暗号資産の確定申告と税務調査|元国税調査官がCARF導入後のリスクを解説
著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)
「暗号資産(仮想通貨)で利益が出たが、確定申告をしていない」
「海外の取引所を使っているから、税務署には把握されないのではないか」
「税務調査の連絡が来たら、何から手を付ければよいのか」
暗号資産の値上がりで利益を得た方が増える一方、確定申告が追いついていないケースが目立ちます。国税庁は暗号資産取引を重点的な調査分野と位置づけており、調査件数・追徴税額はいずれも増加しています。
結論:暗号資産の申告漏れは把握の網が広がっている。事前通知前の申告が最大の備え
先に結論をお伝えします。暗号資産取引は、国内取引所からの法定調書・資料情報、銀行口座の入出金、そして令和9年以後に始まるCARF(暗号資産等報告枠組み)による国際的な情報交換によって、把握の網が急速に広がっています。「海外取引所なら見えない」という前提は、通用しにくくなっています。
そして、暗号資産の申告漏れは1件当たりの金額が大きく、当局が効率よく追徴できる分野です。過去の申告に漏れの心当たりがある場合は、税務調査の事前通知を受ける前の自主的な期限後申告・修正申告により、加算税の負担を抑えられる可能性があります。
この記事では、調査する側だった元国税調査官(国税OB)の立場から、最新の調査状況、調査官が重点的に確認するポイント、税務署が取引を把握する経路、無申告のリスクと正しい備えを解説します。
この記事でわかること
- 暗号資産の税務調査の最新状況(件数・追徴税額・1件当たりの水準)
- 調査官が暗号資産取引で重点的に確認するポイント(内側の視点)
- 税務署が取引を把握する経路と、CARF導入後に何が変わるか
- 暗号資産の課税ルールと、暗号資産同士の交換で損益が実現する考え方
- 無申告のリスク(無申告加算税・重加算税)と、事前通知前の対応
1. 暗号資産の税務調査は件数・追徴税額とも増えている
国税庁が令和7年12月に公表した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、暗号資産(仮想通貨)等取引の実地調査件数は613件(対前年比114.6%)、追徴税額は46億円(対前年比131.4%)と、いずれも増加しています。
私が『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に執筆した論稿でも分析したとおり、1件当たりの追徴税額は745万円と高水準にあります。シェアリングエコノミー等取引の1件当たり305万円と比較して約2.4倍であり、当局が金額の大きい事案に絞り込んで調査を実施していることがうかがえます。
なお、これらの数値は調査対象として選定された事案の実績であり、暗号資産取引者全体の調査率や申告漏れの割合を示すものではありません。ただ、選定されれば大きな追徴につながりやすい分野であることは、数字が示すとおりです。
さらに、国税システムの更改(KSK2)が進む中で、当局による各種調書・資料情報の活用と分析は今後も高度化していく方向にあると考えられます。暗号資産のようにデータで取引が完結する分野は、その影響を受けやすい領域です。
2. 調査官が暗号資産取引で重点的に確認するポイント:内側の視点
私は大阪国税局で国際課税・富裕層に対する調査事務に従事してきました。その経験から、調査官が暗号資産の調査で実際に何を確認するかを整理します。
(1) 取引履歴と申告額の照合
国内取引所から入手した取引履歴と、申告した所得金額を照合します。申告そのものがない場合や、一部の取引所の損益が漏れている場合は、その差額が申告漏れ所得として指摘されます。
申告している場合でも、取得価額の計算方法の誤り(総平均法と移動平均法の混在、年またぎの残高の引き継ぎ漏れなど)や、手数料・必要経費の扱いの誤りが確認されることがあります。計算の根拠資料を求められたときに提示できるかどうかも、見られるポイントです。
(2) 銀行口座への入金の確認
暗号資産を売却して現金化すれば、銀行口座に入金記録が残ります。調査官は、税務調査上必要がある場合には納税者の銀行口座の動きを確認し、申告額と入金額の整合を確かめます。取引所からの入金が申告額に比べて大きい場合は、その差の説明を求められることになります。
(3) 複数の取引所・ウォレットの横断的な確認
一つの取引所だけを確認するのではなく、複数の取引所やウォレット間の資金移動を追跡します。暗号資産の多くはブロックチェーン上に取引記録が公開されており、ウォレットアドレスが特定されれば、過去の移動をさかのぼって確認することも技術的に可能です。取引所をまたいだ移動があっても、資金の流れをたどれば全体像は再構成され得ます。
(4) DeFi・NFT・ステーキングの確認
近年はDeFi(分散型金融)やNFT、ステーキング報酬も確認の対象です。「DeFiは申告不要」という誤解が見られますが、DeFiやNFTについても、取引の内容に応じて課税関係が生じます。特にステーキングやレンディングにより暗号資産を取得した場合は、取得した時点の時価で収入計上するのが基本的な考え方であり、売却していなくても申告の対象になり得る点に注意が必要です。
3. 税務署はどこから暗号資産取引を把握するのか
「取引所を通じていない」「海外の取引所を使っている」から大丈夫、と考える方がいらっしゃいます。しかし、税務署は次のような複数の経路から情報を集めています。
(1) 国内取引所からの法定調書・資料情報
国内の暗号資産交換業者からは、暗号資産デリバティブ取引等について支払調書が税務署に提出されます。また、当局は現物取引についても、資料情報として取引データを収集することがあります。国内取引所を利用した取引は、把握され得る前提で考えておくべきです。
なお、実地調査に先立って、税務署から「お尋ね」の文書で申告状況の確認を求められることもあります。放置すると調査に発展し得るため、届いた段階での対応が重要です。
(関連記事:税務署から「お尋ね」が届いたら|元国税調査官が無視のリスクと対応を解説)
(2) 銀行口座・国外送金等調書
取引所と銀行口座の間の入出金は記録に残ります。また、金融機関は100万円を超える国外への送金・国外からの受金について、税務署長に調書を提出します。海外取引所と資金をやり取りすれば、その動きは把握の手がかりになります。国内の銀行口座を経由する限り、入口と出口の記録は残ると考えておくべきです。
(3) CARF(暗号資産等報告枠組み):海外取引所等を通じた一定の取引情報も自動交換へ
税務調査の視点から特に重要なのが、CARF(Crypto-Asset Reporting Framework)です。CARFにより、令和9年以後、暗号資産等の取引情報が各国の税務当局間で自動的に交換される仕組みが始まります。日本の居住者がCARF参加国・地域の対象事業者(海外取引所等)を利用している場合、氏名・居住地国・暗号資産の種類・取引に係る対価の総額といった一定の取引情報が、相手国の税務当局を通じて日本の国税当局に提供され得ることになります。
参考になるのがCRS(共通報告基準)の前例です。国税庁は、CRSの初回情報交換後、取得した情報を海外投資等を行う個人の調査に活用していることを明示しています。CARFについても同様に、交換された情報が調査選定や申告内容との照合に活用されることが想定されます。
調査側の視点で言えば、これまで照合の難しかった海外取引所を通じた取引の情報が、申告内容と突き合わせられるデータとして届くようになる、ということです。「申告していない海外分」がある方にとって、環境は着実に変わりつつあります。
(4) 国外財産調書・財産債務調書の扱い
なお、国外の暗号資産取引所に保有する暗号資産であっても、日本の居住者については国外財産調書の対象にはなりません。暗号資産の所在は保有者の住所で判定されるためです。ただし、財産債務調書の提出義務がある方は、その記載対象となります。調書の対象外であることと、課税・調査の対象外であることは別問題ですので、混同しないよう注意してください。
4. 暗号資産の課税ルール:交換でも損益は実現する
(1) 原則は雑所得・総合課税
暗号資産取引による利益は、原則として雑所得(総合課税)として申告します。ただし、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合には、帳簿書類の保存状況等によって事業所得または業務に係る雑所得となる場合があります(300万円は利益ではなく収入金額で判定します)。雑所得の場合、給与所得などほかの所得と合算し、累進税率で課税されます。給与所得者で給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば所得税の確定申告が不要となる場合がありますが、その場合でも住民税の申告は原則として必要です。
損益計算の基礎となる暗号資産の取得価額は、個人の場合、原則として総平均法により計算します(移動平均法を選ぶ場合は、評価方法の届出が必要です)。複数の取引所で同じ銘柄を売買している場合は、銘柄ごとに全体を通して計算する必要があり、取引所ごとの年間取引報告書だけでは正しい損益にならないことがある点に注意してください。
なお、令和8年度税制改正では、一定の「特定暗号資産」について申告分離課税等への見直しが法制化されています。適用開始は改正金融商品取引法の施行時期と連動するため、適用開始後は課税方式や通算関係が変わります。現時点の申告は現行ルールによります。
(2) 売却だけでなく交換・決済でも損益が実現する
損益が実現するのは、暗号資産を円に換えたときだけではありません。暗号資産で別の暗号資産を購入(交換)したとき、暗号資産で商品やサービスの代金を支払ったときにも、その時点の時価で損益を認識する必要があります。「円に戻していないから利益は出ていない」という理解は、暗号資産でも誤りです。
たとえば、100万円で取得した暗号資産を、時価300万円のときに別の暗号資産との交換に充てた場合、円を一度も受け取っていなくても、交換の時点で200万円の所得を認識することになります。交換を繰り返している方は、そのたびに損益が積み上がっている可能性があります。
資産の交換時点で損益が実現するという考え方は、外貨の為替差益でも争点になり、令和8年6月には外貨間交換等への課税を適法とする最高裁の初判断が示されています。次の記事で解説しています。
(関連記事:為替差益の確定申告と税務調査|元国税調査官がFX・外貨預金と最高裁初判断を解説)
(3) 損失の扱い
暗号資産の損失は、総合課税の雑所得の範囲内であれば他の雑所得との内部通算が可能ですが、給与所得や株式の譲渡益と相殺することはできません。また、現行ルールでは損失の繰越控除の制度もありません。
5. 無申告のリスク:加算税と重加算税
(1) 無申告加算税は3段階
期限内に申告しなかった場合の無申告加算税は、申告の時期により3段階に分かれます(令和5年分以後)。税務調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば5%、事前通知を受けてから調査による決定を予知する前までは10%(納付税額のうち50万円超300万円以下の部分は15%、300万円超の部分は25%)、決定を予知した後は15%(同20%、30%)です。早く動くほど、負担は軽くなります。
このほか、納付が遅れた期間に応じた延滞税もかかります。無申告の期間が長いほど、本税に加えた負担は膨らんでいきます。無申告の場合、原則として法定申告期限から5年間は課税の対象となり得ます。偽りその他不正の行為がある場合には、7年間までさかのぼって課税されることがあります。
(関連記事:税務調査は何年分さかのぼる?|元国税調査官が3年・5年・7年の違いと決まり方を解説)
(2) 隠蔽・仮装があれば重加算税の対象となる
うっかりの申告漏れと、隠蔽・仮装を伴う申告漏れとでは、扱いが大きく異なります。単に申告漏れを認識していたというだけで、直ちに重加算税が課されるわけではありません。取引記録を隠す、虚偽の資料を作成するなど、課税の基礎となる事実について隠蔽・仮装があったと認定された場合には、通常の加算税よりも重い重加算税が課されます。
隠蔽・仮装の有無が争点になる場面では、調査の過程で質問応答記録書(調査官が納税者への質問とその回答を記録する書面)が作成されることがあります。署名を求められた場合の対応には注意点が多く、詳しくは共著『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)で解説しています。
(関連記事:税務調査で「重加算税になる」と言われたら|判断基準と対応を解説)
6. 税務調査の連絡が来たらどうすべきか
暗号資産取引に関する税務調査の連絡が来た場合、まず担当部署を確認してください。税務署の一般調査か、国税局からの調査かによって、事案の規模感や対応の力点が変わります。国税局の担当部署が関与する事案は、海外取引や多額の申告漏れが想定されているケースが多いと考えられます。
事前通知を受けた後でも、調査による決定を予知する前に期限後申告をすれば、無申告加算税は10%(一部15%・25%)にとどまり、決定を予知した後よりは軽くなります。連絡が来てからでも、動く価値はあります。
調査当日までには、利用したすべての取引所の取引履歴・年間取引報告書、ウォレットの一覧、損益計算の根拠資料を整理しておきます。把握している取引を自分から整理して示せるかどうかで、調査の進み方は変わります。
いずれの場合も、初動対応が最終的な結果に影響します。取引履歴の整理には時間がかかるため、連絡が来た時点で早めに税理士に相談することをお勧めします。調査がどのように選ばれるかは、次の記事で解説しています。
(関連記事:税務調査が来る確率は?どんな人に来るのか|元国税調査官が選ばれる基準を解説)
7. 今からできる備え
暗号資産取引で利益が出ている方が今すぐ取り組むべきことは、次の3つです。
- 過去の取引履歴を整理する:各取引所から取引履歴・年間取引報告書をダウンロードし、銘柄ごと・年ごとの損益を計算する。ウォレット間の移動、DeFi・NFT・ステーキングの記録も対象に含める。取引が多い場合は損益計算ツールの活用も検討する。
- 無申告の場合は自主的に申告する:税務調査の事前通知を受ける前の期限後申告であれば、無申告加算税は5%に抑えられます。複数年分の再集計が必要なケースが多いため、早めに着手する。
- 専門家に相談する:海外取引所・複数ウォレット・DeFi・NFTの取引がある場合は損益計算が複雑になりやすく、早めに税理士へ相談する。
今後の取引についても、交換・決済のたびに日時・数量・時価がわかる記録を残しておけば、翌年の申告も調査への備えも格段に楽になります。
暗号資産の調査に関するご質問は、次のページでもお答えしています。
(関連ページ:よくあるご質問(暗号資産の調査を含む))
8. よくある質問
Q1. 暗号資産(仮想通貨)の利益を申告しないと、税務署に把握されますか?
把握される可能性は高まっています。国税庁は暗号資産取引を重点的な調査分野としており、国内取引所からの法定調書・資料情報、金融機関の入出金などから取引実態を把握することがあります。また、CARF(暗号資産等報告枠組み)により、令和9年以後、海外取引所等を通じた一定の暗号資産取引情報が各国税務当局間で自動交換される仕組みも始まります。「海外取引所を使えば大丈夫」という認識は通用しにくくなっています。
Q2. 暗号資産の税務調査では、どのような点が問題になりますか?
申告漏れとして多いのは、取引所ごとの損益計算の誤り、DeFi・NFT・ステーキング収益の申告漏れ、海外取引所の取引、過年度分の未申告などです。国税庁の公表データでは、暗号資産取引の1件当たり追徴税額は745万円(令和6事務年度)と高水準で、当局が重点的に調査する分野です。
Q3. 過去に申告していなかった場合、今からでも対応できますか?
対応できます。税務調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は5%に軽減されます。ただし、複数年にわたる損益の再集計が必要になるケースが多いため、早めに税理士に相談して進めることをおすすめします。
Q4. 暗号資産の利益は、何所得として申告しますか?
原則として雑所得(総合課税)として申告します。その年の取引に係る収入金額が300万円を超える場合には、帳簿書類の保存状況等により事業所得または業務に係る雑所得となる場合があります。なお、令和8年度税制改正で一定の「特定暗号資産」について申告分離課税等への見直しが法制化されており、適用開始後は課税方式が変わります。現時点の申告は現行ルールによります。
Q5. 暗号資産同士の交換や、暗号資産での買い物でも課税されますか?
課税対象になり得ます。暗号資産で別の暗号資産を購入(交換)したときや、商品・サービスの代金を暗号資産で支払ったときにも、その時点の時価で損益を認識します。円に換金していなくても損益は実現するため、交換や決済のたびに記録を残しておくことが重要です。
Q6. 暗号資産の損失は、給与や株式の利益と相殺できますか?
できません。暗号資産の損失は、総合課税の雑所得の範囲内でのみ内部通算が可能で、給与所得や株式の譲渡益・配当とは相殺できず、現行ルールでは翌年以降への繰越控除もありません。なお、「特定暗号資産」に係る見直しの適用開始後は、通算・繰越の扱いが変わります。
まとめ:把握の網が広がる前提で、事前通知前に動く
暗号資産取引への税務調査は件数・追徴税額ともに増加しており、1件当たりの追徴税額は745万円と高水準です。国内取引所の法定調書・資料情報、銀行口座の入出金に加え、令和9年以後はCARFにより海外取引所等を通じた一定の取引情報も自動交換される仕組みが始まります。把握の網は、広がる前提で考えておくべきです。
そして、損益は円への換金時だけでなく、暗号資産同士の交換や決済の時点でも実現します。無申告のまま調査を受ければ、加算税・延滞税を含めた負担は年々重くなり、原則5年間(偽りその他不正の行為があれば7年間)さかのぼって課税されることがあります。取引履歴の整理と適正な申告、そして無申告に心当たりがある場合の事前通知前の自主的な申告が、最大のリスク対策です。
「損益計算が追いつかない」「過去の分をどう申告すればよいかわからない」という方は、できるだけ早い段階でご相談ください。
暗号資産に限らず、大阪で税務調査の連絡が来てお困りの方は、対応の流れや料金をまとめた「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもあわせてご覧ください。
引用・参考文献
- 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
- 国税庁タックスアンサー No.1524「ビットコインをはじめとする暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係」ほか、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」
- 国税通則法66条(無申告加算税)・68条(重加算税)
- 令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月閣議決定)暗号資産税制関係
- CARF(暗号資産等報告枠組み)に係る報告制度・自動的情報交換、国外送金等調書法(国外送金等調書・国外財産調書制度)
- 市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)
- 市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)

