税務調査で在庫の計上漏れを指摘されたら?|棚卸・原価・重加算税を元国税調査官が解説
著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)
「税務調査で、年末の在庫が少なすぎると言われた」
「倉庫や外部保管分を棚卸に入れておらず、所得が少なくなっていると指摘された」
「在庫の数え間違いなのに、重加算税まで課されるのか不安」
物販、買取、製造、建設など在庫を持つ事業では、期末の棚卸資産が所得計算に直接影響します。売れ残った商品を期末在庫に入れず、仕入れた金額をそのまま売上原価にしていると、売上原価が過大となり、その年分・事業年度の所得が少なく計算されることがあります。
私は大阪国税局で個人課税や富裕層に対する調査事務に従事した後、現在は税理士として税務調査対応にも力を入れています。この記事では、在庫の計上漏れを指摘された場合に、調査官がどこを確認するのか、棚卸・売上原価・評価方法をどう整理するのか、重加算税や消費税までどのように分けて考えるのかを解説します。
結論:在庫漏れは「数量・単価・所有関係・意図」を分けて確認する
税務調査で期末在庫の計上漏れを指摘された場合、まず確認するのは、期末時点で実際に何を所有していたのか、その数量はいくつか、どの評価方法でいくらになるのかです。「棚卸表に載っていない」という一点だけで結論を出すのではなく、仕入記録、販売記録、倉庫資料、翌期の売上などから在庫の実態を復元します。
在庫の計上漏れがあると、その年分・事業年度の売上原価が過大になり、所得が過少になる方向に働きます。ただし、単純な数え間違いや転記漏れと、在庫の存在を認識しながら棚卸表や帳簿から意図的に外した場合は同じではありません。重加算税は、在庫差額の大きさだけではなく、隠蔽・仮装と評価できる事実があるかを分けて確認します。
また、所得税・法人税の期末棚卸と、消費税の仕入税額控除は同じ仕組みではありません。所得税・法人税で期末在庫を増額したからといって、消費税でも同額をそのまま調整するとは限りません。
この記事でわかること
- 期末在庫の計上漏れが所得を少なくする仕組み
- 調査官が棚卸表・仕入・販売・倉庫資料をどう確認するか
- 外部倉庫や委託先にある商品をどう考えるか
- 在庫評価の方法と、評価額を下げられる場合の考え方
- 棚卸資産の除外と重加算税、消費税をどう区別するか
第1章 期末在庫の計上漏れは、なぜ所得を少なくするのか
(1)売上原価は期末棚卸高を差し引いて計算する
商品販売を例にすると、売上原価は一般に「期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高」で計算します。期末に売れ残っている商品は、まだ当期の売上に対応して消費された原価ではないため、棚卸資産として翌期へ繰り越します。
例:期首在庫200万円、当期仕入1,000万円の場合
正しい期末在庫が300万円なら、売上原価は200万円+1,000万円-300万円=900万円です。
期末在庫を100万円と誤って申告すると、売上原価は1,100万円となり、所得が200万円少なく計算されます。
(2)「仕入れた金額=その年の原価」ではない
販売用の商品を仕入れた場合、その商品が期末まで売れ残っていれば、仕入代金のうちその在庫に対応する部分は期末棚卸資産として残ります。所得税法第47条、法人税法第29条はいずれも、期末に有する棚卸資産の評価額を売上原価等の計算の基礎とする仕組みを定めています。
(3)翌年・翌期にもつながる
期末棚卸高は、通常、翌年・翌期の期首棚卸高へつながります。このため、ある年の期末在庫だけを増額して終わりではありません。翌年の販売状況や期末在庫までつなげて再計算しないと、同じ在庫について所得への影響を二重に調整するおそれがあります。
第2章 調査官が重点的に確認するポイント
(1)棚卸表と実際の商品が一致するか
在庫を持つ事業では、期末の棚卸表が基本資料になります。商品名、品番、数量、単価、保管場所などが記録されているかを確認し、必要に応じて店舗・倉庫・商品管理システムの記録と照合します。調査時点の現物だけでは過年度末の数量は分からないため、仕入と販売の履歴をつないで確認することが重要です。
(2)仕入数量と販売数量から在庫が説明できるか
期首数量、当期仕入数量、販売数量、廃棄・返品等をつなぐと、理論上の期末数量を確認できます。帳簿上の棚卸数量だけが少ない場合には、仕入先の請求書、販売明細、商品管理データなどから差額の原因を確認します。
(3)店舗以外の保管場所がないか
店舗の商品だけを数え、別倉庫、事務所、外部フルフィルメントセンター、委託先などにある商品を確認していないケースがあります。所在場所だけで期末在庫かどうかを決めるのではなく、期末時点の契約関係や所有関係、引渡しの状況を確認します。
(4)翌期の販売記録とつながるか
期末在庫に載っていない商品が翌年・翌期の早い時期に販売されていれば、期末時点でその商品を保有していた可能性を確認する材料になります。逆に、期末前にすでに販売・引渡しが完了していた商品であれば、単に倉庫内に現物があったかだけでは判定できません。
(5)数量だけでなく単価も確認する
数量が合っていても、評価単価が選定した方法と一致していなければ期末棚卸高は変わります。仕入単価の更新、送料・購入手数料等の取得価額への反映、評価方法の届出の有無などを確認します。
私が大阪国税局で調査事務に従事していた経験から言えば、在庫の論点では「棚卸表だけを見る」のではなく、仕入れ、保管、販売という商品の動きを時系列でつなぐことが実務の分かれ目です。棚卸表の数量と翌期の販売記録が合わない場合には、その差額がどこで生じたのかを一つずつ確認していきます。
物販・買取業の在庫管理については、買取専門店の確定申告と必要な手続きでも年末棚卸の実務を解説しています。
第3章 どこにある商品まで期末在庫に含めるのか
(1)店舗に置いてある商品だけとは限らない
期末棚卸では、店頭の商品だけを数えればよいとは限りません。自社倉庫、外部倉庫、ECモールの物流拠点、加工や修理のために預けている商品など、期末時点で自分または自社が所有する棚卸資産がないかを確認します。
(2)他人の商品を預かっている場合は区別する
倉庫や店舗に現物があっても、単なる預かり品や他人が所有する委託商品であれば、自分の棚卸資産とは限りません。反対に、現物が手元になくても、自分が所有する商品を外部へ保管・委託している場合があります。現物の所在地と、税務上の棚卸資産の帰属は分けて整理します。
(3)配送中・仕入先保管中の商品は契約内容を確認する
期末前後に仕入れた商品や配送途中の商品は、請求書の日付や支払日だけで判断せず、いつ引渡しが行われ、期末時点で誰に帰属していたかを確認します。仕入先に取り置いてもらっている場合も、契約や取引条件によって結論が変わり得ます。
なお、製造業や建設業では、完成した商品・製品だけでなく、期末時点の仕掛品や未成工事支出金等も確認する必要があります。材料費、外注費、労務費などが適切に原価へ集計されているか、期末時点で未完成の製品・工事に対応する原価が正しく処理されているかを確認します。また、請負については原則として引渡し等の日に収益を計上する一方、一定の場合には履行義務の進捗度に応じて収益を計上する取扱いも認められているため、採用している収益・費用の計上基準も確認する必要があります。
トレカやEC販売のように商品点数が多い事業では、販売プラットフォームのデータと在庫管理をつなぐことが重要です。トレカ・ポケカ売却の確定申告と税務調査でも、販売目的で保有する商品の年末在庫を取り上げています。
第4章 在庫はいくらで評価するのか
(1)評価方法を選定しているか確認する
所得税法・法人税法では、棚卸資産について税法上認められた評価方法により期末評価額を計算します。個人・法人とも、評価方法を選定して届け出ていない場合の法定評価方法は、原則として最終仕入原価法です。
最終仕入原価法は、同じ種類等の商品について、期末から直近の日に取得した1単位当たりの取得価額を用いて評価する方法です。実際の事業で先入先出法、総平均法などを届け出ている場合は、その方法に従って計算します。
(2)取得価額は商品代だけとは限らない
購入した棚卸資産の取得価額には、購入代価のほか、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税など、購入のために要した一定の費用や、販売の用に供するために直接要した費用が含まれることがあります。単価を復元するときは、仕入先の請求額だけでなく付随費用も確認します。
(3)売れないからといって任意にゼロ評価しない
長期間売れていない商品や相場が下落した商品であっても、その理由だけで任意に評価額をゼロにできるとは限りません。個人では、破損や棚ざらし、流行遅れなどにより通常の販売価額で販売できないなど一定の場合について、国税庁の申告手引きに処分可能価額で評価する取扱いが示されています。
なお、個人事業者が低価法を選定できるのは、その年分の所得税について青色申告の承認を受けている場合です。低価法を適用する場合は、評価方法の選定・届出の状況も確認します。
法人でも、棚卸資産の評価損を損金算入できる場面には法定の要件があります。法人税法第33条第2項・法人税法施行令第68条では、災害による著しい損傷、著しい陳腐化その他一定の事実が生じた場合の評価損について定めています。単なる値下がりやモデルチェンジだけでは足りない場合があるため、「売れそうにないから低くする」という処理と、税法上認められる評価損は区別します。
また、法人が棚卸資産の評価方法として低価法を選定している場合には、選定した原価法による評価額と期末時価を比較して、低い価額で評価します。法人税基本通達5-2-11では、この低価法における期末時価について、原則として正味売却価額を基礎とする考え方が示されています。これは、著しい陳腐化などの特別な事実に基づき法人税法第33条の評価損を計上する制度とは別です。適用している評価方法に基づく低価法と、特別な事実に基づく評価損を混同しないことが重要です。
第5章 個人事業と法人で共通する注意点と、年分・事業年度のつながり
(1)個人事業は12月31日時点の棚卸資産を確認する
個人事業では、原則として12月31日に有する棚卸資産の評価額が、その年の事業所得の必要経費計算に影響します。仕入れた商品が年末に残っている場合、その取得価額等を棚卸資産として評価し、売上原価へ反映します。
(2)法人は事業年度終了時点で確認する
法人では、事業年度終了時に有する棚卸資産を法人税法第29条に基づいて評価します。決算日が12月31日とは限らないため、自社の事業年度末を基準に数量と評価額を確認します。
(3)1年だけ直せばよいとは限らない
在庫漏れが複数年続いている場合、各年・各事業年度の期末棚卸高と翌期首棚卸高をつなげて再計算します。例えば、前年末に漏れていた在庫が翌年に販売されている場合、前年の所得を増やす調整と、翌年の売上原価への影響を合わせて確認します。
修正対象が複数年に及ぶときは、単純に「各年の漏れた在庫額を全部所得に足す」という計算にはなりません。商品がいつ売れたか、翌期末にも残っているかまで確認して年分・事業年度ごとに整理します。
第6章 在庫の計上漏れと重加算税はどう区別するか
(1)法人税の事務運営指針は「棚卸資産の除外」を例示している
法人税の重加算税に関する事務運営指針では、帳簿書類の作成や記録をせずに「棚卸資産の除外」をしていることが、隠蔽・仮装に該当する例として明示されています。実在する在庫を認識しながら、所得を少なくする目的で棚卸表や帳簿から外していたような事実があれば、重加算税の重要な論点になります。
(2)単純な数量ミスや転記漏れとは分ける
棚卸数量を数え間違えた、倉庫分を集計表へ転記し忘れた、商品コードの統合で二重計上を避ける過程で一部を落とした、といった事情がある場合には、その原因を客観資料で確認します。在庫差額が発生したという結果だけで、隠蔽・仮装があったことになるわけではありません。
(3)「在庫の除外」と「評価額の誤り」も同じではない
法人税の同じ事務運営指針では、相手方との通謀や証憑の破棄・隠匿・改ざん等によらない「棚卸資産の評価換えによる過少評価」は、帳簿書類の隠匿・虚偽記載等に該当しない例として示されています。つまり、在庫そのものを帳簿から外す行為と、評価方法の誤りによる過少評価は分けて検討します。
(4)個人も国税通則法第68条の隠蔽・仮装が基準になる
個人事業者についても、重加算税の法的な基準は国税通則法第68条の隠蔽・仮装です。個人の事務運営指針では、二重帳簿、帳簿書類の破棄・隠匿、改ざん・虚偽記載などが例示されています。在庫漏れの原因、棚卸表の作成経緯、調査時の説明などを総合して判断します。
過少申告型の重加算税は原則35%、無申告型は原則40%です。重加算税の要件については、税務調査で「重加算税になる」と言われたらでも詳しく解説しています。
第7章 消費税は期末在庫と同じ考え方ではない
(1)商品を仕入れた課税期間の課税仕入れが基本
消費税の本則課税では、国内で行う販売用商品の仕入れなど、課税仕入れに該当する取引については、原則としてその課税仕入れを行った課税期間に仕入税額控除を検討します。所得税・法人税のように、商品が期末に売れ残っていることだけを理由として、仕入税額控除を翌期へ繰り越す仕組みではありません。ただし、土地の購入などの非課税取引、国外取引、帳簿・請求書等の保存要件などは別途確認が必要です。
なお、建設業で未成工事支出金として経理した課税仕入れについては、原則として資産の引渡しを受けた日や外注先の役務提供が完了した日の属する課税期間で仕入税額控除を行いますが、継続適用を条件として、請負工事の目的物を引き渡した日の属する課税期間の課税仕入れとして処理することも認められています。
(2)所得税・法人税の在庫修正だけで消費税も同額動くとは限らない
税務調査で期末棚卸高を200万円増額したとしても、その200万円を理由に消費税の仕入税額控除をそのまま200万円分取り消す、という関係ではありません。消費税では、実際の課税仕入れの時期、帳簿・請求書等の保存要件、課税方式などを別に確認します。
(3)課税事業者・免税事業者の切替時には在庫調整がある
例外として、免税事業者から課税事業者になった場合や、課税事業者から免税事業者になる場合には、期首・期末に有する棚卸資産について仕入控除税額を調整する制度があります。在庫が消費税に無関係という意味ではなく、通常の期末棚卸と消費税法上の棚卸資産調整を分けて考える必要があります。なお、課税事業者から免税事業者になる場合でも、直前の課税期間に簡易課税制度を適用していたときは調整不要とされるなど、課税方式等によって適用関係が異なります。
第8章 在庫漏れを指摘されたら、既存資料から期末在庫を復元する
(1)商品ごとに数量の流れを作る
まず、期首数量、仕入数量、販売数量、返品、廃棄、期末数量を商品・品番ごとに整理します。商品点数が多い場合は、金額が大きい商品や調査官が問題にしている商品から確認し、在庫管理システムのデータと帳簿を突合します。
(2)保管場所ごとに漏れを確認する
店舗、倉庫、事務所、外部物流拠点、委託先など、期末時点の保管場所を一覧化します。棚卸表に保管場所の区分がない場合は、倉庫会社の明細、ECモールの在庫レポート、配送記録などを根拠に復元します。
(3)翌期の販売データを使って裏付ける
期末直後に販売された商品の販売記録は、期末時点の在庫を復元する材料になります。ただし、販売記録だけで数量を決めるのではなく、期末前後の仕入れや返品等も合わせて確認します。
(4)後から当時の棚卸表を装って作らない
棚卸表が残っていない場合に、現存する資料から復元表を作成すること自体は事実整理の方法になります。その場合は、作成日、根拠資料、計算方法を明らかにし、調査対応のために後日作成した資料であることが分かるようにします。
第9章 修正申告をする前に数量・単価・翌期への影響を確認する
(1)「在庫が少ない」という指摘を具体化する
調査官から在庫漏れを指摘された場合には、対象商品、数量、評価単価、対象年分・事業年度、計算根拠を確認します。数量は合っているが単価だけが違うのか、倉庫一か所分が丸ごと漏れているのかで、修正内容も重加算税の検討も変わります。
(2)翌年・翌期への連動を再計算する
修正後の期末棚卸高が翌年・翌期の期首棚卸高へどうつながるかを確認します。複数年の調査では、各年の期首・仕入・期末を一覧表にして、同じ在庫の影響を重複して所得へ加算していないかを確認することが重要です。
また、前期末在庫の増額が翌期首在庫へ連動し、翌期の申告税額が過大になる場合には、翌期について更正の請求等による是正が必要かも確認します。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年です。
(3)重加算税の根拠を別に確認する
在庫差額の計算に納得できたとしても、それだけで重加算税の要件まで認めることにはなりません。税務署が、どの行為を隠蔽・仮装と評価しているのか、棚卸表の破棄・改ざんや意図的な除外など、具体的な根拠を確認します。
(4)修正申告の勧奨に応じるかは任意
国税庁の税務調査手続FAQでは、調査結果の説明後に修正申告を勧められた場合でも、応じるかどうかは納税者の任意の判断とされています。修正申告を提出すると、その修正申告自体について不服申立てはできません。数量・単価・年分・重加算税の根拠を整理した上で判断します。
税務調査前後の修正申告と加算税の関係は、税務調査前に修正申告した方がいい?で詳しく整理しています。
よくある質問
Q1. 在庫を数え忘れただけでも、重加算税になりますか?
在庫の計上漏れがあることだけで重加算税が決まるわけではありません。重加算税は、課税標準等や税額等の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて申告した場合などに問題となります。単純な数え間違い、転記漏れ、意図的な棚卸資産の除外を分けて確認します。
Q2. 倉庫や外部のフルフィルメントセンターにある商品も在庫ですか?
期末時点で自分または自社が所有する棚卸資産であれば、店舗内にないという理由だけで対象外になるとは限りません。外部倉庫、委託先、配送途中の商品などは、契約内容や所有権・引渡しの状況を確認して期末在庫に含めるか判断します。
Q3. 仕入れた商品は、その年や事業年度にすべて経費にできますか?
販売用の商品は、仕入れた時点で仕入額のすべてが当期の売上原価になるとは限りません。期末に売れ残っている商品は棚卸資産として評価し、期首棚卸高、当期仕入高、期末棚卸高を通じて売上原価を計算します。
Q4. 売れ残って価値が下がった在庫をゼロ円で評価できますか?
売れにくい、相場が下がったという理由だけで任意にゼロ円評価できるとは限りません。選定した評価方法や、破損・著しい陳腐化など税法上認められる評価減の要件を確認する必要があります。個人と法人でも適用する規定が異なるため、事実関係を整理して判断します。
Q5. 期末在庫を修正すると、翌年や翌期にも影響しますか?
影響することがあります。期末棚卸高は翌年・翌期の期首棚卸高につながるため、ある年だけ在庫を増額して終わりではありません。翌年以降の売上原価や期末在庫もつなげて再計算し、同じ在庫について所得が重複して調整されないよう確認する必要があります。
Q6. 税務調査で在庫漏れを指摘されたら、すぐ修正申告した方がよいですか?
まず、どの商品が、何個、いくらの評価額で漏れていると認定されているのかを確認します。修正申告の勧奨に応じるかは納税者の任意です。数量、単価、評価方法、翌年以降への影響、重加算税の根拠まで整理してから判断することが重要です。
まとめ:在庫漏れは「存在」「評価」「意図」を分けて整理する
税務調査で期末在庫の計上漏れを指摘されたときは、まず期末時点で実際に所有していた商品を特定し、数量と評価単価を確認します。店舗だけでなく外部倉庫や委託先等も含め、仕入・販売・保管の記録を時系列でつなぐことが重要です。
その上で、単純な数え間違いなのか、評価方法の誤りなのか、実在する棚卸資産を意図的に除外したのかを分けます。所得税・法人税の期末棚卸と消費税の仕入税額控除は仕組みが異なるため、税目ごとに影響を整理し、翌年・翌期への連動まで確認してから修正申告を判断してください。
在庫の計上漏れや重加算税を含め、税務調査の対応全体について確認したい方は、「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもあわせてご覧ください。
引用・参考文献
- e-Gov法令検索「所得税法」第47条(棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」第99条・第100条・第102条・第103条・第104条
- e-Gov法令検索「法人税法」第29条(棚卸資産の評価)・第33条(資産の評価損)
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」第28条・第31条・第32条・第68条
- 国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」
- 国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」(令和8年6月30日付一部改正分まで更新)
- 国税庁「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
- 国税庁 No.6355「課税売上げと課税仕入れ」
- 国税庁 No.6451「仕入税額控除の対象となるもの」
- 国税庁 No.6491「免税事業者が課税事業者となった場合等の棚卸資産に係る仕入控除税額の調整」
- 国税庁「法人税基本通達 第5章第2節第2款 低価法」5-2-9~5-2-11
- 国税庁「大規模法人における税務上の要注意項目確認表【解説編】」棚卸資産の評価損(法人税法第33条・法人税法施行令第68条・法人税基本通達9-1-4等)
- e-Gov法令検索「国税通則法」第23条(更正の請求)・第68条(重加算税)
- 国税庁「法人税基本通達 第2章第1節第3款 役務の提供に係る収益」
- 国税庁 No.6487「未成工事支出金の仕入税額控除の時期」
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
この記事を書いた人
市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。
