確定申告をしないとどうなるか|元国税調査官が無申告のリスクと対応を解説


著者:市田佳祐(税理士・国税OB)

「確定申告をしていないが、このまま放置するとどうなるのか不安だ」
「申告しなくても、税務署にはバレないのではないか」
「何年も申告していないが、今からでも対応できるのか」
「無申告のままだと、加算税や刑事罰のリスクがどれくらいあるのか知りたい」

確定申告が必要であるにもかかわらず申告をしていない、いわゆる「無申告」の状態について、ご相談をいただくことが少なくありません。

誤解されやすい点ですが、無申告の状態であっても、税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に申告すれば、加算税の負担を大きく軽減できる場合があります。「もう何年も申告していないから手遅れだ」とあきらめてしまう方もいますが、早く対応するほどリスクを減らせるのが無申告の特徴です。

一方で、無申告を放置し続けると、税務調査による更正・決定、無申告加算税・延滞税の負担、悪質なケースでは重加算税や刑事罰のリスクが高まります。近年は、法定調書や各種資料情報、KSK(国税総合管理)システムによるデータ活用が進み、無申告者が把握される精度が高まっています。

この記事では、確定申告をしないとどうなるか(無申告のリスク)、確定申告が必要な人、税務署が無申告を把握する経路、無申告を続けた場合の最悪のケース、今から自主的に申告するメリット、長期間無申告が続いている場合の対応について、元国税調査官の立場から整理します。

この記事でわかること

  • 確定申告をしないと生じる3つのリスク(加算税・延滞税・刑事罰)
  • そもそも確定申告が必要なのはどんな人か
  • 「申告しなくてもバレない」が通用しない理由
  • 今から自主的に申告する場合のメリットと、長期無申告の対応

1. 確定申告をしないとどうなるか——3つのリスク

確定申告が必要であるにもかかわらず申告をしなかった場合、主に次の3つのリスクが生じます。

(1) 無申告加算税

申告期限までに確定申告をしなかった場合、本来納めるべき税額に加えて無申告加算税が課されます。税率は、申告のタイミングによって異なります。

申告のタイミング 無申告加算税の税率
調査の事前通知前の自主的な期限後申告 5%
調査の事前通知後・決定予知前(令和5年分以降) 50万円まで10%、50万円超300万円まで15%、300万円超25%
調査による決定を予知した後 50万円まで15%、50万円超300万円まで20%、300万円超30%

なお、令和5年分以降については、前年・前々年分の所得税について無申告加算税等を課されたことがある場合など、一定の場合には無申告加算税が10%加重されることがあります。また、調査による決定を予知した後の期限後申告等については、過去5年以内に一定の無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合にも、10%加重されることがあります。

(2) 延滞税

納付すべき税額を法定納期限までに納めなかった場合、法定納期限の翌日から納付の日までの日数に応じて延滞税が課されます。延滞税は日数の経過に応じて増加するため、放置する期間が長いほど負担が大きくなります。

(3) 重いケースでは刑事罰のリスク

単なる申告漏れにとどまらず、偽りその他不正の行為により税を免れた場合や、税を免れる目的で申告書を提出しなかったと認められるような悪質なケースでは、刑事罰の対象となる可能性があります。所得税法などでは、こうした行為について罰則が定められています。

無申告が、単なる失念ではなく、意図的な所得隠しと判断された場合には、後述する重加算税や刑事罰のリスクが現実のものとなります。


2. そもそも確定申告が必要なのはどんな人か

「自分は確定申告が必要なのか分からない」という方も少なくありません。主に次のような方は、確定申告が必要となる場合があります。

(1) 個人事業主・フリーランス

事業所得がある個人事業主・フリーランスの方は、所得が一定額を超える場合、確定申告が必要です。開業届を出していなくても、実態として事業による所得があれば申告義務が生じます。

(2) 給与所得者でも申告が必要なケース

給与所得者(会社員)であっても、次のような場合は確定申告が必要となることがあります。

  • 給与の年間収入金額が2,000万円を超える場合
  • 給与を1か所から受けており、給与・退職所得以外の所得(副業・配当・不動産等)の合計額が20万円を超える場合
  • 2か所以上から給与を受けており、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える場合

(3) 副業・ネット取引・水商売などの収入がある場合

近年、特に申告漏れが問題となりやすいのが、次のような収入です。

これらの収入は、源泉徴収や年末調整で完結しないことが多く、自分で確定申告をする必要があります。「少額だから」「現金だから」といった理由で申告していないケースが見られますが、いずれも申告義務の有無は所得の性質と金額で判断されます。


3. 「申告しなくてもバレない」が通用しない理由

無申告の方の中には、「申告しなければ税務署には分からない」と考えている方もいます。しかし、税務署は申告内容だけを見ているわけではなく、さまざまな経路で所得を把握しています。

(1) 法定調書・取引先調査・各種資料情報

税務署は、法定調書、取引先調査、各種資料情報などを通じて、納税者の取引を多角的に把握しています。たとえば、報酬の支払調書、不動産の取引情報、配当の支払調書などは、支払者側から税務署に提出されるため、本人が申告していなくても把握される場合があります。

(2) KSK2・AIによるデータ活用

国税庁では、KSK(国税総合管理)システムを活用して、申告情報・法定調書・各種資料情報を一元的に管理しています。また、令和8年9月24日には国税システムの更改が予定されており、KSK2対応を含め、税務行政のデジタル化が進められています。国税庁は、収集した資料情報をさまざまな角度から分析し、調査に活用していることを公表しています。

(関連記事:KSK2とは何か——令和8年導入の新システムが税務調査に与える影響)

(関連記事:AI税務調査の本当のところ——「選定の最適化」が意味すること)

(3) 銀行口座・決済情報

税務調査では、銀行口座の入出金やネット決済の履歴が確認されることがあります。現金商売であっても、最終的に売上が口座に入金されていれば、その動きから所得が推測されることがあります。「現金だから把握されない」という前提は、避けるべきです。


4. 無申告を続けた場合に起こり得る最悪のケース

(1) 税務調査による更正・決定

無申告の状態が続くと、税務調査により、税務署が職権で税額を確定させる「決定」が行われることがあります。帳簿や資料がない場合には、同業者の所得率などを用いた推計課税が行われることもあります。

(2) 7年さかのぼる調査・重加算税

税務調査による課税の対象期間(除斥期間)は、通常は5年です。しかし、偽りその他不正の行為により税を免れた場合には、7年までさかのぼって課税されることがあります。

また、所得を意図的に隠していたなど、隠蔽・仮装が認められる場合には、無申告加算税に代えて重加算税(無申告型は原則40%)が課されます。重加算税は、国税通則法68条2項に規定されています。

(関連記事:税務調査で「重加算税になる」と言われたら|判断基準と対応を解説)

(3) 財産の差押え

確定した税額を納付しない場合、最終的には財産の差押えなどの滞納処分が行われることがあります。預金、給与、不動産などが対象となり得ます。


5. 今から自主的に申告する場合のメリット

(1) 期限後申告による加算税の軽減

無申告の状態であっても、税務署から調査の調査通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は原則として5%に軽減されます。これに対し、調査が進んでからの申告では、前述のとおり加算税の負担が大きくなります。なお、期限後申告であっても、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われるなど一定の要件を満たす場合には、無申告加算税が課されないこともあります。

「いずれ対応しなければ」と考えているのであれば、調査の連絡が来る前に動くことが、加算税負担を抑える最も確実な方法です。

(2) 税務署からの接触前に対応する重要性

税務署からの接触には、行政指導としての「お尋ね」や、税務調査などさまざまな段階があります。私自身、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)の特集「税務調査の傾向と対策」でも整理しましたが、税務署からどの段階で接触を受けるかによって、その後の対応や加算税の取扱いが変わってきます。接触を受ける前に自主的に対応することが、結果的に負担の軽減につながります。

(関連記事:税務署から「お尋ね」が届いたら|無視のリスクと対応を解説)


6. 無申告が長期間続いている場合の対応

(1) 何年分さかのぼって申告するか

長期間無申告が続いている場合、何年分さかのぼって申告するかが問題となります。期限後申告は、原則として申告義務のある年分について行う必要があり、過去にさかのぼって申告することになります。具体的に何年分が必要となるかは、所得の状況や除斥期間との関係で個別に判断されます。

(2) 記帳・資料が手元にない場合

長期間無申告だった場合、帳簿や領収書などの資料が手元に残っていないことも少なくありません。この場合でも、銀行口座の履歴、取引先からの支払明細、各種の記録などをもとに、可能な限り正確な所得を再現していくことになります。

資料が不十分なまま自己流で申告すると、後の税務調査で説明を求められた際に対応が難しくなることがあります。私自身、共著『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年)でも整理しましたが、税務調査では納税者の説明内容が記録され、後の課税判断に影響することがあります。長期無申告の申告は、当初から正確性を意識して進めることが重要です。


7. 早めに税理士に相談する意義

(1) 適切な申告内容を整理できる

無申告の期限後申告では、何年分を、どのような内容で申告するかの判断が重要です。税務調査の経験がある税理士であれば、加算税の軽減を意識しつつ、適切な申告内容を整理することができます。

(2) 税務調査に発展した場合にも対応できる

万一、自主申告の前に税務調査の連絡が来た場合でも、税理士が関与していれば、調査の立会いから修正申告の検討まで、継続的なサポートを受けられます。

(3) 加算税の軽減余地を最大化できる

加算税の軽減は、「調査通知前」「決定予知前」などのタイミングによって適用範囲が異なります。早めに対応することで、軽減の余地を最大限に活用できます。無申告の状態が気になっている場合は、できるだけ早い段階で税理士へご相談されることをお勧めします。


確定申告をしていない・無申告でお困りの方へ

以下のような状況の方は、早めの対応をおすすめします。

  • 確定申告が必要なのにしておらず、放置している期間がある
  • 副業・ネット取引・水商売などの収入を申告していない
  • 何年も無申告のままで、今からどう対応すべきか分からない
  • 税務署から「お尋ね」や連絡が来て不安を感じている
  • 記帳・資料が手元になく、自分で申告するのが難しい
  • 無申告が税務調査に発展しないか心配している

国税OB(元大阪国税局)の税理士が、無申告の期限後申告、加算税の軽減を意識した対応、税務調査への発展防止について、当局側の視点も踏まえて対応します。

顧問税理士がいる方の調査立会いのみのご依頼も可能です。ご依頼内容に応じて、当事務所での対応または提携する国税OB税理士のネットワークを活用し、最適な対応を提供します。

顧問契約に係るご相談は初回無料。スポット相談は1時間33,000円(税込)です。関西全域・オンラインで全国対応。

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引用・参考文献
・国税通則法65条(過少申告加算税)、66条(無申告加算税)、68条(重加算税)、70条(国税の更正、決定等の期間制限)
・所得税法238条(ほ脱犯等)、241条(申告書不提出に関する罰則)
・国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」
・国税庁タックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
・国税庁タックスアンサーNo.9205「延滞税について」
・国税庁タックスアンサーNo.9206「国税を期限内に納付できないとき」
・国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
・国税庁「国税システムの更改について」
・市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年)
・市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)

著者:市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。元大阪国税局・資料調査課勤務。資料調査課では国際課税や富裕層に対する調査事務に従事。無申告対応、税務調査対応、国際課税、富裕層・資産家、インターネット取引など、税務調査リスクの高い分野を中心に税務サポートを提供。共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。