組織再編とは?|合併・会社分割・株式交換の違いと税務の基本を元国税調査官が解説

著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)

「複数の会社を1つにまとめたいが、合併と株式交換は何が違うのか」
「会社の事業を別会社に移す場合、どのような方法があるのか」
「組織再編をすると税金が発生するのか。株価評価の改正も影響するのか」

事業の拡大や経営の効率化、事業承継などを検討する際に、組織再編という言葉を耳にすることがあります。

しかし、合併、会社分割、株式交換、株式移転など、組織再編にはさまざまな方法があり、それぞれ会社法上の仕組みや税務上の取扱いが異なります。

私は大阪国税局で個人課税や富裕層に対する調査事務に従事した後、税理士として法人税務や税務調査に関する相談に携わっています。

この記事では、組織再編の種類や仕組み、適格組織再編と非適格組織再編の違いを基礎から解説します。

また、令和8年に実施された非上場株式の評価に関する改正と、同年11月に大きな動きがあった株価評価制度の見直しについても整理します。

結論:組織再編とは会社の組織や事業を組み替えること

組織再編とは、会社の事業や資産、株式の保有関係などを組み替えることです。

代表的な方法には、合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付などがあります。

例えば、2つの会社を1つにまとめる場合には合併、特定の事業を別会社に移す場合には会社分割、完全親子会社関係を構築する場合には株式交換や株式移転が選択肢となります。

特に税務上重要なのが、適格組織再編と非適格組織再編の区分です。

一定の要件を満たす適格組織再編では、移転資産の譲渡損益について課税の繰延べが認められる仕組みがあります。

一方、非適格組織再編では、移転資産の時価を基礎とした譲渡損益の認識や、一定の資産に対する時価評価課税などが問題となります。

組織再編を検討する際には、経営上の目的だけでなく、会社・株主双方の課税関係を確認する必要があります。

この記事でわかること

  • 組織再編の意味と主な目的
  • 合併・会社分割・株式交換・株式移転の違い
  • 適格組織再編と非適格組織再編の基本
  • 組織再編と株価評価の関係
  • 令和8年の非上場株式評価の改正と11月の最新動向

第1章 組織再編とは何か

(1)組織再編を行う主な目的

目的 組織再編の活用例
経営の効率化 2つの会社を合併して管理部門を集約する
事業の分離 特定の事業を会社分割で別会社に移す
グループ経営 株式交換により完全親子会社関係を構築する
持株会社化 株式移転により新たな持株会社を設立する
事業承継 後継者に引き継ぐ事業と保有資産を整理する
M&A 他社の事業や株式を取得し、経営体制を再構築する

ただし、事業を分けることで管理コストが増える場合もあるため、組織再編によって経営上のメリットが生じるかを事前に確認することが重要です。

(2)組織再編とM&Aの違い

M&Aは、一般に企業の合併や買収を意味します。

一方、組織再編は、合併や会社分割、株式交換などの制度を利用して、会社の組織や事業、株式の保有関係を変更することを指します。

第2章 組織再編で税務上確認すべきポイント

以下は、法令上の要件と実務上の確認事項を整理したものであり、国税当局が公表した重点調査項目を示すものではありません。

(1)組織再編の前後で何が変わったのか

まず、再編前後の株主構成、事業内容、資産・負債の移転状況などが重要です。

例えば、完全親子会社間の合併として適格判定を行う場合には、再編時点の資本関係や、その後の関係について要件に応じた確認が必要です。

(2)適格組織再編の要件を満たしているか

適格組織再編に該当するかどうかは、取引の名称だけでは決まりません。

当事者間の資本関係、交付する対価、事業の継続、従業者の引継ぎなど、組織再編の種類に応じた要件を確認します。

(3)移転資産の価額と税務処理

適格組織再編で帳簿価額を引き継ぐ場合も、引継対象資産や税務上の帳簿価額の整理が必要です。

(4)組織再編の目的と実態

私が大阪国税局で調査事務に従事していた経験から言えば、書類上の形式だけでなく、取引前後の経済的な実態を確認する視点は重要です。

組織再編についても、再編前後の株主構成、事業内容、資産移転の状況、資金の流れなどを整理し、会社法上の手続と税務処理が整合しているかを説明できるようにすることが実務上の対策となります。

なお、税務上の判断に当たっては、税負担が軽減されるという理由だけで直ちに問題となるわけではなく、法令上の要件や個別の事実関係を踏まえた検討が必要です。

組織再編の際に個人と法人の間で資産を移転する場合は、自分の会社へ不動産を安く売るとどうなる?も参考になります。ただし、個人と法人間の売買と会社分割は別の取引類型です。

第3章 合併とは何か

(1)合併は複数の会社を1つにまとめる方法

合併とは、複数の会社を1つの会社にまとめる組織再編です。

会社法上、合併には吸収合併と新設合併があります。

吸収合併は、一方の会社が存続し、もう一方の会社が消滅する方法です。

例えば、A社がB社を吸収合併する場合、A社が存続し、B社は消滅します。B社の権利義務は、会社法上の合併の効果としてA社に承継されます。

新設合併は、複数の会社が消滅し、新たに設立する会社が権利義務を承継する方法です。

比較項目 吸収合併 新設合併
合併後の会社 既存会社が存続 新しい会社を設立
合併前の会社 一部が消滅 合併する会社が消滅
主な特徴 既存の会社を活用 新会社へ事業等を集約

(2)合併のメリットと注意点

合併には、管理業務の集約、経営資源の一体化、重複事業の整理などのメリットが考えられます。

一方、契約、従業員、許認可、債務などに関する確認も必要です。

合併に伴い、消滅会社の権利義務は原則として承継されますが、許認可等については個別法令による取扱いを確認する必要があります。

特に、適格合併に該当することと、被合併法人の繰越欠損金を制限なく利用できることは同じではありません。

繰越欠損金には別途引継制限や利用制限が設けられているため、注意が必要です。

合併の会社法上の手続や税務上の取扱いの詳細は、合併とは?|吸収合併・新設合併の違いと会社法の手続・税務上の注意点を解説もあわせてご覧ください。

第4章 会社分割とは何か

(1)会社分割は事業を別会社に承継させる方法

会社分割とは、会社が事業に関して有する権利義務の全部又は一部を、他の会社に承継させる方法です。

会社法上、吸収分割と新設分割があります。

吸収分割は既存の会社に事業を承継させる方法、新設分割は新たに設立する会社に事業を承継させる方法です。

例えば、A社が飲食事業と不動産賃貸事業を営んでいる場合、不動産賃貸事業を別会社に分離するために会社分割を利用することが考えられます。

(2)分社型分割と分割型分割の違い

税務上、会社分割は、分社型分割と分割型分割に区分されます。

分社型分割は、分割により承継会社の株式等が分割会社に交付される類型です。

これに対し、分割型分割は、承継会社の株式等が分割会社の株主に交付される類型であり、税法上は一定のみなし交付等を含む取扱いがあります。

両者は、承継会社の株式等が誰に帰属するかという点で違いがあります。

この区分は、法人税や株主課税を検討するうえで重要です。

(3)会社分割と事業譲渡の違い

しかし、会社分割は会社法に基づく組織再編であり、事業譲渡は契約により事業を移転する取引です。

事業譲渡では、資産や契約上の地位などの移転について、個別の手続や相手方の承諾が必要となる場合があります。

一方、会社分割では、法令所定の手続を経て、分割契約等に定める権利義務が承継されます。

会社分割と事業譲渡では、法人税だけでなく、消費税や登録免許税などの取扱いも異なるため、事前の比較が必要です。

会社分割を用いて不動産を切り出し、株式を譲渡する場合の論点は、不動産M&Aと会社分割|不動産の切り出し・株式譲渡を元国税調査官が解説もあわせてご覧ください。

第5章 株式交換・株式移転とは何か

(1)株式交換は完全親子会社関係を構築する方法

株式交換とは、株式会社の発行済株式を他の株式会社又は合同会社に取得させ、完全親子会社関係を構築する方法です。

例えば、A社を親会社、B社を完全子会社とする株式交換では、B社の株式がA社に集約されます。

この場合、B社自体は消滅せず、A社の完全子会社として存続します。

(2)株式移転は新しい持株会社を設立する方法

株式移転とは、1社又は複数の株式会社が、その発行済株式を新設する株式会社に取得させる方法です。

例えば、A社とB社の上に新しい持株会社H社を設立し、A社とB社をH社の完全子会社とするような組織再編が考えられます。

(3)株式交換と株式移転の違い

比較項目 株式交換 株式移転
完全親会社 既存の会社 新設する株式会社
完全子会社 存続する 存続する
主な利用例 既存の企業グループへの組入れ 持株会社の新設

第6章 その他の組織再編にはどのような方法があるか

(1)株式交付

株式交付は、株式会社が他の株式会社を子会社とするため、その会社の株式を譲り受け、対価として自社の株式を交付する制度です。

株式交換とは異なり、完全子会社とすることまでは求められない仕組みです。

税務上は、一定の要件を満たす場合に、株式を譲渡した株主について譲渡損益の課税を繰り延べる特例があります。

ただし、株式交付を利用すれば無条件に課税が繰り延べられるわけではありません。

例えば、個人株主に係る特例では、交付を受ける対価の価額のうち株式交付親会社の株式が占める割合が80%以上であることなどが要件となります。

また、株式交付直後の親会社が一定の同族会社に該当する場合には、特例の対象から除外されます。

金銭等を併せて受領する場合には、課税繰延べの対象となる部分についても注意が必要です。

(2)現物出資

現物出資とは、金銭以外の資産を出資することです。

税務上は、現物出資の内容に応じて、適格要件や資産移転に伴う譲渡損益の取扱いを検討します。

(3)現物分配

現物分配とは、法人が株主に対して金銭以外の資産を分配することです。

法人税法上、一定の現物分配については適格現物分配として取り扱われますが、分配する法人や受領する法人の関係などについて要件が設けられています。

第7章 適格組織再編と非適格組織再編の違い

(1)適格組織再編では課税が繰り延べられる

組織再編税制を理解するうえで、適格組織再編と非適格組織再編の区分は重要です。

法人が保有する資産を移転する場合、原則として、その資産の譲渡損益が課税上の問題となります。

しかし、組織再編の前後で移転資産に対する支配が継続するなど、一定の要件を満たす場合には、税務上の帳簿価額による引継ぎが認められ、譲渡損益の課税が繰り延べられる仕組みがあります。

一方、非適格組織再編の場合には、原則として時価を基礎とした譲渡損益の計上などが問題となります。

ただし、税務上の仕組みは、組織再編の種類によって異なります。

合併・会社分割・現物出資などでは、法人から他の法人へ移転する資産の譲渡損益が問題となります。

これに対して、株式交換・株式移転では、完全子法人が保有する資産そのものが親会社に移転するわけではありません。

しかし、非適格株式交換等に該当する場合には、法人税法第62条の9に基づき、一定の要件の下で完全子法人が保有する時価評価資産について評価損益を認識することがあります。

したがって、「非適格組織再編では移転資産の譲渡益が課税される」という説明を、すべての組織再編にそのまま当てはめることは適切ではありません。

また、法人側の適格判定と、株主側の株式譲渡損益の課税繰延べは、区別して検討する必要があります。

(2)簿価1,000万円、時価1,600万円の土地を移転する例

例えば、A社が不動産賃貸事業に使用している土地について、税務上の帳簿価額が1,000万円、時価が1,600万円であるとします。

この土地を含む不動産賃貸事業を、A社からB社へ会社分割により承継させる場合を考えます。

区分 基本的な税務上の考え方
適格会社分割 原則として税務上の帳簿価額を引き継ぎ、土地の譲渡損益について課税を繰り延べる
非適格会社分割 原則として時価を基礎に土地の譲渡損益を認識する

例えば、非適格分社型分割により、不動産賃貸事業に使用している土地を時価1,600万円で移転したものとして取り扱い、他の税務上の調整を考慮しない場合、A社において次の譲渡益が生じます。

1,600万円(時価)-1,000万円(税務上の帳簿価額)=600万円(譲渡益)

一方、適格会社分割で帳簿価額を引き継ぐ場合には、この600万円の含み益に対する課税は原則として繰り延べられます。

ただし、実際の税務処理は、分社型分割・分割型分割の区分、移転する資産・負債の内容、対価の交付方法などによって異なります。

この計算例は、土地を含む不動産賃貸事業が他社に移転する会社分割を想定したものであり、株式交換・株式移転に伴う時価評価課税の計算例ではありません。

(3)適格要件は資本関係などによって異なる

適格組織再編に該当するかは、会社の資本関係や事業の状況などによって判断します。

代表的な区分には、完全支配関係のある法人間の再編、支配関係のある法人間の再編、共同で事業を行うための再編などがあります。

また、金銭等の交付の有無、株式の継続保有、事業や従業者の引継ぎなどが問題となる場合もあります。

適格・非適格の詳細な要件については、次回の記事で解説します。

適格要件と課税繰延べの仕組みの詳細は、適格組織再編と非適格組織再編の違い|課税繰延べと要件を税理士が解説もあわせてご覧ください。

第8章 組織再編と株価評価の関係|令和8年改正と今後の見直し

(1)組織再編を行うと株価評価が問題になる場合がある

組織再編では、資産や負債の移転だけでなく、株式の保有関係が変わることがあります。

例えば、株式交換により完全親子会社関係を構築する場合には、株主が保有する株式の交換条件を検討する必要があります。

さらに、同族会社の組織再編と事業承継を組み合わせる場合には、組織再編後の株式を贈与・相続する際の評価も問題となります。

ただし、ここで注意したいのは、法人税における組織再編の課税関係と、相続税・贈与税における非上場株式の評価は別の制度であることです。

組織再編税制で資産を帳簿価額により引き継ぐからといって、相続税・贈与税の株価評価も単純に帳簿価額で行うわけではありません。

事業承継のために不動産の法人化を検討する場合の論点は、不動産オーナーの法人化と相続税対策でも解説しています。

(2)相続税・贈与税における非上場株式の評価方法

非上場株式の相続税・贈与税評価では、株主の区分や会社の規模等に応じて、主に次の評価方式が用いられています。

評価方式 基本的な考え方
類似業種比準方式 類似業種の上場企業の株価を基礎に、配当・利益・純資産などを比較する
純資産価額方式 会社の資産・負債を所定の方法で評価し、純資産を基礎に算定する
併用方式 類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせる
配当還元方式 一定の少数株主等について、配当を基礎に評価する

現行制度では、会社規模や株主構成だけでなく、株式等保有特定会社、土地保有特定会社などの区分にも注意が必要です。

詳細は国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」に示されています。

(3)令和8年4月の改正で法人税額等相当額が37%から38%に変更

令和8年には、非上場株式の評価に関する改正が実施されています。

令和8年3月25日付の財産評価基本通達の一部改正により、純資産価額方式における「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」の算定割合が、37%から38%に変更されました。

これは、令和7年度税制改正で創設された防衛特別法人税を反映した改正です。

適用対象は、令和8年4月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した取引相場のない株式等です。

例えば、純資産価額方式において、相続税評価額による純資産価額が帳簿価額による純資産価額を1,000万円上回る場合を考えます。

区分 評価差額に対する控除額
改正前:37% 1,000万円×37%=370万円
改正後:38% 1,000万円×38%=380万円
差額 10万円

他の条件が同じであれば、控除額が10万円増加し、会社全体の純資産価額の計算上、評価額は10万円低下する方向に作用します。

ただし、これは1株当たりの評価額が10万円低下するという意味ではありません。実際の1株当たりの評価額は、発行済株式数などを踏まえて計算します。

また、評価差額が生じない場合や、別の評価方式を適用する場合などには、改正による影響が生じないこともあります。

(4)非上場株式の評価方式の見直しと令和8年11月の最新動向

令和8年4月に実施された純資産価額方式の改正とは別に、取引相場のない株式の評価方式全体についても見直しが検討されています。

国税庁は、令和8年4月20日から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催しました。同年9月16日の第6回会議では、企業の純資産と収益力を組み合わせた「残余利益方式」による評価額の試算などが示され、現行の類似業種比準方式などを見直す方向で議論が行われていました。

令和8年10月6日、片山さつき財務大臣は記者会見で、非上場株式の評価方法について、見直しの結論や方向性は決まっていないと説明しました。

さらに、同月29日には、自民党の日本成長戦略本部が、国税庁の現行案を容認せず、これを前提としない白地からの議論を求める緊急決議を取りまとめました。

同年11月4日には、片山財務大臣が衆議院財務金融委員会において、国税庁の有識者会議での議論を一旦停止し、与党税制調査会で改めて検討する考えを示したと報じられています。

したがって、令和8年11月5日現在、残余利益方式への一本化や類似業種比準方式の廃止が正式に決定したわけではありません。 また、評価制度の見直し自体が正式に撤回されたわけでもありません。

今後、どのような評価方式が採用されるか、いつから適用されるかについては、令和9年度税制改正大綱に向けた議論など、今後の動向を確認する必要があります。

なお、今回の議論の対象は、相続税・贈与税における非上場株式の評価制度です。法人税上の組織再編時の株式時価評価とは区別する必要があります。

(5)組織再編を検討する会社への影響

非上場株式の評価方法が将来見直された場合には、事業承継や同族会社間の株式移転などに影響する可能性があります。

なお、令和8年9月16日の第6回有識者会議資料では、組織再編直後の会社などについて、残余利益方式による評価が技術的に困難な会社として、別の評価方法を用いる案も示されていました。

同年11月4日の財務大臣答弁に関する報道を踏まえると、こうした個別の評価方法を含め、制度全体の見直し方針は改めて検討されることになります。

事業承継を予定している経営者にとっては、現行制度による株価評価を把握するとともに、今後の改正動向を確認することが重要です。

非上場株式の評価方法の見直しが自社株や事業承継に与える影響は、非上場株式の評価方法が変わる?|自社株と事業承継への影響を税理士が解説もあわせてご覧ください。

第9章 組織再編を検討する際の実務上の注意点

(1)会社法・税務・会計を分けて検討する

例えば、吸収合併では合併契約の締結、株主総会の承認、債権者保護手続、登記などが問題となります。

また、会社法上の組織再編が有効に成立することと、税務上の適格要件を満たすことは同じではありません。

(2)繰越欠損金や含み損益を確認する

組織再編を行う会社に繰越欠損金がある場合には、その引継ぎや利用制限を確認する必要があります。

特に、再編直前に株式を取得して完全子会社化するような場合には、資本関係の形成時期や再編の目的も含めて、慎重な検討が必要です。

(3)株主個人の課税も確認する

組織再編では会社だけでなく、株主にも課税関係が生じる場合があります。

例えば、合併などの対価として金銭等を受領する場合には、株式譲渡所得やみなし配当が問題となることがあります。

また、親族間の事業承継を伴う場合には、相続税や贈与税への影響も検討する必要があります。

M&Aによる株式売却では、譲渡所得や追加的な税負担が問題となる場合があります。M&Aの売却益とミニマムタックスもあわせてご覧ください。

(4)組織再編の目的を明確にする

組織再編を行う際には、なぜ合併や会社分割などを選択するのか、経営上の目的を整理しておくことが重要です。

よくある質問

Q1. 組織再編とはどのような意味ですか?

組織再編とは、会社の事業や資産、株式の保有関係などを組み替えることです。代表的な方法には合併、会社分割、株式交換、株式移転などがあります。

Q2. 合併と会社分割は何が違いますか?

合併は複数の会社を1つにまとめる方法です。一方、会社分割は、会社が事業に関して有する権利義務の全部又は一部を他の会社に承継させる方法です。

Q3. 株式交換をすると会社は消滅しますか?

株式交換では、対象会社自体は消滅せず、完全子会社として存続します。会社を統合する合併とは異なります。

Q4. 適格組織再編であれば税金はかかりませんか?

適格組織再編では、一定の資産移転に伴う譲渡損益について課税の繰延べが認められます。ただし、非課税になることと同じではなく、繰越欠損金や株主課税など別の論点も確認する必要があります。

Q5. 令和8年に非上場株式の評価方法は改正されましたか?

令和8年4月1日以後の相続・贈与等による取得について、純資産価額方式の法人税額等相当額の算定割合が37%から38%に変更されました。一方、評価方式全体の抜本的な見直しは、令和8年11月5日現在、正式に決定していません。

Q6. 組織再編をすれば株価を引き下げられますか?

組織再編によって事業内容や株主構成などが変化し、株価評価に影響する場合はあります。ただし、組織再編を行えば株価が下がるとは限りません。相続税・贈与税の評価方法や税務上の要件を踏まえた検討が必要です。

まとめ:組織再編は目的と税務上の影響を踏まえて選択する

令和8年には非上場株式の評価に関する一部改正が実施されました。一方、評価方式全体の見直しについては、国税庁の有識者会議における検討から、与党税制調査会を中心とした議論へと進め方が変わる動きがみられています。

組織再編を検討する場合には、現行制度と検討段階の制度を区別しながら、経営上の目的と税務上の影響を総合的に判断することが重要です。

次回は、適格組織再編と非適格組織再編の違いについて、具体例を用いて詳しく解説します。

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引用・参考文献

この記事を書いた人

市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。