税務調査に強い税理士が近くにいない?|オンライン相談・依頼の方法を解説
著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官/大阪国税局 資料調査課 出身)
「税務調査の連絡が来たが、近くに税務調査を専門にしている税理士が見つからない」
「地元の税理士に断られてしまった。遠方の税理士に頼んでもいいのか」
「オンラインで相談できると聞いたが、調査当日はどうなるのか知りたい」
税務調査への対応は、日々の記帳や申告書の作成とは性質の異なる分野です。地域によっては、税務調査への対応を主な業務とする税理士を近隣で探すのが難しい場合があり、こうしたご相談を、都市部以外の方からいただくこともあります。
私は元国税調査官(大阪国税局 個人課税課・資料調査課)の税理士です。この記事では、近くに頼れる税理士が見つからない方に向けて、遠方の税理士に依頼する仕組み、オンラインでできることと当日の立会いの関係、依頼先を選ぶ基準を解説します。
結論:税理士への依頼に地域制限はない。打ち合わせはオンライン、立会いは訪問で対応できる
先に結論をお伝えします。税理士業務に都道府県単位の地域制限はなく、どの地域にお住まいの方でも、税務調査の対応を遠方の税理士に依頼できます。事前の打ち合わせや資料のやり取りはオンラインや電話で進められ、調査当日の立会いは税理士が現地へ訪問する形で対応します。遠方への訪問では交通費等の実費のご負担をお願いすることが一般的ですが、調査対応は経験の差が表れやすい分野であり、「近さ」よりも「調査対応の経験」で選ぶことをおすすめします。
この記事でわかること
- 「近くに税務調査に強い税理士がいない」が起こる理由
- 遠方の税理士に依頼できる制度上の仕組み(税務代理権限証書)
- オンラインでできることと、調査当日の立会いの関係
- 依頼の流れ(初回相談から調査終了まで)と、依頼先を選ぶ基準
- 無申告・急ぎの場合に早く動く意味
1. 「近くに税務調査に強い税理士がいない」は珍しくない
税理士の業務の中心は、多くの場合、日々の記帳や決算・申告書の作成です。税務調査への対応、特に調査官との折衝や質問応答記録書への対応は、これらとは別の経験を要する分野であり、税務調査への対応を専門分野として明示している税理士は、地域によっては見つけにくいことがあります。調査の局面では、帳簿の正確さだけでなく、指摘の根拠の確認、事実関係の説明のしかた、書面への対応といった、申告業務とは異なる判断が求められます。
そのため、「顧問税理士はいるが調査対応は不安がある」「地元で探したが、調査対応を前面に出す事務所が見つからない」という状況は、地域を問わず起こり得ます。これは探し方の問題ではなく、調査対応という業務の性質によるものです。近くで見つからないからといって、一人で調査に臨む必要はありません。
2. 税理士への依頼に地域制限はない:税務代理権限証書の仕組み
税理士が税務調査の対応を代理する場合、税務署に「税務代理権限証書」を提出して代理権限を明らかにします。この仕組みに都道府県単位の地域制限はなく、お住まいの地域と税理士の事務所所在地が離れていても、依頼に支障はありません。
また、調査対象となる税目・年分等について、税務代理権限証書の「調査の通知」欄に納税者の同意が記載されている場合、調査通知や事前通知は税務代理人に対して行えば足りる取扱いです。そのため、通知や日程調整などの連絡窓口を税理士に集約できます。ただし、調査中に納税者本人への質問が行われることはあり、すべてのやり取りが税理士だけで完結するとは限りません。それでも、遠方であることが日々の対応の妨げになることはほとんどありません。
3. 調査官が重点的に確認するポイント:「地方だから来ない」は実態に合わない
調査官は、何も情報を持たずに来るわけではありません。調査先の選定や事前準備では、申告書のほか、取引先から提出された支払調書などの法定調書、過去の申告・調査情報、不動産の登記情報などの資料情報が分析されます。国税庁は、申告漏れの可能性が高い納税者の選定にAIを活用しており、地域を問わずデータに基づいた選定が進んでいます。
国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、所得税の調査等の合計件数は全国で73万6千件、追徴税額は加算税を含め1,431億円と過去最高になりました。文書や電話などによる簡易な接触は約68万9千件と大幅に増えており、都市部から離れた地域でも、資料情報に基づく接触は行われています。特に、所得税の無申告者に対する実地調査(特別調査・一般調査)では、1件当たりの申告漏れ所得金額が2,992万円と、所得税の実地調査(特別調査・一般調査)全体の1,486万円の約2倍にのぼります。
私が資料調査課(国税局で大口事案・悪質事案を担当する部署。通称「料調」)で調査事務に従事していた経験から言えば、調査官は臨場前の準備段階で、収集した資料からある程度の見立てを立てています。あいまいな記憶のまま答えると、事実と異なる回答が記録に残るおそれがあるため、分からないことは「確認して後日回答します」と伝えて差し支えありません。個人の方の調査対象の選ばれ方は「個人事業主・フリーランスに税務調査は来る?」で詳しく解説しています。
4. オンラインでできること・調査当日の立会いの関係
「オンライン対応」と聞くと、すべてが画面越しで完結する印象を持たれるかもしれませんが、正確には次のような役割分担になります。
オンライン・電話でできること:初回相談、申告内容や資料の確認、論点の整理、調査前の想定問答の打ち合わせ、調査後の指摘事項への対応方針の相談、修正申告や期限後申告の準備。実務上のやり取りの大半はここに含まれます。
訪問で行うこと:調査当日の立会いです。実地調査は納税者の事業所や自宅で行われるのが通常のため、税理士が現地へ訪問して同席します。当事務所の場合、調査立会いは全国どこでも訪問して対応しています(遠方への訪問には交通費等の実費を別途ご負担いただきます)。
交通費のご負担が生じても、調査対応の経験がある税理士が立ち会う意味は小さくありません。調査は、事実関係の整理のしかたや、指摘への向き合い方によって進み方が変わる場面のある手続です。なお、事前通知をすると違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準等の把握を困難にするおそれがある等と判断された場合には、法令に基づき事前通知のない調査が行われることもあります(国税通則法第74条の10)。その場合も、遠方の税理士へ連絡し、立会いを希望する旨を伝えることはできます。ただし、納税者側の一方的な判断で調査を拒否又は延期できるとは限りません。調査結果の内容について説明を受け、指摘に納得できれば修正申告等を提出しますが、納得できない点について事実と法令の根拠をもって主張するには、調査実務の経験が支えになります。
5. 遠方の税理士に依頼する流れ
一般的な流れは次のとおりです。
(1)初回相談(オンライン・電話):調査の連絡の内容(どこの税務署の、何の税目の、何年分か)と事業の概要を共有します。事前通知では調査開始の日時・場所、対象税目、対象期間などが伝えられます(国税通則法第74条の9)。税理士への依頼後は、必要に応じて調査日程の協議から任せることができます。すでに日程が通知されている場合でも、合理的な理由があれば変更を協議できることがあります。
(2)資料の共有と論点整理:申告書控え・帳簿・通帳などをデータや郵送で共有し、確認されそうな論点を洗い出します。
(3)調査前の打ち合わせ:当日の流れ、答え方の注意点(事実をありのままに、分からないことは持ち帰る)を確認します。
(4)調査当日:税理士が現地に訪問して立ち会います。
(5)調査後の対応:追加資料の提出、指摘事項の検討を行い、必要に応じて修正申告または期限後申告の提出までを一貫して進めます。申告内容に誤りがないと判断される場合には、修正申告等を行わずに調査が終了することもあります。
なお、税務署からの連絡が実地調査の事前通知ではなく「お尋ね」という文書のこともあります。性質によって対応が異なるため、「税務署から「お尋ね」が届いたら」もご覧ください。
6. 依頼先を選ぶ基準:「近さ」より「調査対応の経験」
遠方も含めて探せるとなると、選択肢は一気に広がります。選ぶ際の基準は次の3点です。
第一に、税務調査の対応経験です。調査立会いの件数や、加算税・質問応答記録書への対応方針を確認しましょう。調査する側の実務を知る国税OB税理士に相談するのも選択肢の一つです。国税OB税理士の強みと限界については「国税OB税理士の役割と税務調査」で率直に解説しています。
第二に、スポット対応の可否です。顧問契約がなくても調査対応だけを依頼できるか、顧問税理士がいる場合に立会いのみやセカンドオピニオンを引き受けているかを確認します。
第三に、遠方対応の体制です。オンラインでの打ち合わせ・資料共有の方法と、訪問立会いの範囲・交通費等の実費の扱いを、依頼前に確認しておくと安心です。
7. 費用の考え方
税務調査の対応費用は、事案の内容(対象年分の数、無申告の有無、資料の整理状況など)によって変わるため、一律ではありません。多くの事務所では、顧問契約に基づく対応と、調査対応だけのスポット契約が分かれています。初回相談を無料としている事務所もあるため、まず相談で事案の見立てと費用の目安を確認し、納得してから依頼するのが安全な進め方です。遠方の場合は、前述の交通費等の実費の扱いもこの段階で確認しておきましょう。
8. 無申告・急ぎの場合:早く動くほど選択肢が残る
無申告の期間がある方や申告誤りに気づいている方は、早く動くほど加算税の負担を抑えられる可能性があります。所得税について、実地調査を行う旨、対象税目および対象期間についての「調査通知」を受ける前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は原則として納付すべき税額の5%です。すでに調査通知や事前通知を受けた後でも、調査による更正または決定を予知する前に期限後申告や修正申告を行うことで、調査結果を待って更正・決定を受ける場合より、加算税が軽くなることがあります。
実地調査では、当初の対象期間として直近3年分が示されることがありますが、3年は法令上の上限ではありません。確認された事実や資料の内容によって対象期間が追加されることがあり、法律上、更正・決定ができる期間は原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。詳しくは「税務調査は何年分さかのぼる?」をご覧ください。どの段階にいるかによって取扱いが異なるため、「近くに税理士がいないから」と対応を先送りせず、オンラインで早めに専門家へ相談することをおすすめします。
よくある質問
Q1. 県外の税理士に、税務調査の立会いを依頼できますか?
依頼できます。税理士業務に都道府県単位の地域制限はなく、税務代理権限証書を提出すれば、事務所所在地に関係なく税理士が対応できます。当事務所も、調査立会いは全国どこでも訪問して対応しています(遠方への訪問には交通費等の実費を別途ご負担いただきます)。
Q2. オンラインだけで税務調査の対応は完結しますか?
初回相談、資料の確認、論点整理、調査後の対応方針の相談など、やり取りの大半はオンラインや電話で進められます。ただし、実地調査の当日は事業所や自宅で調査が行われるのが通常のため、立会いは税理士が現地へ訪問する形になります。
Q3. 地方に住んでいますが、税務調査は来るのでしょうか?
地域を問わず行われています。国税庁は資料情報の分析やAIを活用して調査先を選定しており、令和6事務年度の所得税の調査等は全国で73万6千件、簡易な接触は約68万9千件にのぼります。「地方だから来ない」という考えは実態に合いません。
Q4. 顧問税理士がいますが、調査だけ別の税理士に頼めますか?
可能です。調査対応に限って別の税理士へ立会いを依頼したり、セカンドオピニオンを求めたりすることはできます。当事務所でも、顧問税理士がいる方の調査立会いのみのご依頼に対応しています。
Q5. 依頼はいつまでに決めればよいですか?
税務署から最初の連絡を受けた段階、できれば調査日程を正式に決める前に依頼するのが理想です。日程調整から税理士に任せられ、準備の時間も確保できます。すでに事前通知を受けた後でも、調査開始前であれば税理士に依頼でき、合理的な理由がある場合には日程変更を協議できることがあります。調査が始まった後や、指摘を受けた後の段階でも、対応方針の立て直しは可能です。
Q6. 無申告ですが、相談してもよいのでしょうか?
もちろんです。無申告の場合こそ、早く動くほど選択肢が残ります。実地調査を行う旨、対象税目および対象期間についての「調査通知」を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は原則として納付すべき税額の5%です。収入の分かる資料(通帳・支払明細など)を集めたうえで、早めにご相談ください。
まとめ:「近くにいない」は依頼をあきらめる理由にならない
税理士への依頼に地域制限はなく、打ち合わせや資料のやり取りはオンラインで、調査当日の立会いは訪問で対応できます。遠方への訪問には交通費等の実費のご負担が生じますが、税務調査は経験の差が表れやすい分野です。事実関係を整理し、根拠をもって説明・主張できる態勢を作るうえで、「近さ」よりも「調査対応の経験」で依頼先を選ぶ価値は十分にあると考えています。
調査の連絡が来た方も、無申告に心当たりがある方も、地域を理由に一人で抱え込む必要はありません。オンラインの初回相談から、早めに一歩を踏み出してください。
税務調査の連絡が来た方、申告に不安がある方へ
市田税理士事務所は、元国税調査官(大阪国税局 資料調査課 出身)の税理士が運営する事務所です。調査官側の実務を踏まえて、事前準備から調査立会い、指摘事項への対応までサポートします。遠方への訪問には交通費等の実費を別途ご負担いただきます。ご依頼内容に応じて、当事務所で対応するほか、必要に応じて外部専門家との連携も検討し、状況に応じた適切な対応を提供します。
顧問契約・税務調査に関する初回相談は無料です。ただし、個別具体的な税務判断、セカンドオピニオン等はスポット相談として有料にて承ります。関西全域に加え、オンライン相談および全国への調査立会いに対応しています。
関西で税務調査の連絡が来てお困りの方は、対応の流れや料金をまとめた「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもあわせてご覧ください。
引用・参考文献
- 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
- 国税庁「H2-1 税務代理の権限の明示」(税務代理権限証書)
- 国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」
- 国税通則法第65条(過少申告加算税)、第66条(無申告加算税)、第70条(国税の更正、決定等の期間制限)、第74条の9(事前通知)、第74条の10(事前通知を要しない場合)
- 市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)
- 市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)
この記事を書いた人
市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。

