税務調査が来る確率は?どんな人に来るのか|元国税調査官が選ばれる基準を解説


著者:市田佳祐(税理士・国税OB)

「自分のところに税務調査が来る確率は、どのくらいなのか知りたい」
「確率が低いなら気にしなくていいのか、それとも備えるべきなのか」
「そもそも、どんな人が税務調査の対象になりやすいのか」

「税務調査が自分に来るのか」は、事業をしている方なら誰もが気になるところです。結論を先にお伝えすると、所得税の個人実調率(実地調査の割合)は、平均すれば1%を下回ります。数字だけ見れば、決して高くありません。

しかし、ここに落とし穴があります。「平均確率が低い」ことは、「自分には来ない」ことを意味しません。税務署は限られた人員の中で、調査を「来そうな人」に集中させているからです。確率が低いからこそ、その低い確率が誰に向かっているのかを知ることが重要なのです。

この記事では、調査する側だった元国税調査官(国税OB)の立場から、国税庁が公表する数字をもとにした税務調査の実態、税務署がどう調査先を選ぶのか、そして「来やすい人」の特徴を解説します。

この記事でわかること

  • 税務調査の確率の実態(国税庁データに基づく数字)
  • 確率が下がっているのに油断できない理由
  • 税務署がどう調査先を選ぶのか(内側の視点)
  • 税務調査が来やすい人の具体的な特徴

1. 税務調査の確率——数字で見る実態

(1) 個人の実地調査は、平均すれば1%未満

国税庁が公表している「税務行政の現状と課題」(令和6年12月)によれば、実地調査の件数を、税額のある申告を行った納税者数で割った「個人実調率」は、令和5事務年度で約0.7%です。法人実調率も約1.7%とされています。

なお、この個人実調率は、個人事業主だけを母数にした確率ではなく、税額のある申告を行った個人全体を母数にしたものです。とはいえ、個人の実地調査の割合の目安として参考になる数字です。

単純に計算すれば、個人の場合、1年間に実地調査を受けるのは100人あたり1人にも満たない、ということになります。「思ったより低い」と感じた方も多いでしょう。

(2) 実調率は、長期的に低下している

さらに、この実調率は長期的に下がり続けています。同じ国税庁の資料で過去と比べると、法人実調率は平成15事務年度の3.9%から令和5事務年度の1.7%へ(約2分の1)、個人実調率も1.0%から0.7%へ(約3分の2)と低下しています。

背景にあるのは、申告件数や法人数は増え続け、経済のデジタル化・グローバル化が進む一方で、国税職員の数や予算はほとんど増えていない、という構造です(これも同資料で示されています)。限られた人員で増え続ける納税者に対応するため、一人ひとりを調査する割合は、どうしても下がっていきます。

(3) ただし「実地調査だけ」が調査ではない

ここで注意が必要です。実調率が示すのは、調査官が実際に臨場する「実地調査」の割合です。これとは別に、税務署は文書や電話で申告内容の見直しを求める「簡易な接触」も行っています。

「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた「調査等」の件数は、令和6事務年度の所得税で73万6千件にのぼります(令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況)。実地調査の確率は低くても、何らかの形で税務署から接触を受ける機会は、実調率の数字よりも広いということです。

「簡易な接触」は、調査官が自宅や事業所に来るわけではなく、文書や電話、来署依頼によって申告内容の見直しを促すものです。実地調査ほどの深度はありませんが、これも申告内容の誤りを是正するための立派な接触であり、ここで対応を誤れば、より本格的な調査につながることもあります。「調査官が来なかった=何もなかった」とは限らないのです。


2. なぜ確率は下がっているのに、油断できないのか

「確率が下がっているなら、ますます安心では」と思われるかもしれません。しかし、調査する側にいた立場から言えば、話は逆です。

(1) 数を絞るほど、選定は鋭くなる

調査できる件数が限られるということは、税務署にとって、「どの納税者を調査するか」の選定がより重要になるということです。やみくもに調査するのではなく、申告漏れの可能性が高いと見込まれる納税者に、限られた調査を集中させる——これが実調率低下の時代の調査の姿です。

国税庁も、この資料の中で、AI・データ分析を活用し、特に必要性の高い分野や悪質な事案などに重点化していく方針を明確にしています。つまり、調査は「くじ引き」のように無差別に当たるのではなく、データに基づいて「来そうな人」が選ばれているのです。実際、富裕層や海外取引、無申告、ネット取引といった分野は、国税庁が重点的に取り組む対象として、繰り返し公表資料に挙げられています。

(2) 1件あたりは、深く・重くなっている

件数を絞る一方で、1件の調査の中身は濃くなっています。令和6事務年度の所得税の「調査等」による追徴税額は過去最高の1,431億円に達し、実地調査の1件あたりの追徴税額は241万円にのぼります(令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況)。

実地調査は件数を絞りつつ、1件あたりの追徴税額は増えている——これが今の税務調査の傾向です。確率が低いからと油断していると、いざ自分が選ばれたときの負担は、決して小さくありません。


3. 税務署はどう調査先を選ぶのか——内側の視点

では、限られた調査は、どういう基準で「来そうな人」に向けられるのか。選定の現場で見られているポイントを整理します。

(1) 申告内容の異常値

最も基本的なのは、申告内容そのものの不自然さです。売上が急に伸びているのに所得が増えていない、利益率が同業種の水準から大きく外れている、特定の経費だけが突出している——こうした「数字の違和感」は、選定の出発点になります。

(2) 資料情報との不一致

税務署には、取引先からの法定調書、国外送金等調書、CRSによる海外口座情報など、お金の流れに関する資料情報が集まります。また、調査の必要がある場合には、金融機関への照会等により銀行口座の入出金を把握することもあります。これらと申告内容を突き合わせ、食い違いが大きければ、調査の必要性が高いと判断されます。

(関連記事:税務調査で通帳はどこまで見られる?|元国税調査官が個人口座・家族口座の扱いを解説)

実は、実地調査にもいくつか種類があります。多額の脱漏が見込まれる事案にじっくり日数をかける「特別調査」、申告漏れが見込まれる事案に短期間で臨場する「着眼調査」などです。着眼調査は、まさに資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れが見込まれると判断された個人を対象とするもので、データに基づく選定が調査に直結していることが分かります。

(3) 無申告・繰り返しの誤り

そもそも申告がない無申告者や、過去の調査で誤りを指摘された後も同じ誤りを繰り返している納税者は、引き続き注視されやすくなります。

(4) AIによる申告漏れの予測

国税庁の近年の公表資料では、調査対象の選定にAIを活用していることが明記されています。申告情報や過去の調査結果などをもとに、申告漏れの可能性が高い納税者を判定し、職員が調査対象を選ぶ際の参考にしている、と説明されています。「目立たなければ大丈夫」という時代ではなくなりつつあるのです。


4. 税務調査が来やすい人の特徴

選定の仕組みを踏まえると、「来やすい人」の特徴が見えてきます。具体的に挙げます。

(1) 現金商売をしている

現金でのやり取りが多い事業は、記録が残りにくく、売上の計上漏れが起きやすいと見られる傾向があります。国税庁が公表している「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」では、キャバクラをはじめ、バーやスナックなど、現金取引が多いとされる夜の飲食業が複数、上位に並んでいます(令和6事務年度)。現金商売は、それ自体が注目されやすい業態だということです。

(2) 売上が伸びている・急に増えた

売上が大きく伸びた年は、利益も相応に出ているはずだという見方がされます。売上の伸びに対して所得の伸びが小さいと、計上漏れや経費の過大計上が疑われやすくなります。

(3) 無申告・期限後申告が続いている

無申告は、税務署が重点的に取り組んでいる分野です。たとえば国税庁の資料では、給与収入のほかにゲーム機器やスマートフォンの転売による収入があるのに申告していなかった人に課税した事例が紹介されており、インターネット取引については電子商取引専門の調査チームによる取組も行われています。「ネットの取引だから分からない」という発想は通用しません。

(関連記事:個人事業主・フリーランスに税務調査は来る?|対象になる人・流れ・対応を解説)

(4) 開業から数年が経過している・過去に重加算税がある

開業初年度すぐの調査は多くありませんが、申告実績が数年分積み上がった頃は、傾向をつかんだ上で調査対象になり得ます。また、過去に重加算税を課されたことがある場合、その後の申告も注視されやすくなります。


5. 確率が低くても油断できない理由

ここまでをまとめると、「平均確率は低いが、自分が選ばれる確率は特徴次第で大きく変わる」ということになります。そのうえで、確率の数字に安心してはいけない理由を、もう一つ挙げます。

それは、一度調査の対象になれば、その年だけでは済まないということです。更正・決定等が可能な期間は原則5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。「今年は運よく来なかった」と無申告や誤りを放置していると、いざ調査が来たときには、複数年分がまとめて問題になります。確率が低いことは、放置してよい理由にはならないのです。

(関連記事:税務調査は何年分さかのぼる?|元国税調査官が3年・5年・7年の違いと決まり方を解説)


6. 確率を下げ、来ても困らないための備え

では、どう備えればよいか。やるべきことはシンプルです。

  • 正確な申告と帳簿の整備:申告内容に不自然な点がなく、帳簿が整っていることが、選定対象から外れる最善策です。AI等による分析の対象となるのも、申告内容や資料情報とのズレです。
  • 気になる点は、調査通知前に自主的な見直しを:過去の申告に誤りの自覚があれば、調査の連絡が来る前に修正申告・期限後申告をする方が、加算税の面で有利です。
  • 不安があれば専門家へ:自分が「来やすい特徴」に当てはまるかどうか、申告内容にリスクがないかは、調査実務を知る税理士に見てもらうのが確実です。

(関連記事:税務調査では何を聞かれる?|元国税調査官が質問の意図と答え方を解説)


7. よくある質問

Q1. 税務調査は何年に1回くらいの割合で来ますか?

個人の実地調査の割合(実調率)は、平均すると年1%未満です。単純計算では、平均的には相当に低い頻度ということになります。ただし、これはあくまで全体の平均であり、申告内容や業種によって実際の確率は大きく異なります。「来やすい特徴」に当てはまる方は、平均より高い頻度で対象になり得ます。

Q2. 売上(年商)がいくらから調査の対象になりやすいですか?

「いくら以上なら対象」という明確な線引きはありません。売上の金額そのものより、申告内容に不自然さがあるか、資料情報と食い違いがあるかが重視されます。ただし、消費税の課税事業者判定に関わる規模、たとえば基準期間等の課税売上高が1,000万円を超える規模になると、確認すべき項目が増えるため、注目されやすくなる傾向はあります。

Q3. 赤字でも税務調査は来ますか?

来ることがあります。赤字でも、売上の計上漏れや経費の過大計上が疑われれば、調査の対象になります。「赤字だから税金が出ない=調査は来ない」とは限りません。特に、赤字が続いているのに事業が継続できている場合などは、かえって疑問を持たれることもあります。

Q4. 開業して何年目が来やすいですか?

明確な決まりはありませんが、実務上、申告実績が複数年分積み上がった頃に対象になることがあります。これは、複数年分の申告を比較することで、傾向や不自然さを把握しやすくなるためです。ただし、内容によっては、もっと早い段階で調査が入ることもあります。

Q5. 一度調査を受けたら、しばらく来ないですか?

必ずしもそうとは言えません。前回の調査で大きな問題がなければ、しばらく間隔が空くことはありますが、「一度受けたから当分安心」という保証はありません。特に、前回の調査で重加算税の対象となるような非違があった場合は、その後も注視されやすくなります。


8. まとめ——確率論で安心せず、「来やすい特徴」で判断を

個人の実地調査の割合は、平均すれば1%未満で、長期的にも下がっています。しかし、それは税務署が調査を「来そうな人」に集中させているからにほかなりません。確率が低いことは、安心の理由にはならないのです。

大切なのは、平均の数字ではなく、自分が「来やすい特徴」に当てはまっていないかです。現金商売、売上の急増、無申告、過去の重加算税——心当たりがあるなら、確率論で安心するのではなく、申告内容を整え、不安な点は調査が来る前に解消しておくことが、最も確実な備えになります。

「自分は対象になりやすいのか」「申告内容にリスクはないか」と気になる方は、調査の連絡が来る前の今の段階でご相談ください。


税務調査のリスクが気になる方へ

以下のような状況の方は、できるだけ早くご相談ください。

  • 現金商売や売上の急増など、「来やすい特徴」に心当たりがある
  • 無申告・期限後申告の状態を、調査が来る前に是正したい
  • 申告内容に不安があり、調査リスクを専門家に確認したい
  • 過去に重加算税を課されたことがあり、その後の申告が不安だ
  • すでに税務調査の連絡が来ている

国税OB(元大阪国税局)の税理士が、調査リスクの確認、調査前の自主的な見直し、調査当日の立会いについて、当局側の視点も踏まえてサポートします。調査先がどう選ばれるのかを知る立場から、実務に即した助言が可能です。

顧問税理士がいる方の調査立会いのみのご依頼も可能です。ご依頼内容に応じて、当事務所での対応または提携する国税OB税理士のネットワークを活用し、状況に応じた適切な対応を提供します。

顧問契約・税務調査に関する初回相談は無料です。ただし、個別具体的な税務判断、セカンドオピニオン等はスポット相談として有料にて承ります。関西全域・オンラインで全国対応。

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引用・参考文献
・国税庁「税務行政の現状と課題」(令和6年12月)
・国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月)
・国税通則法70条(国税の更正、決定等の期間制限)、68条(重加算税)
・市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)
・市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)

著者:市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。元大阪国税局・資料調査課勤務。資料調査課では国際課税や富裕層に対する調査事務に従事。税務調査対応・立会い、無申告対応、重加算税、国際課税など、税務調査リスクの高い分野を中心に税務サポートを提供。共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。