暗号資産(仮想通貨)の税務調査——CARF導入後のリスクを元国税調査官が解説——

暗号資産(仮想通貨)で利益が出た。でも確定申告はしていない——。

そのような方に、元国税調査官として伝えなければならないことがあります。国税庁は今、暗号資産取引への税務調査を急速に強化しています。

1. 暗号資産の税務調査は今どうなっているか

国税庁が令和7年12月に公表した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、暗号資産(仮想通貨)等取引の実地調査件数は613件(対前年比114.6%)、追徴税額は46億円(対前年比131.4%)といずれも増加しています。

私が税務弘報2026年3月号(中央経済社)に執筆した論稿でも分析したとおり、1件当たりの追徴税額は745万円と高水準にあり、当局が効率性の高い事案に絞り込んで調査を実施していることがわかります。

特に注目すべきは、シェアリングエコノミー等取引の1件当たり追徴税額305万円と比較して、暗号資産取引はその約2.4倍に達している点です。これは暗号資産取引の申告漏れが、他の分野と比べて規模が大きい傾向にあることを示しています。

2. なぜ国税庁は暗号資産取引を把握できるのか

「取引所を通じていない」「海外の取引所を使っている」から大丈夫、と思っていませんか。

国税庁が暗号資産取引を把握できる理由は2つあります。

(1)国内取引所からの支払調書

国内の暗号資産取引所は、一定金額以上の取引について支払調書を税務署に提出しています。取引所に登録した時点で、取引情報は国税庁に把握されていると考えてください。

(2)CARF(暗号資産報告枠組み)の導入

令和8年度税制改正大綱により、暗号資産の課税方式の変更も注目されていますが、税務調査の視点からより重要なのがCARF(Crypto-Asset Reporting Framework)です。

CARFが導入されると、海外取引所における暗号資産の保有状況や取引情報が、国税当局に自動的に提供されることになります。かつてCRS(共通報告基準)導入時に調査件数が1.5倍に急増した例(平成28事務年度:3,145件→平成29事務年度:4,616件)を踏まえれば、CARF導入後も税務調査が一気に増加することは容易に想定されます。

3. 調査官が暗号資産取引で着目するポイント

資料調査課での経験を踏まえ、調査官が実際に何を見ているかをお伝えします。

①取引履歴と申告額の照合

国内取引所から入手した取引履歴と、申告書の雑所得の金額を照合します。申告漏れがあれば、その差額が申告漏れ所得として認定されます。

②銀行口座への入金の確認

暗号資産を売却して現金化した場合、銀行口座への入金記録が残ります。調査官は納税者の銀行口座を確認し、申告していない利益がないかをチェックします。

③複数の取引所・ウォレットの横断的な確認

一つの取引所だけを確認するのではなく、複数の取引所やウォレット間の資金移動を追跡します。取引所をまたいで利益を隠そうとしても、資金の流れを追えば把握されます。

④DeFi・NFT取引の確認

近年はDeFi(分散型金融)やNFT取引も調査の対象となっています。「DeFiは申告不要」という誤解が広まっていますが、国内居住者であれば課税対象です。

4. 税務調査が来たらどうすべきか

暗号資産取引に関する税務調査の連絡が来た場合、まず担当部署を確認してください。

税務署の一般調査か、国税局からの調査かによって対応が異なります。初動対応が最終的な結果に大きく影響するため、連絡が来た時点で早めに専門家に相談することをお勧めします。

5. 今からできる対策

暗号資産取引で利益が出ている方が今すぐすべきことは、以下の3つです。

①過去の取引履歴を整理する

各取引所から取引履歴をダウンロードし、年ごとの損益を計算します。計算が複雑な場合は、暗号資産の損益計算ツールを活用することをお勧めします。

②無申告の場合は自主的に申告する

無申告の状態で調査を受けると、無申告加算税に加え、悪質と判断された場合は重加算税が課される可能性があります。自主的に申告すれば、加算税の軽減措置が適用される場合があります。

③専門家に相談する

暗号資産の税務は複雑であり、適正な申告のためには専門知識が必要です。特に海外取引所や複数のウォレットを使用している場合、DeFi・NFTの取引がある場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

暗号資産取引への税務調査は件数・追徴税額ともに増加しており、CARF導入後はさらに強化されることが見込まれます。「バレないだろう」という認識は非常に危険です。

適正な申告と日々の取引記録の整備が、最大のリスク対策です。暗号資産の税務についてご不安な方は、お気軽にご相談ください。

市田税理士事務所 市田佳祐

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よくあるご質問

Q1. 暗号資産(仮想通貨)の利益を申告しないと、税務署にバレますか?

バレる可能性は高まっています。国税庁は暗号資産取引を重点的な調査分野としており、取引所の年間取引報告書、金融機関の入出金、各種資料情報などから取引実態を把握することがあります。また、CARF(暗号資産等報告枠組み)により、令和9年以後、一定の非居住者に係る暗号資産等取引情報が各国税務当局間で自動交換される仕組みも始まります。「海外取引所を使えば大丈夫」という認識は通用しにくくなっています。

Q2. 暗号資産の税務調査では、どのような点が問題になりますか?

申告漏れとして多いのは、取引所ごとの損益計算の誤り、DeFi・NFT・ステーキング収益の申告漏れ、海外取引所の取引、過年度分の未申告などです。国税庁の公表データでは暗号資産取引の1件当たり追徴税額は745万円(令和6事務年度)と高水準で、当局が重点的に調査する分野です。

Q3. 過去に申告していなかった場合、今からでも対応できますか?

対応できます。税務署の事前通知を受ける前に自主的に申告すれば、加算税を軽減できる場合があります。ただし、複数年にわたる計算の再集計が必要になるケースが多く、早めに税理士に相談して対応を進めることをおすすめします。

Q4. 暗号資産の利益は、何所得として申告しますか?

事業所得等に付随する場合を除き、原則として雑所得(総合課税)として申告します。複数の取引所・ウォレット間での損益計算は複雑になるため、取引履歴データを早めに整理しておくことが重要です。

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