ギャラ飲みの収入に税務調査は来る?|無申告のリスクを元国税調査官が解説

著者:市田佳祐(元大阪国税局 国税OB税理士)

「ギャラ飲みのお金に税金がかかるとは思っていなかった」
「アプリからの振込が何年分も残っている。申告していないがどうなるのか」
「税務署から手紙が来た。何をすればいいのか分からない」

ギャラ飲みで収入を得ている方から、このようなご相談をいただくことがあります。飲み会に参加して謝礼を受け取るという手軽さから、「仕事」や「収入」という意識を持ちにくいのがギャラ飲みの特徴です。しかし税務上は、継続的に対価として受け取るお金は所得税の課税対象となる所得であり、申告していなければ無申告として調査・指摘の対象になります。実際、東京国税局がアプリ運営会社への調査を通じて登録女性らの申告漏れの把握を進めていると報じられ、大きな話題になりました。

この記事では、大阪国税局の資料調査課で調査事務に従事していた税理士が、ギャラ飲みの収入にかかる税金の整理、調査官が収入をどう把握するか、無申告のままだとどうなるか、今からできる正しい対応までを解説します。

結論:ギャラ飲みの報酬は課税対象。記録は運営会社と口座に残り、無申告は把握され得る

先に結論をお伝えします。ギャラ飲みの報酬は、飲み会への参加という役務の対価であり、原則として所得税の課税対象です。「もらったお小遣いだから贈与」という整理は、継続的・対価性のある収入には通用しません。そして、アプリ経由の報酬は運営会社側に支払記録が残り、振込であれば口座にも記録が残ります。運営会社への調査や反面調査を通じて、受け取った側の申告状況まで確認される流れは、実際の報道でも明らかになっています。無申告のまま調査を受けると、本来の税金に加えて無申告加算税や延滞税がかかりますが、税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば負担は軽くなります。過去の分が気になっている方は、放置せず早めに専門家へ相談することをおすすめします。

この記事でわかること

  • ギャラ飲みの報酬にかかる税金の整理(所得か贈与か・申告が必要になるライン)
  • 調査官がギャラ飲みの収入をどう把握するか(★内側視点)
  • 無申告のままだとどうなるか、今からできる正しい対応(期限後申告と加算税の軽減)

1. ギャラ飲みの収入に税金はかかるのか:贈与との違い

ギャラ飲みは、アプリやマッチングサービスを通じて飲み会に参加し、時間や参加に応じた謝礼(ギャラ)を受け取る活動です。この報酬は、飲み会に参加して場を盛り上げるという役務提供の対価であり、税務上は所得として扱われるのが原則です。金額の呼び名が「お礼」や「お小遣い」であっても、対価としての性質があれば結論は変わりません。

一方、対価性のない金銭やプレゼント、たとえば個人的な関係の中で一方的に受け取る贈り物は、贈与として整理される余地があります。ただし贈与であれば税金と無関係になるわけではなく、1年間に受けた贈与の合計が基礎控除額110万円を超えれば、贈与税の申告が必要です。「仕事の対価なら所得税、対価性のない受贈なら贈与税」という切り分けであり、どちらに整理してもゼロにはならない場面が多いことを押さえてください。実務では、アプリを通じて時間管理された報酬は対価性が明確なため、所得として扱われると考えておくのが安全です。

2. 調査官はギャラ飲みの収入をどう把握するか:元国税調査官の視点

「アプリのお金なんて税務署に分からないのでは」という感覚は、前提から誤っています。当局が収入を把握する経路は複数あります。

(1)運営会社側に残る支払記録

ギャラ飲みアプリの運営会社は、誰にいついくら支払ったかを自社の経理として記録しています。運営会社に税務調査が行われれば、その支払データから登録キャスト個々の受取額が把握され、それぞれの申告状況と突き合わせる形で無申告者の確認が進みます。令和4年2月には、報道により、東京国税局がギャラ飲みのマッチングサービス運営会社への税務調査を通じて、登録女性らの申告漏れの把握を進めているとされました。また、令和4年11月頃には、ギャラ飲みで多額の収入を得ていた女性に対し、加算税を含め1,000万円を超える追徴課税が行われた事例も報じられています。いずれも報道ベースの情報ですが、運営会社側の支払記録を端緒として個人の申告状況が確認され得ることを示す事例といえます。

(2)口座の入金記録と資金の使い方

アプリ経由の報酬は振込が中心のため、口座に入金記録が残ります。調査では通帳や口座の動きが基本資料になり、収入に見合わない高額な買い物やクレジットカードの利用状況から、申告されていない収入の存在が推測されることもあります。口座がどのように確認されるかは税務調査と通帳の記事で詳しく解説しています。

(3)現金手渡しでも「分からない」とは言えない

アプリを介さない直接の依頼や現金手渡しなら記録に残らない、と考える方もいますが、支払った側の記録(出金・経費計上・メッセージのやり取り)や、受け取った側のATM入金、生活費とのバランスといった周辺情報から推測されます。私が資料調査課(国税局で大口事案・悪質事案を担当する部署。通称「料調」)で調査事務に従事していた経験から言えば、支払側・運営側に残る記録から個人の収入を積み上げていく手法は調査の基本であり、「現金だから分からない」は実務では通用しませんでした。SNSでの活動状況や第三者からの情報提供が端緒になることもあります。

3. 何所得として申告するのか:雑所得・事業所得と経費

ギャラ飲みの報酬は、多くの場合、雑所得(業務に係るもの)として申告します。営利性・継続性の程度や帳簿の備付けなど、活動の実態によっては事業所得と整理される余地もありますが、副業的な規模であれば雑所得が基本です。所得金額は「収入金額から必要経費を差し引いた額」で計算します。

必要経費として認められ得るのは、会場までの交通費、業務連絡に使う通信費の業務部分、業務のためと明確に言える衣装代の一部などです。ただし、美容代や私的な飲食など、プライベートと区別がつかない支出は経費として認められにくく、ギャラ飲みは性質上、収入に比べて経費が小さくなりやすい活動です。経費の過大計上は調査での指摘の対象になり、架空の経費計上など仮装・隠蔽があると認定された場合には重加算税の対象にもなり得るため、領収書や記録に基づいた実額での計上が基本です。

4. 申告が必要になるライン:20万円ルールと基礎控除

会社員やアルバイトなど給与を1か所から受けて年末調整を受けている方は、給与・退職所得以外の所得(ギャラ飲みなら収入から経費を引いた額)が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1900)。注意したいのは、20万円以下で所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要になる点です。

他に収入のない学生や専業の方は、合計所得金額が基礎控除額以下であれば所得税の申告義務は生じないのが基本です。基礎控除は令和7年分以降、所得金額に応じて最大95万円に引き上げられています(令和7年度税制改正)。ただし、税金がかからない水準でも、扶養に入っている方は次章の所得要件に注意が必要です。金額の感覚として、週数回の稼働で年間100万円を超えるケースは珍しくなく、「お小遣い程度のつもりが申告ラインを大きく超えていた」という相談は少なくありません。

5. 無申告のままだとどうなるか:加算税とさかのぼり

国税庁は無申告への対応を重点課題として明示しています。国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、所得税の無申告者に対する実地調査では1件当たりの申告漏れ所得金額が2,992万円と、実地調査全体の1,486万円の約2倍にのぼり、追徴税額は総額252億円、1件当たり524万円です。調査対象の選定にはAIも活用されており、記録が残りやすいアプリ経由の収入は、突き合わせが行いやすい分野と言えます。

無申告のまま調査で指摘されると、本来の所得税に加えて無申告加算税(原則15%。納付税額のうち50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%)と延滞税がかかります。意図的に収入を隠したと認定されれば、より重い重加算税の対象です。また、調査は原則5年分、偽りその他不正の行為があるときは最長7年分さかのぼります。さかのぼりの考え方は税務調査は何年分さかのぼる?の記事で、無申告を放置した場合の全体像は確定申告をしないとどうなるかの記事で詳しく解説しています。

6. 収入だけではない影響:扶養・住民税・国民健康保険・消費税

ギャラ飲みの無申告は、所得税だけの問題では終わりません。第1に扶養です。親や配偶者の扶養に入っている方は、合計所得金額が48万円(令和7年分以降は58万円)を超えると扶養親族の所得要件を外れ、扶養している側の税負担が過去分も含めて増えることがあります。調査やその後の是正で本人の所得が確定すると、家族に影響が波及する構図です。第2に住民税と国民健康保険です。所得が確定すれば住民税が課され、国民健康保険に加入している方は保険料にも反映されます。第3に消費税です。ギャラ飲みの報酬は、反復継続して行われる役務提供の対価であれば、消費税上の課税売上に該当する可能性があります。消費税の納税義務は、原則として個人事業者の場合、基準期間である前々年の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかなどで判定されます。また、インボイス登録をしている場合には、基準期間の課税売上高にかかわらず納税義務が免除されません。

7. 税務署から連絡が来た場合の対応と、してはいけないこと

税務署から「お尋ね」の文書や調査の連絡が来た場合、まず、接触が実地調査なのか行政指導(お尋ね等)なのかを確認し、対象の年分と確認事項を把握してください。そのうえで、アプリの取引履歴、振込のあった口座の記録、経費の領収書を年分ごとに整理します。感覚で答えるのではなく、記録に基づいて説明できる状態を作ることが重要です。

してはいけないのは、収入の一部を隠して少なく説明することと、慌てて曖昧な説明で取り繕うことです。運営会社側の記録と突き合わせれば矛盾はすぐに表面化し、事実と異なる説明は重加算税の認定にもつながりかねません。調査での説明内容は質問応答記録書などの形で記録され、後の判断に影響することがあります。私が共著した『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)でも整理しましたが、記録内容が事実と乖離していないかの確認は調査対応の基本です。夜職・水商売系の調査で確認されやすいポイントは水商売・夜職の税務調査の記事もあわせてご覧ください。

8. 今からできる正しい対応:記録の整理と期限後申告

過去の無申告に心当たりがある方が今からできる最善の対応は、自主的な期限後申告です。税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に申告すれば、無申告加算税は5%に軽減されます(タックスアンサーNo.2024)。アプリの履歴と口座の入金記録から年分ごとの収入を集計し、経費の資料を整理すれば、過去分の申告は十分に可能です。副業の方が心配されがちな勤務先との関係も、住民税の納付方法の選択などにより対応を検討できる可能性があります(取扱いは自治体や状況により異なります)。あきらめて放置するのが最も不利な選択です。金額の整理や申告の進め方に迷う場合は、無申告の対応経験がある税理士に相談してください。

関連ページ:期限後申告の流れは、無申告・期限後申告のご相談(初回相談無料)にまとめています。

よくある質問

Q1. ギャラ飲みのお金は「お小遣い」なので、税金はかからないのではないですか?

A. 飲み会への参加という役務の対価として受け取るお金は、呼び名にかかわらず原則として所得税の課税対象です。対価性のない個人的な贈り物は贈与として整理される余地がありますが、その場合も年間合計110万円を超えれば贈与税の申告が必要です。どちらに整理しても、一定額を超えれば申告が必要になると考えてください。

Q2. アプリの収入が税務署に分かることは本当にあるのですか?

A. あります。運営会社には誰にいくら支払ったかの記録が残っており、運営会社への税務調査や反面調査を通じて、受け取った側の申告状況まで確認されることがあります。実際に、東京国税局が運営会社の調査を通じて登録女性の申告漏れの把握を進めたと報じられた事例があります。振込の場合は口座にも記録が残ります。

Q3. 会社員の副業でギャラ飲みをしています。いくらから申告が必要ですか?

A. 給与を1か所から受けて年末調整を受けている方は、ギャラ飲みの所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は別途必要です。申告する場合、住民税の納付方法の選択などにより勤務先との関係に配慮した対応を検討できる可能性があります(取扱いは自治体や状況により異なります)。

Q4. 現金手渡しなら記録に残らないので、把握されないのではないですか?

A. 手渡しでも、支払った側の記録やメッセージのやり取り、ATMへの入金、収入に見合わない支出とのバランスといった周辺情報から推測されることがあります。SNSでの活動状況や第三者からの情報提供が端緒になることもあり、「現金だから分からない」という前提で判断するのは危険です。

Q5. 何年も申告していません。今からでも間に合いますか?

A. 間に合います。税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は5%に軽減され、調査で指摘された場合(原則15%、高額部分は最大30%)より負担が大きく軽くなります。アプリの履歴と口座の記録から過去分の収入を集計することは十分に可能です。放置期間が長いほど延滞税も増えるため、早めの対応をおすすめします。

Q6. 親の扶養に入っている学生です。ギャラ飲みの収入で何か影響はありますか?

A. あります。合計所得金額が扶養親族の所得要件(令和7年分以降は58万円)を超えると、親が扶養控除を受けられなくなり、親の税負担が増えます。過去にさかのぼって是正されると、その分の影響も過去に及びます。ご自身の税金がかからない水準でも、扶養への影響は別に生じる点に注意してください。

まとめ:ギャラ飲みの収入は「記録に残る所得」。放置が最も不利になる

ギャラ飲みの報酬は役務の対価としての所得であり、運営会社と口座に記録が残る以上、「分からないだろう」という前提は成り立ちません。無申告のまま調査を受ければ、加算税と延滞税を含めた負担に加え、扶養や住民税・保険料への波及も生じます。一方で、調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば加算税は大きく軽減されます。過去の分に心当たりがある方は、アプリの履歴と口座の記録を手元に集めることから始めてください。

整理の仕方や何年分を申告すべきかの判断に迷う場合は、無申告や調査対応の経験がある税理士に早めにご相談ください。

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引用・参考文献

  • 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
  • 国税庁タックスアンサーNo.1900(給与所得者で確定申告が必要な人)
  • 国税庁タックスアンサーNo.4402(贈与税がかかる場合・基礎控除110万円)
  • 国税庁タックスアンサーNo.1500(雑所得)、No.2024(確定申告を忘れたとき)、No.6125(国内取引の納税義務者)
  • 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」(基礎控除・扶養親族等の所得要件の改正)
  • 国税通則法第66条(無申告加算税)、第68条(重加算税)、第70条(更正・決定の期間制限)
  • 報道各社によるギャラ飲みアプリ運営会社への税務調査・追徴課税に関する報道
  • 市田佳祐ほか『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)

この記事を書いた人

市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。