税務調査は何月に多い?|元国税調査官が調査の時期・周期と今からの備えを解説
著者:市田佳祐(税理士・国税OB)
「税務調査が多い時期はいつなのか、うちにもそろそろ来るのではと不安だ」
「税務調査は何年ごとに来るものなのか、周期があるなら知りたい」
「調査が来やすい時期の前に、何を準備しておけばよいのか分からない」
税務調査には、実は「来やすい時期」があります。そして、その理由は税務署の内部事情——事務年度と人事のサイクル——にあります。この仕組みを知っているかどうかで、備えのタイミングは大きく変わります。
誤解されやすい点ですが、「税務調査は○年ごとに必ず来る」という決まった周期はありません。一方で、実務上、1年の中で調査が本格化しやすい時期があります。それが7月から11月、いわゆる「調査の最盛期」です。
国税庁の公表資料によれば、令和6事務年度における所得税の「実地調査」と「簡易な接触」を合わせた調査等件数は73万6千件にのぼり、前事務年度の60万5千件から大きく増加しています。もっとも、この件数には、納税者宅等に臨場しない文書・電話・来署依頼等による「簡易な接触」も含まれるため、いわゆる実地調査だけの件数ではない点には注意が必要です。調査等件数が増加し、AIや資料情報の活用も進む中で、「自分には関係ない」と言い切れる事業者は、年々少なくなっています。
この記事では、調査する側だった元国税調査官(国税OB)の立場から、税務調査が多い時期とその理由、「何年ごとに来るのか」という周期の実際、そして最盛期を前にした今からできる備えについて、内側の視点で解説します。
この記事でわかること
- 税務調査が7月〜11月に多くなる理由(税務署の内部事情)
- 「何年ごとに来る」という周期はあるのか
- 調査が来やすい人の傾向と、時期との関係
- 最盛期を前に、今からできる備え
1. 税務調査が多いのは7月〜11月——その理由
税務調査(実地調査)は1年を通じて行われますが、件数が増えて本格化するのは、例年7月から11月にかけてです。なぜこの時期に集中するのか。理由は、税務署の1年のサイクルにあります。
(1) 国税の「事務年度」は7月始まり
一般の会社の事業年度や国の会計年度(4月始まり)と異なり、国税組織の事務年度は7月1日に始まり、翌年6月30日に終わります。つまり、税務署にとって7月は「新年度のスタート」です。
新しい事務年度が始まると、各税務署では調査の計画が立てられ、調査対象の選定が本格的に動き出します。夏から秋は、税務署が1年で最も調査に注力できる時期なのです。
(2) 7月の人事異動後に、調査が動き出す
国税職員の定期人事異動は、例年7月上旬に行われます。異動を終えた調査担当者が新しい持ち場で体制を整え、調査先の選定・準備を経て、8月から9月にかけて実地調査が本格化する——これが、調査する側にいた者として実感のある1年の流れです。
特に9月〜11月は、年内に一定の調査を終えたいという事務運営上の事情も重なり、調査の連絡(事前通知)が増える時期です。
また、人事異動の直後は、前任者から引き継いだ事案や、前事務年度から持ち越した検討案件の処理も動き出します。「異動でリセットされるから、しばらく来ない」ということはなく、むしろ新体制で資料を見直す過程で、新たに調査対象として浮上することもあります。
(3) 12月〜春が比較的少ない理由
一方、12月から翌年の春にかけては、調査は相対的に少なくなる傾向があります。理由は単純で、税務署がそれどころではなくなるからです。
- 12月〜1月:年末調整・法定調書関係の事務が集中する
- 2月〜3月:所得税の確定申告期。署をあげて申告対応にあたる
- 4月〜6月:事務年度の締めくくり。進行中の調査の取りまとめが中心になる
もちろん、この時期に調査がゼロになるわけではありません。法人への調査や、進行中の調査の継続は年間を通じて行われます。あくまで「新規の調査が立ち上がりやすいのは7月以降」という傾向の話です。
税務署の1年と調査の傾向を整理すると、次のようになります。
| 時期 | 税務署の状況 | 調査の傾向 |
|---|---|---|
| 7月 | 事務年度開始・人事異動 | 調査計画・対象選定が動き出す |
| 8月〜11月 | 調査事務に最も注力できる時期 | 最盛期。事前通知の連絡が増える |
| 12月〜1月 | 年末調整・法定調書事務 | 新規の調査は落ち着く |
| 2月〜3月 | 確定申告期で署をあげて対応 | 新規の調査は少ない |
| 4月〜6月 | 事務年度の締め | 進行中の調査の取りまとめが中心 |
2. 「何年ごとに来る」という周期はあるのか
(1) 決まった周期は存在しない
「税務調査は3年ごと」「5年に1回は来る」といった話を耳にすることがありますが、法令上も実務上も、決まった周期はありません。調査対象は、申告内容や資料情報の分析に基づいて、確認の必要性が高いと判断された納税者から選ばれます。
10年以上調査が来ていない事業者も珍しくない一方で、前回の調査から数年で再び調査を受けるケースもあります。「前回から○年経ったから、そろそろ来る」「○年来ていないから、もう来ない」のどちらも、根拠のある考え方ではありません。
なお、過去の調査で多額の申告漏れや重加算税の対象となる非違があった場合、その後の申告状況が引き続き注視されやすくなる傾向はあります。一度調査を受けたからしばらく安心、というものでもない点には注意が必要です。
(2) 法人と個人の傾向の違い
そのうえで、傾向として言えるのは次の点です。
- 法人:個人に比べると実地調査の割合が高く、規模が大きい・過去に非違があった法人ほど、調査の間隔が短くなる傾向があります。
- 個人事業主:実地調査の割合は法人より低いものの、無申告や申告内容の不自然さなど、何らかの「きっかけ」があると対象になりやすくなります。
つまり、周期で決まるのではなく、申告内容そのものが調査の間隔を決めるというのが実際です。「何年来ていないか」を数えるより、「いま調査が入っても説明できる申告になっているか」を確認する方が、はるかに意味があります。
(関連記事:個人事業主・フリーランスに税務調査は来る?|対象になる人・流れ・対応を解説)
3. 調査が来やすい人と、時期の関係
「7月以降に調査が増える」という全体傾向に、「調査対象に選ばれやすい申告」という個別要因が重なったとき、調査の可能性は高まります。選ばれやすい申告の特徴は、たとえば次のようなものです。
- 売上が伸びているのに所得が増えていない、経費の割合が業種の水準から大きく外れている
- 無申告・期限後申告が続いている
- 現金商売、ネット取引など、税務署が資料情報を重点的に収集している分野の事業
- 取引先への調査や各種資料情報から、申告内容との食い違いが把握されている
近年は、国税当局が収集した資料情報や申告データをAIも活用して分析し、調査対象を抽出する取組みが進んでいます。「目立たなければ大丈夫」という時代ではなくなりつつあり、申告内容と各種データの整合性が、機械的にチェックされる方向に向かっています。
裏を返せば、こうした特徴に心当たりがある方にとって、調査が立ち上がる前の今(6月)は、備えに使える最後のまとまった時間だということです。
4. 最盛期を前に、今からできる備え
(1) 帳簿・資料の総点検
調査で必ず確認されるのは、帳簿・領収書・請求書・通帳です。次の点を確認しておきましょう。
- 記帳が最新まで追いついているか(「あとでまとめて」が溜まっていないか)
- 領収書・請求書が年分ごとに整理され、すぐ取り出せるか
- 事業に使っている口座を把握できているか
- 年末年始前後の売上の計上時期にズレがないか
(2) 気になる点は、調査の前に自主的な見直しを
過去の申告に「ここは怪しいかもしれない」と自分でも思う点があるなら、調査の連絡を待つのではなく、先に税理士へ相談して、自主的な見直しを検討することを強くお勧めします。
過去の申告に誤りがあり、調査通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、原則として過少申告加算税は課されません。一方、調査通知の後に修正申告をした場合には、過少申告加算税が課されることがあります。また、税務署からの連絡が税務調査ではなく行政指導にとどまる場合には、その行政指導に基づいて自主的に修正申告をしても、過少申告加算税は賦課されません(延滞税が生じる場合はあります)。同じ誤りを正すのでも、「指摘される前に自分で直す」のと「調査で指摘されてから直す」のとでは、負担が大きく違います。
(関連記事:修正申告と更正処分の違いは?|どちらを選ぶべきか・デメリットを解説)
(3) 書類の保存状態と、相談先の確保
帳簿や領収書などの書類には、法律で定められた保存期間があります。青色申告の場合、帳簿や決算関係書類、現金預金取引等関係書類は原則7年、請求書・見積書・契約書・納品書などのその他の取引関係書類は5年が目安です。ただし、所得金額や書類の種類、消費税・インボイス関係書類かどうかによって保存期間が異なるため、自分の保存義務に応じて整理しておく必要があります。調査では過去の年分がさかのぼって確認され得るため、すぐに取り出せる状態にしておきましょう。
あわせて、いざ連絡が来たときに相談できる税理士を、平時のうちに見つけておくことも備えの一つです。調査の連絡が来てから慌てて探すより、事前に申告内容を見てもらい、リスクの所在を共有しておく方が、実際の調査でもはるかに落ち着いて対応できます。
5. 調査の連絡が来てしまったら
実際に税務署から調査の事前通知の連絡が来た場合の対応は、次の記事で詳しく整理しています。要点だけ挙げると、その場で日程を即答しない・通知内容を正確にメモする・早めに税理士に相談するの3つです。
また、税務署からの連絡が、調査の事前通知なのか、行政指導(お尋ねなど)としての連絡なのかによって、その後の対応や加算税の取扱いは変わります。電話を受けた際に「これは税務調査の事前通知ですか、それとも行政指導としてのご連絡ですか」と確認することも、有効な初動の一つです。
私が『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿した際にも整理しましたが、税務署からの接触は、それが調査なのか行政指導なのかという接触方法の見極めを含めて、初動の対応がその後の進行に影響します。連絡が来てから慌てるのではなく、「7月以降は連絡が増える時期だ」と知った上で、心づもりをしておくことが何よりの備えです。
(関連記事:税務調査の事前通知が来たら|日程変更・延期と初動対応を国税OB税理士が解説)
(関連記事:税務調査では何を聞かれる?|元国税調査官が質問の意図と答え方を解説)
6. よくある質問
Q1. 10年以上、税務調査が来ていません。もう来ないと考えてよいですか?
そうとは言えません。調査の対象は周期ではなく、申告内容や資料情報に基づいて選定されます。長く調査がなかった事業者でも、申告内容に確認の必要が生じれば対象になります。逆に、長く来ていないこと自体は心配する材料でもありません。
Q2. 開業から何年目くらいで調査が来やすいですか?
開業初年度から調査が入るケースは多くありません。申告実績が複数年分積み上がった頃——目安として開業3〜5年程度——に連絡が来ることもありますが、これも決まりがあるわけではなく、申告内容次第です。
Q3. 7月〜11月以外は、調査は来ないのですか?
いいえ、調査自体は年間を通じて行われます。あくまで「新規の調査が立ち上がりやすいのが7月以降」という傾向です。春に調査の連絡が来ることもあります。
Q4. 調査が多い時期の前に、税理士に相談する意味はありますか?
あります。調査が立ち上がる前であれば、帳簿の整え方の確認や、気になる点の自主的な見直し(調査通知前の修正申告)など、取れる選択肢が最も多い状態です。連絡が来てからでは選べない対応もあるため、不安がある方は早めの相談をお勧めします。
Q5. 繁忙期を避けるなど、調査の時期をこちらの都合で調整できますか?
調査の開始日時は事前通知で示されますが、業務上やむを得ない事情や税理士の日程など、合理的な理由があれば、日程の変更を申し入れることができます。「決算期で繁忙」「仕入れの最盛期」といった事業上の事情も、具体的に伝えれば考慮されることがあります。ただし、調査自体を断ることはできず、正当な理由なく帳簿書類等の提示・提出を拒むと、罰則が科されることがあります。
Q6. 税務調査の連絡は、何月頃に来ることが多いですか?
傾向としては、人事異動と調査計画が落ち着いた8月以降、特に9月〜11月に事前通知の連絡が増える印象です。ただし、これも事案により様々で、7月早々に連絡が来ることもあれば、年明けに来ることもあります。
7. まとめ——周期より「申告内容」、そして備えるなら今
税務調査には「○年ごと」という決まった周期はありませんが、実務上、1年の中では7月〜11月に本格化しやすい傾向があります。その背景には、事務年度が7月に始まり、人事異動を経て調査計画が動き出すという、税務署の内部のサイクルがあります。
調査が来るかどうかを決めるのは、周期ではなく申告内容です。だからこそ、最盛期を前にした今のうちに、帳簿・資料を整え、気になる点があれば自主的に見直しておくことが、最も効果的な備えになります。
「うちはそろそろ来るかもしれない」「過去の申告に不安がある」という方は、調査の連絡が来る前の、選択肢が多い今の段階でご相談ください。
税務調査への備え・対応でお困りの方へ
以下のような状況の方は、早めの対応をおすすめします。
- 調査が増える時期を前に、申告内容や帳簿に不安がある
- 過去の申告に気になる点があり、調査の前に見直しておきたい
- 無申告・期限後申告の状態を、連絡が来る前に是正したい
- 税務署から調査の事前通知や連絡がすでに来ている
- 顧問税理士はいるが、税務調査に詳しい専門家にも相談したい
国税OB(元大阪国税局)の税理士が、調査が来る前の自主的な見直し、税務署から連絡が来た後の初動対応、調査当日の立会いについて、当局側の視点も踏まえてサポートします。
顧問税理士がいる方の調査立会いのみのご依頼も可能です。ご依頼内容に応じて、当事務所での対応または提携する国税OB税理士のネットワークを活用し、状況に応じた適切な対応を提供します。
顧問契約・税務調査に関する初回相談は無料です。ただし、個別具体的な税務判断、セカンドオピニオン等はスポット相談として有料にて承ります。関西全域・オンラインで全国対応。
引用・参考文献
・国税通則法65条(過少申告加算税)、74条の2(質問検査権)、74条の9(事前通知)
・国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
・国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
・市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)
・市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)
著者:市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。元大阪国税局・資料調査課勤務。資料調査課では国際課税や富裕層に対する調査事務に従事。税務調査対応、無申告対応、重加算税、国際課税など、税務調査リスクの高い分野を中心に税務サポートを提供。共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。

