会社が自社株を買い取ると税金はどうなる?|みなし配当と株式譲渡を元国税調査官が解説

著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)

「会社に自社株を買い取ってもらえば、普通の株式売却と同じように約20%の税金で済むのでしょうか」

「退任する先代社長や少数株主から株式を買い取りたいのですが、会社と株主のどちらに税金がかかりますか」

「相続した非上場株式を会社へ売却する場合、税負担を抑える特例はありますか」

非上場会社では、事業承継、少数株主の整理、相続税の納税資金の確保などを目的として、会社が株主から自社株を買い取ることがあります。会社法上は「自己株式の取得」と呼ばれる取引です。

注意すべきなのは、個人株主が受け取る代金の全額が、株式の譲渡収入になるとは限らないことです。代金の一部が税務上の「みなし配当」となり、株式譲渡とは異なる方法で課税されることがあります。

私は大阪国税局で個人課税や富裕層に対する調査事務に従事した後、税理士として非上場株式、相続、事業承継に関する相談に対応しています。この記事では、個人株主が非上場会社へ自社株を売却する一般的なケースを中心に、みなし配当の計算、会社側の手続、相続株式の特例、税務調査実務で論点となりやすい事項を整理します。

この記事の前提

内国の非上場株式会社が、居住者である個人株主から金銭で自己株式を取得する典型例を扱います。売主が法人である場合、市場取引による取得、組織再編に伴う取得、種類株式がある場合などは取扱いが異なることがあります。

結論:自社株の売却代金は「みなし配当」と「株式譲渡」に分かれる

個人株主が非上場株式を発行会社へ売却した場合、受け取った対価は、原則として次の二つに分けて課税関係を判定します。

  1. 受け取った対価のうち、みなし配当に該当しない部分:株式譲渡の収入金額
  2. 受け取った対価が、売却株式に対応する資本金等の額を超える部分:みなし配当

したがって、「会社から3,000万円を受け取り、株式の取得費が800万円なので、2,200万円の譲渡益に一律20.315%を掛ける」という計算にはならないことがあります。

みなし配当は原則として総合課税です。給与所得や事業所得などと合算して所得税を計算するため、株主のほかの所得が多い場合には、第三者へ株式を売却する場合より税負担が大きくなる可能性があります。

また、会社には、みなし配当部分についての源泉徴収、会社法上の決議、分配可能額の確認などが必要です。実行前に、株価、取得資本金額、株主の取得費、みなし配当、最終的な手取額を一体で試算する必要があります。

さらに、個人株主から発行会社への低額譲渡は、所得税法第59条により時価課税となる場合があります。買取価格を低く設定するだけでは、株主の譲渡所得を圧縮できるとは限りません。

重要:みなし配当の計算で使う「株式に対応する資本金等の額」と、株主が実際に支払った「株式の取得費」は別の金額です。ここを混同すると税額試算が大きくずれます。

第1章 会社が自社株を買い取る主な場面

(1)事業承継で先代経営者の株式を整理する

後継者へ経営権を集中させるため、会社が先代経営者や親族株主から株式を取得することがあります。後継者個人が株式を買い取る方法と比べ、会社に蓄積された資金を使える点はメリットです。

一方、会社資金が社外へ流出し、分配可能額も減少します。売主側ではみなし配当が生じる可能性があるため、資金調達のしやすさだけで方法を決めることはできません。

(2)少数株主や退任株主の株式を整理する

退任した役員、従業員株主、疎遠になった親族などから株式を買い取り、株主構成を整理する場合があります。ただし、特定の株主だけから取得する場合には、会社法上、他の株主を保護するための手続が設けられています。

(3)相続税の納税資金を確保する

相続人が非上場株式を相続しても、その株式から直ちに現金が生まれるとは限りません。そこで、発行会社が相続人から株式を買い取り、その代金を相続税の納税資金などに充てる方法があります。

一定の要件を満たす相続株式については、みなし配当課税を行わず、対価の全額を株式譲渡の収入金額とする特例があります。この特例は期限と事前手続が重要です。

第2章 みなし配当と株式譲渡の計算方法

(1)みなし配当の計算

原則的な関係は、次のとおりです。

みなし配当の金額
= 自己株式の取得により交付を受ける金銭等の額が、発行会社の資本金等の額のうち売却株式に対応する部分の金額を超える場合の、その超える部分の金額
(超えない場合は0円)

株式譲渡の収入金額
= 交付を受ける金銭等の額 - みなし配当の金額

株式の譲渡所得等
= 株式譲渡の収入金額 - 株式の取得費 - 譲渡費用

例えば、自己株式の取得対価が300万円、売却株式に対応する資本金等の額が500万円の場合、みなし配当は0円、株式譲渡の収入金額は300万円です。

発行会社の資本金等の額のうち売却株式に対応する部分は、税務上「取得資本金額」と呼ばれます。原則として、自己株式取得直前の資本金等の額と、自己株式を除いた発行済株式数などを基礎に会社側で計算します。種類株式や過去の組織再編などがある場合には、単純な1株当たり計算にならないことがあります。

(2)株主の取得費とは別に計算する

みなし配当を計算する際、株主がその株式をいくらで取得したかは直接使いません。まず自己株式の取得対価と、売却株式に対応する資本金等の額を比較し、対価が後者を超える場合に、その超過額をみなし配当とします。対価からみなし配当を除いた金額を株式譲渡の収入金額とし、そこから株主の取得費を差し引いて譲渡損益を計算します。

そのため、みなし配当が多額に生じる一方で、株式譲渡部分は赤字になることがあります。両者は課税区分が異なるため、その赤字をみなし配当から差し引けるとは限りません。

第3章 3,000万円で自社株を買い取った場合の計算例

次の前提で計算します。

  • 会社が個人株主へ支払う自己株式の取得対価:3,000万円
  • 売却株式に対応する資本金等の額:500万円
  • 個人株主の株式取得費:800万円
  • 譲渡費用:0円
区分 計算 金額
みなし配当 3,000万円-500万円 2,500万円
株式譲渡の収入金額 3,000万円-2,500万円 500万円
株式譲渡損益 500万円-800万円 300万円の損失

この例では、個人株主に2,500万円の配当所得と、300万円の一般株式等に係る譲渡損失が生じます。

非上場株式の譲渡損失は、同じ年のほかの一般株式等に係る譲渡益からは控除できますが、原則として、みなし配当、給与所得、事業所得、上場株式等の譲渡益からは控除できません。したがって、「譲渡損失300万円があるので、みなし配当2,500万円から差し引ける」という計算にはなりません。

第三者へ売却する場合との違い

比較項目 発行会社への売却 第三者への売却
売却代金3,000万円の扱い みなし配当2,500万円
譲渡収入500万円
全額が譲渡収入3,000万円
取得費800万円控除後 配当所得2,500万円
譲渡損失300万円
譲渡益2,200万円
主な課税方式 みなし配当は原則総合課税
譲渡部分は申告分離課税
原則として申告分離課税

第三者へ同額で売却した場合、譲渡益2,200万円に対する所得税・復興特別所得税・住民税は、令和8年(2026年)現在、概算で446万9,300円です。これに対し、発行会社への売却は2,500万円が総合課税の配当所得となるため、最終税額は株主のほかの所得や所得控除、配当控除などによって変わります。

実際の売却方法は、税額だけでなく、買主の資金、経営権、株主構成、価格の妥当性を含めて決める必要があります。

第4章 個人株主にかかる税金

(1)みなし配当は原則として総合課税

非上場会社の株式に係るみなし配当は、原則として配当所得となり、給与所得や事業所得、不動産所得などと合算して所得税を計算します。一定の国内法人からの配当については配当控除の対象となることがありますが、所得金額やほかの所得の状況によって最終負担は異なります。

株主の課税所得が高い場合、みなし配当部分に適用される所得税率も高くなります。「非上場株式の売却だから税率は一律20.315%」とは限らない点が、自社株買いの最大の注意点です。

(2)会社はみなし配当から20.42%を源泉徴収する

令和8年(2026年)現在、非上場株式の配当等には、原則として20.42%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。地方税は源泉徴収されません。

上記の計算例では、みなし配当2,500万円に対する源泉徴収税額は次のとおりです。

2,500万円 × 20.42% = 510万5,000円

取得対価3,000万円から源泉徴収税額510万5,000円を差し引く場合、株主へ実際に送金する金額は2,489万5,000円です。会社は源泉徴収した税額を、原則として支払月の翌月10日までに納付します。

この源泉徴収だけで常に課税が完結するわけではありません。株主は原則として確定申告で配当所得を申告し、源泉徴収税額を精算します。住民税の負担も別途生じます。

(3)株式譲渡益は原則20.315%の申告分離課税

みなし配当を除いた株式譲渡部分に利益が生じた場合、非上場株式は一般株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税の対象になります。令和8年(2026年)現在の税率は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%の合計20.315%です。

譲渡損失が生じた場合は、原則として同じ年の一般株式等に係る譲渡益の範囲内で控除します。給与所得などとの損益通算や、通常の非上場株式に係る損失の翌年以後への繰越しはできません。

第5章 自社株を買い取る会社側の手続と税務

(1)株主総会などの会社法手続が必要

株式会社が株主との合意により有償で自己株式を取得する場合、会社法第156条により、原則として株主総会で、取得する株式数、対価の総額、取得できる期間などをあらかじめ定めます。取得期間は1年を超えることができません。

第156条の決議は、会社が自己株式を取得できる枠を定めるものです。実際に株式を取得するときは、会社法第157条により、その都度、取得株式数、1株当たりの対価またはその算定方法、対価の総額、譲渡申込みの期日などを決定します。取締役会設置会社では、この決定は取締役会決議によります。

特定の株主だけから取得する場合には、原則として株主総会の特別決議が必要です。売主となる特定株主は、一定の場合を除き、その決議で議決権を行使できません。また、他の株主が自分も売主に加えるよう請求できる制度があります。

相続人等から相続その他の一般承継により取得した株式を買い取る場合、会社が公開会社でなく、かつ、その相続人等が当該株式について株主総会等で議決権を行使していないときは、会社法第162条により、他の株主への通知および売主追加請求に関する同法第160条第2項・第3項を適用しない特則があります。ただし、特定の株主から取得するための決議自体が不要になるわけではありません。

定款、機関設計、株主構成、取得方法によって必要な決議や通知が異なるため、議事録だけを後から整えるのではなく、取得前に会社法上の手順を確認する必要があります。

(2)取得対価は分配可能額を超えられない

会社法第461条は、自己株式の取得により株主へ交付する金銭等の帳簿価額について、効力発生日の分配可能額を超えてはならないと定めています。預金残高が十分にあることと、自己株式を取得できる分配可能額があることは同じではありません。

直前決算後に大きな損益が生じている場合は、臨時計算書類の作成・承認の要否も含め、分配可能額を個別に確認します。過去に自己株式の取得や配当を行っている場合も同様です。

(3)会社にとって取得対価は損金にならない

会計上、取得した自己株式は資産ではなく、取得価額を純資産の部から控除して表示します。税務上も、自己株式の取得は原則として資本等取引として扱われ、取得対価を通常の経費として損金算入することはできません。

税務上は、取得資本金額に相当する部分について資本金等の額を減少させ、みなし配当に対応する部分について利益積立金額を減少させる処理が基本となります。会計処理と税務上の資本金等の額・利益積立金額の動きは一致しないため、法人税申告書の別表調整まで確認します。

(4)源泉徴収と法定調書を忘れない

会社は、取得対価を支払う前にみなし配当額を計算し、源泉所得税等を控除します。原則として支払月の翌月10日までに「配当等の所得税徴収高計算書」を用いて納付します。

併せて、みなし配当については、原則として「配当等とみなす金額に関する支払調書(同合計表)」の提出対象となります。提出期限は、記名のものは支払確定日から、無記名のものは支払日から1か月以内です(特例あり)。最新の様式と記載要領を確認して提出します。

自己株式の売買契約書に取得対価だけを記載し、みなし配当や源泉徴収を検討していない場合、会社が後から源泉所得税を負担する事態になり得ます。

第6章 相続した非上場株式には、みなし配当課税の特例がある

(1)対価の全額を株式譲渡の収入金額にできる

相続または遺贈により取得した非上場株式を発行会社へ譲渡する場合、一定の要件を満たせば、通常ならみなし配当となる部分についてみなし配当課税を行わず、対価の全額を一般株式等に係る譲渡所得等の収入金額とする特例があります。

この特例を使っても非課税になるわけではありません。対価の全額から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡益に対し、原則として20.315%の申告分離課税が行われます。また、一定の要件を満たせば、相続税の一部を取得費に加算する特例と併用できます。

(2)主な適用要件

  • 相続または遺贈により財産を取得した個人であること
  • その相続または遺贈について納付すべき相続税額があること
  • 相続税の課税対象となった非上場株式を、その発行会社へ譲渡すること
  • 所定の期間内に譲渡すること
  • 譲渡日までに、所定の届出書を発行会社へ提出すること

(3)期限は一般に「相続開始から約3年10か月以内」

譲渡できる期間は、相続開始日の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までです。相続税の申告期限は通常、相続開始を知った日の翌日から10か月以内であるため、一般には「相続開始から約3年10か月以内」と説明されます。

ただし、正確な最終日は個別の日付で確認する必要があります。期限を過ぎてから契約日を遡らせることはできません。

(4)株主と会社の双方に手続がある

株主は、株式を発行会社へ譲渡する日までに、「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を発行会社へ提出します。

発行会社は、その株式を譲り受けた日の属する年の翌年1月31日までに、本店または主たる事務所の所轄税務署長へ届出書を提出します。売買後に特例の存在へ気付くのでは遅いため、契約前の確認が必要です。

第7章 買取価格は額面や相続税評価額だけで決めない

非上場株式には市場価格がないため、買取価格の算定根拠が重要です。過去の出資額、株券の額面、直前の相続税評価額のいずれかを、そのまま売買価格にできるとは限りません。

会社の純資産、収益力、配当実績、保有資産、売主の持株割合、経営支配力などを確認し、取引目的に応じた価格を検討します。税務上の評価は、売主が同族株主か少数株主かによっても考え方が変わることがあります。

個人株主から発行会社への低額譲渡には時価課税がある

個人株主が自己株式を発行会社へ譲渡する場合、実際の取得対価が、その取得時における株式の時価の2分の1未満であれば、所得税法第59条および同法施行令第169条により、原則として時価で譲渡したものとして所得を計算します。単に買取価格を低く設定しても、株主の譲渡所得をその分だけ圧縮できるとは限りません。

低額譲渡に該当する場合の株式譲渡収入
= 自己株式の時価 - みなし配当額

低額譲渡に該当するかどうかは、会社が自己株式を取得した時の株式の時価と、株主へ交付した金銭等の額を比較して判定します。非上場株式の時価は、所得税基本通達59-6に従って検討するため、相続税申告で用いた評価額をそのまま売買時の時価にできるとは限りません。

また、対価が時価の2分の1以上であっても、その譲渡が同族会社等の行為または計算の否認を定める所得税法第157条に該当する場合には、時価により所得金額を計算される可能性があります。

  • 時価より低い価額で取得する場合:売主個人には所得税法第59条または第157条による時価課税の問題が生じます。さらに、会社や残存株主への経済的利益の移転があるかを検討する必要があります。
  • 時価より高い価額で取得する場合:時価を超える部分について、当事者の関係や取引目的に応じ、会社側の寄附金・役員給与、売主側の給与所得等、株主間の贈与税などが問題となる可能性があります。

自己株式取得の決議が有効であっても、税務上、その取引価格がそのまま認められるとは限りません。

注意:「税金を少なくするために買取価格を低くする」「会社に資金があるので高く買い取る」といった決め方は危険です。価格の算定根拠を文書で残せる状態にします。

第8章 税務調査で論点となりやすいポイント

自己株式の取得は、株主へ多額の資金が移動し、所得税、法人税、源泉所得税、相続税・贈与税が交差する取引です。以下は法令・通達に定められた一律の調査項目ではなく、税務調査実務において論点となりやすい事項です。

(1)買取価格の算定根拠

株価算定書、直前の決算書、保有資産の時価、売主の株主区分、過去の株式移動などから、価格の妥当性が確認対象となることがあります。売主や残存株主が会社の役員または親族である場合には、価格を通じた利益移転がないかも論点になります。

(2)みなし配当と取得資本金額の計算

会社の資本金額だけを発行済株式数で割るなど、取得資本金額を簡略に計算していないかが確認対象となることがあります。過去の増資、減資、自己株式取得、合併などがある会社では、税務上の資本金等の額を法人税申告書から連続して確認する必要があります。

(3)源泉徴収と納付

みなし配当があるにもかかわらず源泉徴収していない場合、支払会社に源泉所得税、不納付加算税、延滞税が生じる可能性があります。株主が確定申告をしていることだけで、会社の源泉徴収義務がなくなるわけではありません。

(4)会社法手続と契約内容

株主総会議事録、取締役会議事録、他の株主への通知、売買契約書、株主名簿、送金記録などが相互に一致しているか確認します。議事録の決議日より前に代金を支払っている、取得株式数が株主名簿と合わないといった不整合は、事実関係の追加確認につながります。

(5)相続特例の要件と期限

相続株式の特例を使う場合は、相続税の課税対象となった株式か、納付すべき相続税額があるか、期限内の譲渡か、事前届出があるかを確認します。取得費加算の計算も含め、相続税申告書と所得税申告書の整合性が必要です。

第9章 自社株を買い取る前の実務手順

  1. 目的を整理する
    事業承継、相続税の納税資金、少数株主の整理など、なぜ会社が買い取るのかを明確にします。
  2. 株主と株式の履歴を確認する
    株主名簿、取得時の契約書、払込証明、相続税申告書などから、保有株数と取得費を確認します。
  3. 株価を算定する
    直前決算だけでなく、含み損益、収益力、株主区分などを踏まえて買取価格の根拠を作ります。
  4. みなし配当と手取額を試算する
    会社の取得資本金額、株主の取得費、源泉徴収税額、確定申告後の概算税額を計算します。
  5. 代替案と比較する
    後継者や第三者への譲渡、贈与、段階的な移転などと、資金負担・税負担・経営権を比較します。
  6. 会社法上の手続を行う
    分配可能額を確認し、株主総会等の決議、通知、契約、株主名簿の更新を順序どおりに行います。
  7. 支払後の税務手続を行う
    源泉所得税等の納付、法定調書、法人税申告書の別表調整、株主の確定申告まで管理します。

自己株式の取得は、実行後に「やはり第三者への通常の株式譲渡として申告したい」と変更できる取引ではありません。契約・決議・送金より前に、課税関係と概算税額を試算しておくことが重要です。

よくある質問

Q1.会社へ株式を売れば、売却代金の全額に20.315%を掛ければよいですか

いいえ。発行会社による自己株式の取得では、まず売却代金をみなし配当部分と株式譲渡部分に分けます。みなし配当は原則として総合課税であり、株式譲渡部分だけが申告分離課税の対象になります。

Q2.売却価格から自分の出資額を引いた金額が、みなし配当ですか

必ずしもそうではありません。みなし配当の計算では、株主個人の取得費ではなく、発行会社の税務上の資本金等の額のうち売却株式に対応する金額を使います。株主の取得費は、その後の株式譲渡損益の計算で使います。

Q3.会社に利益剰余金がなければ、みなし配当は生じませんか

会計上の利益剰余金の有無だけでは判定できません。所得税法上のみなし配当は、交付を受けた金銭等と税務上の資本金等の額のうち対応部分を基に計算します。会計上の表示だけで結論を出さず、法人税申告書を確認する必要があります。

Q4.みなし配当から源泉徴収しなくても、株主が確定申告すれば問題ありませんか

株主の確定申告と会社の源泉徴収義務は別です。会社が源泉徴収すべきみなし配当を支払う場合、原則として支払時に源泉徴収し、翌月10日までに納付します。未納があると、会社側に不納付加算税や延滞税が生じる可能性があります。

Q5.相続した非上場株式を会社へ売却すれば、必ず特例を使えますか

必ず使えるわけではありません。納付すべき相続税額があること、相続税の課税対象となった非上場株式であること、所定期間内の譲渡であること、譲渡日までに届出書を会社へ提出することなどの要件があります。

Q6.買取価格は相続税申告で使った株価に合わせれば安全ですか

相続税評価額がそのまま売買時の適正価格になるとは限りません。取引時点、売主の株主区分、会社の資産・収益、取得目的などを踏まえて検討します。相続税申告時から会社の業績や資産価値が変わっている場合は、特に再計算が必要です。

まとめ:自社株買いは、契約前の税額試算が重要

会社が個人株主から自社株を買い取る場合、受取代金は原則として、みなし配当と株式譲渡の二つに分けて課税されます。みなし配当は総合課税となるため、通常の非上場株式の譲渡より税負担が大きくなる場合があります。

会社側にも、株主総会等の決議、分配可能額の確認、取得資本金額の計算、源泉徴収、法人税申告書の別表調整が必要です。相続株式については、一定期間内に事前手続を行えば、みなし配当課税を回避できる特例があります。

自己株式の取得を検討するときは、次の金額を契約前に一覧にして比較してください。

  • 非上場株式の適正な買取価格
  • 会社の分配可能額と支払後の資金繰り
  • 売却株式に対応する取得資本金額
  • みなし配当額と源泉徴収税額
  • 株主の取得費と株式譲渡損益
  • 確定申告後の概算税額と最終手取額
  • 相続株式の特例および取得費加算の適用可否

市田税理士事務所では、非上場株式の評価、事業承継、相続、自己株式取得に関する税務相談に対応しています。実行前の税額比較や、税務調査で自己株式取引の説明を求められている場合は、資料を確認したうえで論点を整理します。

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会社売却時の株式譲渡課税については、「M&A・会社売却の税金|ミニマムタックスを元国税調査官が解説」もあわせてご覧ください。

引用・参考文献

この記事を書いた人

市田佳祐(いちだ けいすけ)

税理士・市田税理士事務所代表(大阪市)。大阪国税局で個人課税、資料調査課等の調査事務に従事した後、2023年に税理士登録。非上場株式、相続、事業承継、税務調査に関する相談に対応している。1級FP技能士。