場合は、調査の連絡が来る前に、相続税に詳しい税理士に確認してもらうことも検討してください。

申告から時間が経つと、当時の資料や記憶があいまいになりがちです。だからこそ、申告の段階で根拠を整理し、その資料を保管しておくことが、後の調査への最大の備えになります。


7. よくある質問

Q1. 相続税の調査は、申告の何年後に来ることが多いですか?

申告期限のおおむね1〜2年後に行われることが多いとされています。これは、税務署が申告書の内容を検討し、資料情報と突き合わせ、調査先を選定するのに一定の期間がかかるためです。ただし傾向であり、もっと早い場合も、さらに後になる場合もあります。

Q2. 申告から3年が過ぎれば、もう調査は来ないと考えてよいですか?

そうとは言い切れません。調査の多くは1〜2年後に集中しますが、更正・決定等ができる期間は原則5年(偽りその他不正の行為がある場合は7年)です。3年を過ぎても、その期間内であれば、調査が行われる可能性は残ります。「3年経てば安心」という理解は正確ではありません。

Q3. 相続税を申告していない場合でも、調査は来ますか?

来ることがあります。相続税の申告が必要であるのに申告していない場合(無申告)、税務署は、被相続人の財産の状況に関する資料情報などから、申告の要否を検討します。申告が必要と見込まれるのに申告がなければ、調査や問い合わせの対象になり得ます。無申告だから把握されない、ということにはなりません。

Q4. 調査の連絡は、誰に来ますか?

相続税の申告を税理士に依頼していた場合は、その税理士を通じて連絡が来ることが多く、依頼していなかった場合は、相続人(申告した本人)に連絡が来るのが一般的です。連絡を受けたら、申告を依頼した税理士がいればまず相談し、日程や対応を整えてください。

Q5. 申告からもう何年も経っていますが、今後調査が来ることはありますか?

更正・決定等ができる期間(原則5年、一定の場合は7年)を過ぎていれば、その相続についての更正・決定は、原則として行われません。一方、その期間内であれば、可能性が全くないとは言えません。ご自身の相続の申告期限から何年が経過しているかによって状況が異なるため、不安な場合は、相続税に詳しい税理士に確認することをお勧めします。


8. まとめ——「1〜2年後」が目安だが、「数年で完全に安心」ではない

相続税の税務調査は、所得税などの調査と違い、申告してすぐではなく、申告期限の1〜2年後に行われることが多く、秋ごろが一つの中心です。これは、税務署が申告書の内容を資料情報と突き合わせ、時間をかけて調査先を選定するためです。

一方で、「数年経てば完全に安心」というわけではありません。更正・決定等ができる期間は原則5年(一定の場合は7年)であり、その範囲では調査の可能性が残ります。だからこそ、申告が終わった後も、申告の根拠となった資料を保管し、特に家族名義の預金の原資や大きな入出金の経緯を説明できるようにしておくことが、後の調査への最大の備えになります。

「申告内容に不安が残っている」「調査の連絡が来たが、どう対応すればよいか分からない」という方は、相続税に詳しい税理士にご相談ください。


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引用・参考文献
・相続税法27条(相続税の申告書)、国税通則法70条(国税の更正、決定等の期間制限)
・国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月)
・国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
・市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)
・市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)

著者:市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。元大阪国税局・資料調査課勤務。資料調査課では国際課税や富裕層に対する調査事務に従事。税務調査対応・立会い、無申告対応、重加算税、国際課税など、税務調査リスクの高い分野を中心に税務サポートを提供。共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。