税務調査の途中から国税OB税理士に依頼できる?|依頼できる時期と対応範囲を解説

著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)

「税務調査が始まっているが、今から別の税理士に相談してもよいのか」
「顧問税理士はいるが、税務調査だけ国税OB税理士に依頼できるのか」
「すでに税務署から問題点を指摘されている。今から依頼しても遅いのか」

税務調査が始まった後に、このような相談を受けることがあります。結論からいうと、税務調査の途中からでも、新たに税理士へ税務代理を依頼することは可能です。

ただし、「いつ依頼しても同じ」というわけではありません。調査が進むほど、それまでに回答した内容や提出した資料が増え、税務署側でも事実関係や課税上の問題点の整理が進んでいきます。

私は大阪国税局で個人課税や富裕層に対する調査事務に従事した後、現在は税理士として税務調査対応に力を入れています。この記事では、税務調査の途中から国税OB税理士に依頼できるのか、どの時期までに相談した方がよいのか、途中から依頼した場合に何ができるのかを解説します。

結論:途中からでも依頼できるが、調査結果の内容説明前が大きな分岐点

税務調査の途中から新たな税理士に税務代理を依頼することは可能です。税理士法上、税務代理には、税務官公署の調査に関して、納税者に代わって税務官公署に対する主張や陳述を行うことが含まれています。

税理士が税務代理を行う場合には税務代理権限証書を提出します。国税庁は、その提出時期を「随時」としています。また、税理士法上、税務代理を委任できる時期を実地調査開始前までとする制限は設けられていません。

一方で、途中から新しい税理士が関与しても、それまでの調査経過が白紙になるわけではありません。調査結果の内容説明は法律上の依頼期限ではありませんが、税務署側の事実認定や税額計算が相当程度まとまる段階であり、実務上の大きな分岐点になります。この区別が重要です。

この記事でわかること

  • 税務調査の途中から別の税理士へ依頼できるのか
  • 顧問税理士がいても別の税理士に相談できるのか
  • 途中から依頼した税理士に何を任せられるのか
  • 調査官が途中段階で確認しているポイント
  • どの段階までに相談した方がよいのか
  • 修正申告を勧められた場合に確認したいこと

第1章 税務調査が始まった後でも税務代理を依頼できる

税務調査では、事前通知が行われた時点ですでに顧問税理士がいるケースが多いと思います。しかし、その税理士だけが調査終了まで対応しなければならないという制度ではありません。

税理士法第30条は、税理士が税務代理をする場合、その権限を有することを証する書面を税務官公署へ提出することを定めています。国税庁は、税務代理権限証書の提出時期を「随時」としています。

また、国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(税理士向け)」では、納税者への事前通知後に新たな税理士へ委任した場合についても説明しています。

FAQが直接示しているのは、事前通知された調査開始日時より前に新たな税理士が税務代理権限証書を提出したケースです。この場合、新たな税務代理人に対しても事前通知を行うとされています。

実地調査の開始後についても、税理士法上、税務代理の委任時期を調査開始前までに限定する規定はありません。したがって、実地調査が始まった後でも、新たな税理士へ税務代理を委任し、その後の調査対応を依頼することは可能です。

ただし、新しい税理士が途中から関与しても、すでに終了した事前通知や実地調査を改めて最初から行うわけではありません。それまでの調査経過を確認したうえで、その後の対応に関与することになります。

そのため、依頼時には「いつから関与するか」だけでなく、「どの税目・年分について、どこまで税務代理を委任するか」を明確にしておくことが重要です。途中からの依頼では、委任範囲と現在の調査段階を最初に確認します。

第2章 調査官が重点的に確認するポイント

税務調査の途中から税理士が関与する場合でも、調査官側の確認はそれまでの経過を前提に進みます。特に、次の点が重要になります。

(1)これまでに提出された資料

申告書、帳簿、通帳、請求書、契約書など、すでに税務署へ提出・提示した資料は、その後の事実認定の基礎になります。新しい税理士は、まず何を税務署が確認済みなのかを把握する必要があります。

(2)これまでの質問と回答

調査官から何を聞かれ、納税者や顧問税理士がどのように回答したかも重要です。回答内容に事実誤認がある場合には、なぜ誤っていたのか、どの資料によって訂正できるのかを整理する必要があります。

(3)現在の指摘事項と未提出資料

売上、経費、加算税など、税務署が現在何を問題としているのかを確認します。追加提出を求められている資料があれば、その資料がどの論点の確認に使われるのかも整理します。

私が大阪国税局で調査事務に従事していた経験から言えば、途中から税理士が関与する場合は、「今後どう説明するか」だけでなく、「これまで何を説明し、何が確認されているか」を正確に把握できるかが実務の分かれ目になります。

税務調査への税理士の立会いについては、税務調査に税理士の立会いは必要かでも解説しています。

第3章 顧問税理士がいても別の税理士に依頼できる

税務調査の途中で別の税理士へ相談したいと考えても、「今の顧問税理士との契約を終了しなければならないのではないか」と心配される方がいます。

税務上は、顧問税理士がいることだけを理由に、他の税理士へ税務代理を依頼できなくなるわけではありません。国税庁のFAQでも、一人の納税者について複数の税務代理人がいる場合を想定した取扱いが示されています。

複数の税務代理人がいる場合には、「代表する税務代理人」を定めることもできます。ただし、税務代理人として関与できる範囲は、税務代理権限証書で委任された税目や年分等によります。

例えば、所得税だけでなく消費税も調査対象になっている場合には、新たに依頼する税理士へどの税目・年分を委任するのかを確認する必要があります。

複数年分が調査対象となっている場合には、「税務代理の対象に関する事項」に記載する年分等に加え、必要に応じて「過年分に関する税務代理」の欄も確認します。この欄は、記載した年分等より前の年分についても、同じ税目の調査に関する税務代理を委任する場合に使用します。

なお、調査結果の内容説明を新たに依頼した税理士に受けてもらう場合には、税務代理権限証書の「調査の終了の際の手続に関する同意」についても確認が必要です。複数の税務代理人がいる場合には、誰が説明を受けるのかについても整理します。

顧問税理士がいる状態で別の税理士へ相談する方法は、税務調査のセカンドオピニオンでも詳しく解説しています。

第4章 まず相談だけする方法もある

税務調査の途中で別の税理士に相談するからといって、最初から税務代理人として関与してもらう必要はありません。

例えば、「税務署からこのように指摘されているが、どう考えるか」「顧問税理士から修正申告を勧められているが、他の見方はないか」「重加算税になると言われているが、その要件を確認したい」といったセカンドオピニオンを受ける方法があります。

その結果、現在の顧問税理士の対応で問題ないと整理できることもあります。反対に、追加で確認すべき資料がある、税務署の事実認定を確認する余地がある、加算税の要件を検討した方がよいと判断することもあります。

税理士には税理士法上の守秘義務があります。そのため、正式な税務代理を依頼する前に、第三者の税理士へセカンドオピニオンとして相談することは可能です。

一方、正式に税務代理権限証書を提出し、現在の顧問税理士とともに複数の税務代理人として調査に関与する場合には、税務署との窓口や税理士間の役割分担を整理することが重要です。

第5章 途中から依頼した税理士は何ができるのか

税務調査の途中から依頼する場合、まず行うのは、それまでの調査経過の確認です。

調査対象となっている税目と年分、事前通知の内容、税務署へ提出した資料、調査官から質問された内容、納税者や顧問税理士が回答した内容、現在指摘されている問題点などを整理します。

そのうえで、税務上の論点を検討します。売上除外を指摘されているのであれば、本当に売上なのか。経費を否認されているのであれば、必要経費に該当する事実関係や資料があるかを確認します。

重加算税を指摘されているのであれば、単なる申告誤りなのか、隠ぺい・仮装と評価される事実があるのかを分けて検討します。

税理士法上、税務官公署の調査に関して、税務官公署に対して主張・陳述することは税務代理に含まれます。そのため、委任を受けた範囲で、調査官とのやり取り、追加資料の提出、事実関係や税法上の見解の説明などに関与することができます。

途中から関与する場合には、税務署の指摘に反論することだけが目的ではありません。申告内容に誤りがある部分は整理し、争点になる部分と認める部分を分けることも重要です。事実関係が整理されていないまま主張を重ねると、かえって説明が分かりにくくなることがあります。

また、税務署から口頭で示された金額と、実際の修正申告案の計算が一致しているか、所得税だけでなく消費税や加算税への影響がどうなるかなど、税額面を確認することもあります。途中からの依頼では、これまでの経過と今後の対応を切り分けて整理することが重要です。

第6章 途中から依頼しても、それまでの調査は消えない

途中から新しい税理士に依頼すれば、それまでの調査経過を白紙にできるわけではありません。

すでに税務署へ提出した資料、調査官へ説明した事実、過去の質問への回答、作成された質問応答記録書、確認済みの銀行取引や契約関係などは、新しい税理士が入ったからといって存在しなかったことにはなりません。

以前の説明に事実誤認があれば、その理由と根拠を整理して訂正することは考えられます。ただし、「税理士を変更したので、これまでの回答を白紙にする」という対応ができるわけではありません。

そのため、途中から依頼を受ける税理士は、何がすでに確認されているのか、何がまだ調査中なのか、どの論点について追加説明ができるのかを整理する必要があります。

特に注意したいのは、納税者本人の記憶と、調査官が記録しているやり取りに差がある場合です。調査が長期間に及んでいると、「何をいつ説明したのか」が曖昧になることがあります。メール、提出資料の控え、調査時のメモなどが残っていれば、時系列を再構成する材料になります。

税理士なしで税務調査を受けている途中から依頼する場合も基本的な考え方は同じです。詳しくは、税務調査は税理士なしで対応できるかをご覧ください。

第7章 いつまでに相談した方がよいのか

税務調査の途中から税理士へ依頼することはできます。しかし、相談する時期によって対応できる範囲は変わります。

(1)事前通知を受けた段階

この時点であれば、申告内容の確認、想定される論点の整理、調査当日に準備する資料の確認、税理士の立会いなどを事前に検討できます。

(2)実地調査が始まった直後

調査官が何を確認しているのかが見え始めるため、追加で確認すべき資料や、今後どのように説明するかを検討できます。一方で、すでに行った回答や提出資料については確認する必要があります。

(3)税務署から問題点を指摘された段階

この段階も、第三者の税理士へ相談する意味が大きい時期です。指摘された事実認定は正しいのか、追加資料はないか、税法上の評価に検討の余地がないかを確認します。

(4)調査結果の内容説明が近い段階

ここが実務上の大きな分岐点です。調査結果の内容説明は、法律上、新たな税理士へ依頼できなくなる期限ではありません。

しかし、この段階では、税務署側は更正等をすべきと認める金額やその理由を説明できるところまで整理を進めています。国税庁の通達でも、「更正決定等をすべきと認めた額」は、内容説明の時点で得ている情報に基づき合理的に算定した税額等とされています。

内容説明後であっても、その説明に基づく修正申告書や期限後申告書の提出、源泉徴収等による国税の納付、または更正決定等が行われるまでの間に、説明の前提となった事実が異なることが明らかになり、説明内容を修正する必要が生じた場合には、必要に応じて調査を再開し、再度説明を行う取扱いもあります。

したがって、「内容説明を受けたら何もできない」ということではありません。ただし、これから調査対応の方針を組み立てるという意味では、それ以前と比べて対応できる余地は小さくなります。

(5)修正申告を勧められている段階

調査結果の内容説明後には、税務署から修正申告を勧められることがあります。修正申告の勧奨に応じるかどうかは納税者の任意です。

国税庁も、勧奨に応じなかった場合には調査結果に基づいて更正等を行うことになるものの、応じなかったこと自体を理由として、修正申告に応じた場合と比較して基本的に不利な取扱いを受けるものではないと説明しています。

また、修正申告を提出した場合、その修正申告自体について不服申立てをすることはできません。その後、修正申告に誤りがあると考える場合には、一定の要件の下で更正の請求を検討することになります。

税務署から示された内容に疑問がある場合には、何を修正するのか、修正金額はいくらなのか、その根拠となる事実や加算税の取扱いはどうなっているのかを提出前に確認することが重要です。

修正申告と更正処分の違いについては、修正申告と更正処分の違いで解説しています。

第8章 途中から依頼する場合に準備したい資料

税務調査の途中から税理士へ相談する場合には、それまでの調査経過を確認する必要があります。相談時間を有効に使うためには、可能な範囲で状況を整理しておくとよいでしょう。

  • 税務調査の対象税目、対象年分
  • 税務署または国税局の担当部署
  • 調査官の所属、氏名
  • 事前通知の内容
  • 対象年分の確定申告書
  • 総勘定元帳などの帳簿
  • すでに税務署へ提出した資料
  • 調査官から指摘されている事項
  • 追加提出を求められている資料
  • 質問応答記録書があればその内容
  • 修正申告案や税額計算を示されていればその資料

資料がすべて揃っていなくても相談はできます。ただし、「何を聞かれたのか分からない」「何を提出したのか分からない」という状態では、まず事実関係の整理から始める必要があります。

可能であれば、調査開始から現在までの経過を時系列で簡単にまとめておくと、途中から関与する税理士も状況を把握しやすくなります。

時系列には、調査日、税務署から求められた資料、提出した資料、指摘された事項、次回までの宿題などを簡潔に記載します。特に、調査官から具体的な修正金額や加算税の話が出ている場合には、その内容も残しておくと相談時の確認がしやすくなります。

顧問税理士がこれまで対応している場合には、顧問税理士が把握している調査経過も重要です。新しい税理士へ依頼する場合でも、可能であれば従前の説明や資料の流れを確認し、同じ事実について異なる説明が生じないよう整理したうえで対応します。

よくある質問

Q1. 税務調査が始まった後でも国税OB税理士に依頼できますか?

はい。実地調査が始まった後でも、新たな税理士へ税務代理を依頼することは可能です。ただし、それまでに終了した調査手続が最初からやり直しになるわけではありません。

Q2. 顧問税理士がいても別の税理士に依頼できますか?

可能です。一人の納税者について複数の税務代理人が関与することは制度上想定されています。ただし、税務代理権限証書に記載する税目・年分等の委任範囲や、現在の顧問契約を確認する必要があります。

Q3. 顧問税理士に知られずに相談できますか?

正式に税務代理を依頼する前に、別の税理士へセカンドオピニオンとして相談することは可能です。税理士には税理士法上の守秘義務があります。一方、正式に複数の税務代理人として調査に関与する場合には、現在の顧問税理士との役割分担を整理することが重要です。

Q4. 調査官から問題点を指摘された後でも相談する意味はありますか?

あります。指摘された事実関係や税法上の評価、追加で確認できる資料、加算税の要件などを検討できます。ただし、すでに提出した資料や過去の説明がなかったことになるわけではありません。

Q5. 調査結果の内容説明を受ける直前でも依頼できますか?

依頼すること自体は可能です。ただし、その段階では税務署側の事実認定や税額計算が相当程度整理されていることが通常です。法律上の依頼期限ではありませんが、調査対応について第三者の税理士へ相談するのであれば、実務上は調査結果の内容説明を受ける前が大きな分岐点になると考えます。

Q6. 国税OB税理士なら税務署との対応で有利になりますか?

国税OB税理士だから特別な権限があるわけではありません。税務代理を行う法的な権限は、国税勤務経験ではなく、税理士としての委任と税務代理権限に基づきます。国税勤務経験は、税務調査の手続や論点を検討する際の経験の一つです。

まとめ:途中からでも依頼できるが、内容説明前が実務上の大きな分岐点

税務調査の途中からでも、新たな税理士へ税務代理を依頼することはできます。現在の顧問税理士を残したまま別の税理士へ相談・依頼することや、正式な税務代理の前にセカンドオピニオンを受けることも考えられます。

一方、新しい税理士が入ったからといって、過去に提出した資料や回答がなかったことになるわけではありません。調査結果の内容説明は法律上の締切ではありませんが、その段階では税務署側の事実認定や税額計算が相当程度整理されています。

また、修正申告を勧められた場合、その勧奨に応じるかどうかは納税者の判断です。修正申告を提出すると、その修正申告自体について不服申立てをすることはできないため、内容に疑問がある場合には提出前に確認することが重要です。

市田税理士事務所は、国税OBの税理士が税務調査対応・無申告のご相談、顧問契約を承っています。

顧問契約なしのスポット相談も可能。関西全域・オンラインで全国対応。

お問い合わせはこちら

税務調査の途中からのご相談を含め、税務調査対応全般について確認したい方は、「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもあわせてご覧ください。

※本記事は令和8年9月20日時点の法令・国税庁公表資料を基に作成しています。税務代理の範囲や対応方法は、調査の進行状況、対象税目・年分、これまでの調査経過、現在の税務代理人との委任関係や契約内容などによって異なります。

引用・参考文献

この記事を書いた人

市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。