イラストレーターの確定申告と税務調査|ネット収入と経費判定を元国税調査官が解説

著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)

「支援サイトや依頼サイトの収入は、申告しなくていいと思っていた」
「海外からの依頼料をどう申告すればよいのか分からない」
「液晶タブレットや画集、ゲームをどこまで経費にできるのか不安だ」

イラストレーターとして活動する方から、このような相談を受けることがあります。
出版社やゲーム会社など法人からの報酬は、源泉徴収と支払調書の仕組みによって収入の金額が税務署に把握されやすい一方、支援サイト・依頼サイト・創作物販売サイト・海外コミッションなど個人や海外事業者から受け取る収入には、こうした仕組みがないものが多くあります。
そのため、イラストレーターの税務調査では、「ネット収入が申告に含まれているか」と「経費が業務上のものか」の2つが中心的な論点になる傾向があります。

私は元大阪国税局(個人課税課・資料調査課)の税理士です。この記事では、イラストレーターの確定申告で問題になりやすいネット収入と経費の論点を、調査官の視点から整理します。

結論:ネット収入の申告漏れと、資料代・機材の経費判定が主な論点になる

イラストレーターの税務調査について、先に結論をまとめます。

  • 法人からの報酬は支払調書で把握されやすいが、支援サイト・依頼サイト・創作物販売・海外コミッションには支払調書が提出されない収入も多く、通帳や決済サービスの入金履歴から確認される
  • 源泉徴収の有無にかかわらず所得の計算対象となり、確定申告が必要な場合は申告に含める。プラットフォームが仲介・決済代行を行う契約では、原則として手数料控除前の総額を売上に計上し、手数料は経費にする
  • 海外からの依頼料は、非永住者以外の居住者であれば原則として申告対象。受け取った外貨は円換算して計上する
  • 経費の重点は、画集・ゲーム・動画配信などの資料費、液晶タブレット・パソコンなどの機材費、自宅作業場の家事按分に置かれる傾向がある
  • 経費は「領収書があるか」だけではなく、その支出が業務に必要なものであり、業務との関連性を用途や利用状況と併せて説明できるかで判断される

この記事でわかること

  • イラストレーターの収入が税務署にどのように把握されるか
  • 調査官がイラストレーターの収入と経費で重点的に確認する5つのポイント
  • 支援サイト・依頼サイト・海外コミッション収入の申告方法
  • イラストの報酬と源泉徴収の関係
  • 資料費・機材・作業場の経費判定と、事前通知が来たときの準備

1. イラストレーターの収入と支払調書:収入が把握される仕組み

イラストレーターの収入は、おおむね次のように分けられます。

  • 出版社・ゲーム会社・広告代理店など法人からの報酬(書籍の装画・挿絵、キャラクターデザイン、広告用イラスト)
  • 支援サイト(会員制の月額支援)、依頼サイト(個別の作画依頼)、創作物販売サイトを通じた収入
  • 海外の依頼者からのコミッション(個別の作画依頼)
  • 同人誌・グッズの即売会や通販での頒布収入
  • 画像素材サイトのロイヤリティ、講座・添削の収入

法人から支払われるイラストの報酬は、内容によって所得税法第204条第1項第1号に掲げる「デザインの報酬」や「挿絵の報酬」、「著作権の使用料」として源泉徴収の対象となります(国税庁質疑応答事例「コピーライター、イラストレーター及びレタリングライターへの報酬」)。源泉徴収税率は、同一人に対する1回の支払金額について、100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です(所得税法第205条)。

さらに、一定額を超える報酬(同一人に対する年間の支払合計額が5万円を超えるもの)は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の対象となり、支払った法人から税務署に提出されます(所得税法第225条第1項第3号、タックスアンサーNo.7431)。この支払調書は、税務署側で本人の申告内容と突き合わせることができる資料です。

一方で、個人からの依頼や、支援サイト・依頼サイト・創作物販売サイト経由の収入、海外からのコミッションには、源泉徴収も支払調書も介在しないものが大半です。給与等の支払者でない個人が支払う報酬には源泉徴収義務がなく(タックスアンサーNo.2793)、支援サイト・依頼サイト等の収入については支払調書が提出されないケースも多くあります。支払調書の提出や源泉徴収の有無は、プラットフォームの契約形態や支払主体によって異なります。これらの収入は、第2章で触れるとおり、通帳や決済サービスの入金履歴から確認されます。

2. 調査官が重点的に確認するポイント

私が大阪国税局で調査事務に従事していた経験から言えば、支払調書のある収入とない収入が混在する業種では、調査官はまず「支払調書のない収入が申告に含まれているか」を確認し、その上で経費の中身に関心を向けます。イラストレーターの場合、確認の重点は次の5点に置かれる傾向があります。

(1)決済サービス・海外送金の入金履歴

支援サイトや依頼サイトの収入は、決済サービスの口座を経由して銀行口座に入金されることが多く、調査官は通帳と決済サービスの取引履歴の両方を確認します。海外コミッションの入金は、国際送金やオンライン決済サービスの履歴から確認されます。プラットフォーム上の残高のまま引き出していない収入も、権利が確定していれば申告対象になります。

(2)法人からの支払調書との突合

法人からの報酬は支払調書と申告内容が照合され、金額が一致しない場合は差額の説明を求められます。支払調書の金額は源泉徴収前の総額ですので、手取額で計上していると差額が生じます。

(3)資料費の娯楽性

画集、写真集、ゲーム、動画配信サービス、フィギュアなどの支出は、資料費として経費になる余地がある一方、趣味との区別がつきにくい点が調査官の目には課題として映ります。年間の資料費が大きい場合、制作した作品との関係が問われることがあります。

(4)機材の業務使用割合

液晶タブレット、パソコン、モニターなどの機材は高額になりやすく、減価償却の方法と業務使用割合が確認されます。

(5)グッズ・同人誌の在庫と、家族への支払

グッズや同人誌の製作費をその年の経費にしている場合、原則として、年末に残っている販売用の在庫は棚卸資産として計上し、その在庫分に対応する原価をその年の売上原価から除く必要があります(所得税法第47条)。
また、配偶者や親族に着彩や事務を依頼して支払をしている場合、実際の業務内容と対価の相当性が確認されます。生計を一にする親族への支払は原則として必要経費にならず、青色事業専従者給与などの制度の要件を満たす場合に限り経費となります(所得税法第56条、第57条)。

3. ネット収入の申告:支援サイト・依頼サイト・創作物販売・海外コミッション

(1)総額で計上し、手数料は経費にする

支援サイトや依頼サイトでは、利用者が支払った金額からプラットフォームの手数料や決済手数料が差し引かれて入金されます。プラットフォームが仲介・決済代行を行い、利用者に対する売上が本人に帰属する契約では、原則として手数料控除前の総額を売上に計上し、差し引かれた手数料は「支払手数料」として経費に計上します。入金額だけを売上にしていると、売上と経費の両方が過少に表示され、消費税の課税売上高の判定にも影響します。
ただし、プラットフォーム自身が取引相手となって作品を買い取る場合や、一定の収益分配額を受け取る契約では、売上として計上すべき金額が異なることがあります。利用規約や支払明細の確認が必要です。

(2)売上の計上時期

売上は入金日ではなく報酬を受け取る権利が確定した時点で計上します。契約や業務の内容によって異なりますが、依頼サイトの場合は納品が完了して報酬が確定した時点、支援サイトの場合は月ごとの支援額が確定した時点が目安になります。年末に確定した報酬が翌年に入金された場合は、前年の売上に含まれます。

(3)海外コミッションの円換算

海外の依頼者から外貨で受け取った報酬は、原則として取引日の電信売買相場の仲値(TTM)で円換算して計上します(所得税基本通達57の3-2)。事業所得・雑所得については、継続して適用することを条件に、収入について電信買相場(TTB)を用いる方法や、一定期間の平均相場を用いる方法も認められています。非永住者以外の居住者は、国内外を問わずすべての所得が課税対象であり、海外からの依頼料も申告対象です。ただし、非永住者に該当する場合は課税所得の範囲が異なります。

(4)投げ銭・支援の性質

支援サイトでの月額支援や投げ銭は、限定コンテンツの提供など明確な対価性がある場合だけでなく、創作活動に付随して受け取るものであれば、事業所得または雑所得の収入となることがあります。一方、創作活動とは切り離された純粋な個人間の贈与に当たる場合には、贈与税の問題となる可能性があります。具体的な所得区分は、支援の仕組みや受領の経緯から判断します。

4. イラストの報酬と源泉徴収

(1)源泉徴収されている報酬

法人からの報酬が源泉徴収されている場合、支払明細等で源泉徴収税額を確認し、確定申告で精算します。源泉徴収はあくまで前払いであり、確定申告が必要な方は年間の所得を計算して申告します(給与所得者で給与以外の所得が20万円以下である場合など、所得税の確定申告を要しない場合もあります。タックスアンサーNo.1900)。

(2)源泉徴収されていない報酬

個人からの依頼やプラットフォーム経由の収入は源泉徴収されていないのが通常です。源泉徴収されていないことは、申告が不要であることを意味しません。確定申告が必要な場合は、これらの収入を含めて所得税額を計算します。

(3)自分が外注する場合の源泉徴収

背景や着彩を他のイラストレーターに外注する場合、外注費だからといって自動的に源泉徴収の対象になるわけではありません。外注した業務の内容が原稿、挿絵、デザイン等の所得税法第204条第1項第1号に掲げる報酬に該当し、かつ支払う側が給与等の支払者である場合に、源泉徴収義務が生じます。給与等の支払者でない個人のイラストレーターは、原則としてこれらの報酬について源泉徴収義務を負いません(タックスアンサーNo.2793)。

5. 資料費と機材の経費判定

(1)資料費

制作中の作品に関する資料、ポーズ集、写真集、同ジャンルの画集、舞台となる時代・場所の史料などは、制作業務との関連性・必要性を説明できるものであれば、経費になる余地があります。
ゲームソフト、動画配信サービス、フィギュアなどは、業務と私生活の両方で使われる性質があります。所得税法施行令第96条は、家事上の経費に関連する経費について、業務の遂行上必要であり、その必要である部分を明らかに区分できる場合に限り必要経費に算入できると定めています。その全部を経費にするのではなく、利用実態に応じた按分を検討することが現実的です。
購入した資料を、制作した作品名とともに記録しておく方法が考えられます。「資料として必要だった」という一般論では否認を覆しにくい一方で、作品と資料の対応を具体的に示せる場合は、調査官側も経費性を認める方向で検討しやすくなります。

(2)機材の減価償却

  • 10万円未満:消耗品費として一括で経費にできる
  • 10万円以上20万円未満:原則は減価償却だが、3年間で均等に償却する一括償却資産とすることができる
  • 一定の中小事業者に該当する青色申告者:少額減価償却資産の特例を適用でき、令和8年4月1日以後に取得するものは1件40万円未満・年間合計300万円が上限(令和8年度税制改正)
  • 上記以外:耐用年数に応じて減価償却(パソコンは4年など)

いずれも業務使用割合に応じた按分が前提です。作画専用の液晶タブレットのように用途が業務に限られる機材は説明が容易ですが、私的利用も多いパソコンは按分を求められることがあります。作画ソフトの月額料金や素材サイトの利用料は、業務用であれば経費になります。

6. 自宅作業場の家事按分と交際費

自宅の一室を作業場にしている場合、家賃、光熱費、通信費のうち業務に使用した部分は経費になります。面積按分や使用時間による按分が一般的で、間取り図や作業時間の記録など、割合を説明できる資料を残しておくことが望まれます。

依頼元との打合せを兼ねた飲食は業務との関連が認められる余地があります。相手の氏名・人数・目的を記録し、家族や友人との飲食は計上しないことが基本です。

7. 所得区分・消費税・平均課税

(1)事業所得か雑所得か

イラスト制作による所得は、事業所得または業務に係る雑所得に区分されます。所得税基本通達35-2では、事業所得に該当するかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度で行われているかにより判定するとされています。その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存していない場合は、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除き、原則として業務に係る雑所得として取り扱われます。会社員との兼業で描いている方は、帳簿を備えているかどうかが所得区分に影響する点に注意が必要です。

(2)消費税とインボイス

国内で事業を行うイラストレーターが国内の依頼者から受け取る報酬は、通常、消費税の課税売上高に含まれます。基準期間(原則として2年前)の課税売上高が1,000万円を超える場合のほか、特定期間の判定などにより課税事業者となる場合があります。
法人の依頼元からインボイス登録を求められることがあり、登録の効力が生じている期間は、売上規模にかかわらず原則として消費税の申告が必要です。登録するかどうかは、依頼元との取引条件と納税負担を比較して判断します。
海外の依頼者からのコミッションは、役務の提供か著作権の譲渡・貸付けかなど取引の性質によって内外判定や免税の適用関係が異なるため、個別の確認が必要です。

(3)平均課税

所得税法上の「変動所得」は、原稿や作曲の報酬、著作権の使用料に係る所得などに限られます(所得税法第2条第1項第23号)。イラストの報酬のうち、著作権の使用料に当たる部分は変動所得となる余地がありますが、制作の対価として受け取るデザインの報酬は該当しないと考えられます。収入が急増した年に平均課税(所得税法第90条)を検討する場合は、報酬の内訳と契約内容を確認した上で判断することが望まれます。

8. 申告漏れ・経費否認の追徴と加算税

税務調査でネット収入の申告漏れや経費の否認があると、修正申告または更正により所得が増加し、本税に加えて加算税が課される場合があり、延滞税が生じることがあります。

(1)過少申告加算税

資料費の私的部分の混入や機材の按分の過大など、見解の相違や計上誤りによる否認の場合は、過少申告加算税の対象となります。調査通知を受ける前に自主的に修正申告した場合は課されず、調査通知後・更正を予知する前の修正申告では5%(一定額を超える部分は10%)、更正を予知した後に修正申告した場合や更正を受けた場合は10%(一定額を超える部分は15%)です(タックスアンサーNo.2026)。

(2)重加算税との分かれ目

重加算税は、課税標準等の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて申告した場合等に課されます。単なる計上漏れや見解の相違だけで直ちに適用されるものではありません。
一方、収入を隠す目的で売上を帳簿に記載せず、支援サイトの入金口座や入金記録を意図的に隠していた場合や、架空の領収書を作成した場合など、隠蔽・仮装と評価される行為があれば重加算税が問題になります。

(3)無申告だった場合

そもそも確定申告をしていなかった場合は、無申告加算税の対象になります。実地調査に係る調査通知(対象税目・対象期間等の通知)を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は原則5%です(延滞税は別途生じます)。調査通知を受けた後、調査による決定を予知する前の期限後申告では、令和5年分以後、50万円以下の部分10%・50万円超300万円以下の部分15%・300万円超の部分25%、決定を予知した後・決定後は同15%・20%・30%と、対応が遅れるほど段階的に重くなります(過年度分は法定申告期限により区分が異なります)。なお、反復して無申告となっている場合や、帳簿の不提示・記載不備がある場合には、さらに加重されることがあります。

国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、無申告者に対する実地調査(特別・一般調査)では、1件当たりの申告漏れ所得金額は2,992万円、追徴税額は524万円となっています。この数値は調査対象として選定された事案の実績であり、業界全体の申告漏れ額や調査確率を示すものではありません。

9. 税務調査の事前通知が来たときの準備

税務調査は、原則として、事前に国税通則法第74条の9に基づく事前通知が行われます。連絡を受けてから調査日までの間に、次の準備をしておくと対応がしやすくなります。

(1)収入の一覧を作る

法人からの支払調書、各プラットフォームの売上明細、決済サービスの取引履歴、海外送金の記録を集め、収入の一覧を作ります。申告漏れがあれば、調査日前に自主的に修正申告を行う選択肢があります。

(2)資料費・機材の対応表を整える

資料費については作品との対応を、機材については業務使用割合の根拠を整理します。後から整理することは問題ありませんが、存在しなかった証憑を作成することは仮装に当たるため避けてください。

(3)質問応答記録書への向き合い方

調査の過程で、調査官が質問と回答を記録した「質問応答記録書」の作成を求めることがあります。収入の受取経路や資料の用途について、記憶が曖昧な点は曖昧なまま答え、推測で断定しないことが大切です。記録書の内容は後の処分の根拠になるため、署名前に内容を確認してください。この点は、共著『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)でも詳しく整理しています。

(4)税理士への相談

ネット収入の申告漏れへの対応や資料費の業務関連性は、説明の組み立て方で結果が変わる論点です。事前通知を受けた段階で税理士に相談すれば、資料の整理と説明の方針を事前に検討できます。

よくある質問

Q1. 支援サイトの月額収入は申告が必要ですか?

支援サイトの収入も所得の計算対象になります。確定申告が必要な場合は、その収入を含めて申告します。限定コンテンツの提供などの対価として受け取る支援は、事業所得または雑所得の収入になります。プラットフォームが仲介・決済代行を行う契約では、手数料を差し引く前の総額を売上に計上し、手数料は経費に計上するのが原則です。契約形態によって計上すべき金額が異なる場合があるため、利用規約や支払明細を確認してください。

Q2. 海外の依頼者からのコミッションはどう申告しますか?

非永住者以外の居住者であれば、国内外を問わずすべての所得が課税対象となるため、海外からの依頼料も申告対象です。外貨で受け取った報酬は、原則として取引日の電信売買相場の仲値で円換算して計上します。消費税の取扱いは取引の性質によって異なるため、個別の確認が必要です。

Q3. 源泉徴収されていない報酬も申告しなければなりませんか?

源泉徴収されているかどうかと、確定申告が必要かどうかは別の問題です。源泉徴収されていない報酬も所得の計算には含めます。確定申告が必要な場合は、これらの収入を含めて申告します。なお、給与所得者で給与以外の所得が20万円以下の場合など、所得税の確定申告を要しないケースもあります。

Q4. 30万円の液晶タブレットは一括で経費にできますか?

一定の中小事業者に該当する青色申告者であれば、少額減価償却資産の特例により取得年に一括で経費にできる余地があります(令和8年4月1日以後の取得は1件40万円未満・年間合計300万円が上限)。白色申告の場合は耐用年数に応じた減価償却となります。いずれも業務使用割合に応じた按分が前提です。

Q5. 画集やゲームの代金は経費になりますか?

制作中の作品との関連を説明できるものは資料費として経費になる余地があります。趣味として購入したものと区別がつかない場合は否認される可能性があるため、作品名と対応づけた記録を残し、私的利用のある部分は按分することが望まれます。

Q6. 依頼元からインボイス登録を求められました。登録すべきですか?

登録すると、売上規模にかかわらず原則として消費税の申告が必要となり、納付税額が生じる場合には消費税の納付が必要です。登録しない場合、依頼元は仕入税額控除に経過措置の制限を受けるため、取引条件に影響することがあります。依頼元との関係と納税負担を比較し、必要に応じて税理士に相談した上で判断することが望まれます。

まとめ:イラストレーターの税務調査は「収入の全体像」と「経費の実態」で決まる

イラストレーターの税務調査では、法人からの報酬が支払調書で把握されやすい一方、支援サイト・依頼サイト・海外コミッションなど、支払調書が提出されないケースの多い収入が申告に含まれているかが、収入側の主な論点になる傾向があります。売上は契約形態に応じて原則として手数料差引前の総額で計上し、海外からの報酬は円換算して申告することが基本です。

経費については、資料費・機材・作業場のいずれも、領収書の有無だけではなく、業務との関連性や利用実態を具体的に説明できるかで判断が分かれます。作品と資料の対応表や機材の業務使用割合の根拠を残しておくことが、確定申告の段階でできる備えになります。

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ネット収入の申告漏れや経費判定は、調査官との説明の組み立て方で結果が変わる論点です。税務調査への対応全般については、「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもご覧ください。

引用・参考文献

  • 所得税法第2条第1項第23号(変動所得)、第37条(必要経費)、第45条(家事関連費等の必要経費不算入)、第47条(棚卸資産の評価)、第56条・第57条(親族が事業から受ける対価)、第90条(変動所得及び臨時所得の平均課税)、第204条・第205条(報酬・料金等の源泉徴収)、第225条(支払調書)
  • 所得税法施行令第96条(家事関連費)
  • 所得税基本通達35-2(業務に係る雑所得の例示)、45-1・45-2(家事関連費)、57の3-2(外貨建取引の円換算)
  • 国税庁質疑応答事例(源泉所得税)「コピーライター、イラストレーター及びレタリングライターへの報酬」
  • 国税通則法第74条の9(事前通知)
  • 国税庁タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」、No.2026「確定申告を間違えたとき」、No.2210「やさしい必要経費の知識」、No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」、No.2793「報酬・料金等の源泉徴収義務者」、No.7431「「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等」
  • 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
  • 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
  • 市田佳祐ほか『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)

この記事を書いた人

市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。