反面調査とは?|元国税調査官がどんなときに行われるか・拒否できるかを解説


著者:市田佳祐(税理士・国税OB)

「取引先の税務調査に関連して、うちにも税務署から確認の連絡が来た。どう対応すればいいのか」
「自分の税務調査で『取引先に確認します』と言われた。取引先に迷惑がかかるのではと不安だ」
「反面調査は拒否できるのか、応じる義務があるのか知りたい」

反面調査とは、税務調査の対象となっている納税者本人ではなく、その取引先や銀行など「本人以外」に対して行われる確認の調査です。自分が調査対象でないのに税務署から連絡が来る側にとっても、自分の調査が取引先に及ぶと告げられた側にとっても、不安の大きい場面です。

最初に押さえていただきたいのは、反面調査は法律に基づく正当な調査手続であり、受ける側には協力が求められる一方で、調査官も無条件・無差別に行うものではないということです。この記事では、調査する側だった元国税調査官(国税OB)の立場から、反面調査がどんなときに行われるのか、何を確認されるのか、そして「受ける側」「自分の調査で取引先に及ぶ側」それぞれの正しい対応を解説します。

この記事でわかること

  • 反面調査とは何か(法的根拠と対象)
  • どんなときに反面調査が行われるのか(調査官側の判断)
  • 反面調査を受ける側になったときの正しい対応
  • 自分の調査で「取引先に確認する」と言われたときにできること

1. 反面調査とは——取引先・銀行など「本人以外」への調査

税務署の質問検査権は、調査対象の納税者本人だけでなく、その納税者と取引があると認められる者などにも及びます(国税通則法74条の2から74条の6までの各規定)。これに基づいて、調査対象者の取引先・仕入先・外注先・銀行などに対して行われる確認の調査を、実務上「反面調査」と呼びます。

典型的な相手先は、次のとおりです。

  • 売上先・得意先:本当にその取引・入金があったのか
  • 仕入先・外注先:請求書どおりの取引が実在するのか
  • 銀行などの金融機関:口座の有無・入出金の内容(銀行への照会も反面調査の一種です)

金融機関への照会については、次の記事で詳しく解説しています。

(関連記事:税務調査で通帳はどこまで見られる?|元国税調査官が個人口座・家族口座の扱いを解説)

なお、納税者本人への実地調査には原則として事前通知(調査の事前通知)が行われますが、取引先等への反面調査には、この事前通知の規定は適用されません。実務上は、訪問や文書・電話などの方法で、確認したい事項が伝えられます。


2. どんなときに反面調査が行われるのか——内側の視点

「調査になったら、必ず取引先に行かれるのか」とよく聞かれますが、そうではありません。調査する側にいた立場から、反面調査に至る典型的な流れをお伝えします。

(1) 本人の帳簿・説明だけでは確認しきれないとき

反面調査が行われるのは、主に本人調査だけでは事実の確認ができない場合です。たとえば、次のようなケースです。

  • 帳簿や領収書・請求書が保存されておらず、取引の実態を本人資料で確認できない
  • 本人の説明と資料の内容が食い違っており、どちらが事実か判断できない
  • 外注費や仕入が架空ではないかという疑いがあり、相手方の実在・取引の実在を確認する必要がある
  • 売上の計上漏れが疑われ、売上先側の支払記録と突き合わせる必要がある

(2) 調査官も、無条件にはやらない

一方で、調査官の側も、反面調査を軽々しく行うわけではありません。古くからの税務運営方針でも、反面調査は客観的に見てやむを得ないと認められる場合に行うこととされており、取引先に確認へ行くことが納税者の取引関係や信用に影響し得ることは、当局側も認識しています。

実務の感覚で言えば、本人の帳簿が整っていて、説明と資料が噛み合っていれば、反面調査の必要性は下がります。逆に、資料が出てこない・説明が変遷する・不自然な取引があるという状況では、「相手方に確認するしかない」という判断に傾きます。つまり、反面調査が行われるかどうかは、かなりの部分、本人調査での対応の質にかかっているのです。

なお、税務署には法定調書や取引に関する資料情報が日常的に集まっているため、調査官が相手方に出向かなくても、すでに手元の資料で取引の裏が取れていることもあります。「反面調査をされていないから、突き合わせされていない」とは限らない——この点も、誠実な申告・説明が最善である理由の一つです。


3. 反面調査では何を確認されるのか

反面調査で確認されるのは、調査対象者との取引の事実関係です。具体的には、次のような事項です。

  • 取引の有無・期間・内容(何を・いつ・どれだけ)
  • 請求書・領収書・契約書などの突合(双方の控えが一致するか)
  • 支払・入金の方法と金額(振込か現金か、いくらか)
  • 単価や数量の妥当性(水増し・架空の有無)

要するに、調査対象者側の帳簿・申告と、相手方の記録が一致するかの突き合わせです。一致すれば確認は終わり、食い違えば、その原因がどちらにあるのかが調べられていきます。


4. 【立場別】正しい対応

(1) 自分が「反面調査を受ける側」になったとき

取引先の調査に関連して、税務署から確認の連絡(訪問・文書・電話)が来た場合の対応です。

  • 協力する:反面調査にも質問検査権の効力が及び、正当な理由なく答弁を拒んだり、虚偽の答弁をしたり、帳簿書類の提示を拒んだりすると、罰則の対象になり得ます。誠実に対応するのが原則です。
  • 事実をそのまま答える:確認されるのは事実関係です。取引先をかばって事実と異なる説明をすることは、自分自身が虚偽答弁の問題を抱えることになります。記録に基づいて、事実をそのまま答えてください。
  • 分からないことは確認してから:記憶や手元資料で即答できないことは、「確認してお答えします」で構いません。推測で答える方が、後の食い違いを生みます。

確認は、訪問だけでなく、文書(照会文書)で行われることもあります。文書で回答する場合は、回答期限を確認し、手元の帳簿・資料と突き合わせた正確な内容を、期限内に返送してください。記憶だけで埋めず、必ず記録に基づいて記載することが大切です。回答内容に迷う項目があれば、提出前に税理士へ確認を依頼するのも有効です。

なお、反面調査を受けたことをきっかけに、自分の側の処理に誤りが見つかることもあります。たとえば、相手方への支払を外注費として処理していたが実態は給与だった、というような場合です。確認への対応の中で自分の申告に不安を感じたら、その時点で税理士に相談することをお勧めします。

(2) 自分の調査で「取引先に確認する」と言われたとき

逆に、自分が調査を受けている側で、調査官から取引先への確認を示唆された場合です。取引先への信用を考えると、できる限り避けたい事態です。できることは、次の2つです。

第一に、本人調査の中で確認を完結させる努力をすることです。前述のとおり、反面調査は「本人資料で確認できないとき」に行われます。求められた資料を誠実に提示し、取引の経緯を具体的に説明し、足りない資料は再発行を取り寄せる——本人側で事実を裏づけられれば、相手方に確認へ行く必要性は下がります。

第二に、説明の一貫性を保つことです。調査官への説明は記録され、重要な事項は質問応答記録書という書面にまとめられることがあります。私自身、共著『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)で整理しましたが、説明が二転三転すると、「本人の説明だけでは判断できない」として、かえって反面調査の必要性を高めてしまいます。曖昧なことは推測で答えず、確認してから正確に答える姿勢が、結果的に反面調査を遠ざけます。

(関連記事:税務調査では何を聞かれる?|元国税調査官が質問の意図と答え方を解説)


5. 反面調査と信用問題——取引先にどう向き合うか

「取引先に調査が行ったら、自分が脱税を疑われていると思われるのではないか」——この不安は自然なものです。実際のところを整理します。

まず、調査官は取引先に対して、調査の理由や対象者の詳細な事情を語りません(守秘義務があります)。確認されるのは取引の事実関係であって、「あの会社は脱税している」といった説明がされるわけではありません。取引先側も、税務調査への協力は商売上珍しいことではないと理解している場合が多いものです。

その上で、取引関係への配慮として、状況によっては、自分から取引先に「税務調査を受けており、確認の連絡が行くかもしれない。お手数をおかけします」と一言伝えておくという選択もあります。伝えるべきかどうかはケースバイケースなので、立会いの税理士と相談して決めるとよいでしょう。

ただし、その場合でも、回答内容のすり合わせを求めたり、資料の修正・作成を依頼したりすることは絶対に避けてください。あくまで、税務署から事実確認の連絡が行く可能性があることを伝えるにとどめ、取引先には記録に基づいて事実をそのまま回答してもらう必要があります。口裏合わせや資料の改ざんは、隠蔽・仮装として重加算税の問題に発展し得るだけでなく、取引先まで巻き込む最悪の対応です。

(関連記事:税務調査に税理士の立会いは必要?|元国税調査官が頼むべきケースと費用の考え方を解説)


6. よくある質問

Q1. 反面調査を拒否できますか?

反面調査にも質問検査権の効力が及ぶため、正当な理由なく拒否することはできません。答弁の拒否や虚偽の答弁、帳簿書類の提示・提出の拒否には、罰則の定めもあります。日程の都合が悪い場合に調整を申し出ることは可能ですので、拒否ではなく調整で対応してください。

Q2. 反面調査の前に、事前の連絡は来ますか?

取引先等への反面調査には、納税者本人への調査のような事前通知の規定は適用されません。実務上は、文書や電話で確認事項が伝えられることも、訪問により行われることもあります。突然の連絡であっても、慌てずに、相手の所属・氏名を確認した上で対応してください。

Q3. 取引先に「自分の調査が入っている」と知られてしまいますか?

反面調査は調査対象者との取引の確認ですから、相手方には「あなたとの取引について確認したい」という形で調査対象者が分かることは避けられません。ただし、調査の理由や内容の詳細が説明されるわけではありません。信用面が気になる場合は、前述のとおり、自分から先に一言伝えておくという対応も選択肢になります。

Q4. 銀行への照会も反面調査と同じですか?

はい、金融機関への照会も、取引先等への調査(反面調査)の一種です。口座の有無や入出金の内容が確認され、これに納税者本人の同意は必要ありません。詳しくは通帳に関する記事で解説しています。

Q5. 反面調査で食い違いが見つかると、どうなりますか?

調査対象者側の申告・帳簿と相手方の記録に食い違いがあれば、その原因が調べられます。調査対象者側の計上漏れや架空計上が裏づけられれば、修正申告の勧奨や更正処分につながります。また、反面調査を受けた側の処理に誤りが見つかった場合、その内容によっては、受けた側への確認や調査に発展することもあります。

Q6. 反面調査を受けたということは、次は自分にも調査が来るのでしょうか?

必ずしもそうではありません。反面調査の目的は、あくまで調査対象者(取引相手)の申告内容の確認であり、協力を求められたこと自体は、あなたが疑われていることを意味しません。ただし、確認への対応の中で自分の側の処理の誤りに気づいた場合は、放置せず、税理士に相談して自主的な見直しを検討することをお勧めします。


7. まとめ——反面調査を遠ざける最善策は、本人調査での誠実な対応

反面調査は、取引先や銀行など本人以外に対して行われる、法律に基づく確認の調査です。受ける側には協力が求められ、正当な理由のない拒否はできません。一方で、調査官も無条件に行うものではなく、本人の帳簿と説明で事実が確認できれば、反面調査の必要性は下がります

つまり、取引先に調査を及ぼさないための最善策は、日頃から帳簿と資料を整え、調査では誠実かつ一貫した説明をすることです。そして、説明に不安がある、取引先への影響が心配だ、という場合は、税務調査の経験が豊富な税理士に早めに相談してください。


反面調査・税務調査の対応でお困りの方へ

以下のような状況の方は、できるだけ早くご相談ください。

  • 取引先の調査に関連して、税務署から確認の連絡が来た
  • 確認への対応の中で、自分の申告にも不安が出てきた
  • 自分の調査で「取引先に確認する」と言われ、信用への影響が心配だ
  • 帳簿や資料が揃っておらず、本人調査で説明しきれるか不安だ
  • 調査当日の立会いを税理士に依頼したい

国税OB(元大阪国税局)の税理士が、反面調査への対応、本人調査での説明の組み立て、調査当日の立会いについて、当局側の視点も踏まえてサポートします。

顧問税理士がいる方の調査立会いのみのご依頼も可能です。ご依頼内容に応じて、当事務所での対応または提携する国税OB税理士のネットワークを活用し、状況に応じた適切な対応を提供します。

顧問契約・税務調査に関する初回相談は無料です。ただし、個別具体的な税務判断、セカンドオピニオン等はスポット相談として有料にて承ります。関西全域・オンラインで全国対応。

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引用・参考文献
・国税通則法74条の2〜74条の6(質問検査権)、74条の9(事前通知)、128条(罰則)
・国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
・国税庁「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」
・市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)
・市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)

著者:市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。元大阪国税局・資料調査課勤務。資料調査課では国際課税や富裕層に対する調査事務に従事。税務調査対応・立会い、無申告対応、重加算税、国際課税など、税務調査リスクの高い分野を中心に税務サポートを提供。共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。