奈良で税務調査の連絡が来たら?|元国税調査官が対応の流れと相談先を解説
著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官/大阪国税局 資料調査課 出身)
「奈良の自宅に税務署から電話がかかってきた。何から手を付ければいいのか分からない」
「無申告の期間があるのに、調査の連絡が来てしまった。今からでも間に合うのか」
「奈良には税務調査に詳しい税理士が少ない気がする。大阪の税理士に頼んでもいいのか」
私は大阪国税局で国税調査官として調査事務に従事し、現在は大阪市で税理士として税務調査の対応を専門にしています。奈良県内の税務署はすべて大阪国税局の管内にあり、税務調査は全国共通の法令と手続に基づいて進められます。この記事では、管轄の仕組みから初動対応、相談先の選び方までを元調査官の立場から解説します。
結論:奈良の税務調査も全国共通の手続で進む。初動で事実関係と資料を整理することが重要
奈良県内の税務署(奈良・葛城・桜井・吉野の4署)は、いずれも大阪国税局の管内にあります。税務調査の手続は国税通則法に基づく全国共通の枠組みで進み、「奈良だから調査が緩い」ということはありません。一方で、調査の連絡(事前通知)が来ても、その場で結論を出す必要はありません。通知内容の確認、資料の整理、税理士への相談を早めに行うことで、説明の正確性を高め、調査対応の負担や不要な誤解を減らすことができます。
この記事でわかること
- 奈良県内の4つの税務署と管轄区域
- 調査官が重点的に確認するポイント(元調査官の視点)
- 調査の事前通知が来てから調査終了までの流れと初動対応
- 調査の事前通知の前に自主的に申告した場合の加算税の違い
- 奈良から税務調査に強い税理士へ依頼する方法
1. 奈良の税務調査を担当するのは大阪国税局管内の税務署
奈良県には国税局が置かれておらず、大阪国税局が奈良県を管轄しています(大阪国税局の管轄は大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県の2府4県です)。個人事業主やフリーランスの方への税務調査は、原則として納税地(通常は住所地)を管轄する税務署の個人課税部門が担当します。事案の規模や内容、収集された資料情報等によっては、税務署ではなく大阪国税局の担当部署が調査を行う場合もあります。
税務調査の手続自体は、国税通則法に基づく全国共通の枠組みで進みます。個別の調査内容や重点事項は、事案の規模、申告内容、収集された資料情報などによって異なります。国税庁は、申告漏れの可能性が高い納税者の選定にAIを活用しており、地域を問わずデータに基づいた選定が進んでいます。
国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、所得税の調査等の件数は全国で73万6千件(実地調査約4万7千件・簡易な接触約68万9千件。なお、実地調査の件数には所得税と消費税の実地調査が含まれます)、追徴税額は加算税を含め1,431億円と過去最高になりました。特に、所得税の無申告者に対する実地調査(特別調査・一般調査)では、1件当たりの申告漏れ所得金額が2,992万円と、所得税の実地調査(特別調査・一般調査)全体の1,486万円の約2倍にのぼります。これらは全国の数字であり、奈良県単独の統計ではありません。ただし、国税庁は全国的な方針として、無申告者に対して資料情報を活用し、実地調査や簡易な接触を積極的に実施するとしています。
個人事業主への調査先の選定の仕組みや確率の考え方は「個人事業主・フリーランスに税務調査は来る?」で詳しく解説しています。
2. 調査官が重点的に確認するポイント(元調査官の視点)
(1)申告内容と周辺情報のずれ
調査官は、申告書だけを見ているわけではありません。調査先の選定や事前準備では、申告書のほか、取引先から提出された支払調書などの法定調書、過去の申告・調査情報、不動産の登記情報などの資料情報が分析されます。また、事案によっては、調査の過程で金融機関への照会や取引先への反面調査が行われることもあります。「現金で受け取った売上だから分からないだろう」という考えは通用しにくく、通帳の入金記録や取引先への反面調査から売上規模が推測される傾向があります。通帳がどのように確認されるかは「税務調査と通帳」で詳しく解説しています。
(2)売上の計上漏れと計上時期
事業所得の売上は、原則として実際の入金日ではなく、商品を引き渡した日、請負業務を完了した日など、取引の内容に応じた収入計上時期に計上します。年末年始をまたぐ取引について入金日だけで売上の年分を判断していないか、一部の取引先分だけの計上漏れがないかは、重点的に確認されるポイントです。
(3)事業と家事の区分
自宅兼事務所の家賃や車両費、通信費など、事業と私生活の両方に関わる支出は、業務上直接必要な部分を合理的に説明できるかが確認されます。領収書があるだけで経費になるわけではなく、用途や利用状況を説明できる必要があります。
私が大阪国税局で調査事務に従事していた経験から言えば、調査官は臨場する前の準備段階で、収集した資料からある程度の見立てを立てています。あいまいな記憶のまま答えると、事実と異なる回答が記録に残るおそれがあるため、分からないことは「確認して後日回答します」と伝えて差し支えありません。
3. 奈良県内の4つの税務署と管轄区域
奈良県内には次の4つの税務署があります(国税庁サイトで確認・令和8年7月時点)。個人の方の場合、原則として納税地を管轄する税務署が調査を担当します。
| 税務署 | 主な管轄区域 |
|---|---|
| 奈良税務署(奈良市登大路町) | 奈良市・大和郡山市・天理市・生駒市・生駒郡 |
| 葛城税務署(大和高田市西町) | 大和高田市・橿原市・五條市・御所市・香芝市・葛城市・高市郡・北葛城郡 |
| 桜井税務署(桜井市粟殿) | 桜井市・宇陀市・磯城郡・山辺郡・宇陀郡 |
| 吉野税務署(吉野郡吉野町) | 吉野郡 |
事前通知の電話を受けた際は、どこの税務署の、何という部門の、誰からの連絡なのかを確認してメモしておきましょう。
4. 税務調査の連絡(調査の事前通知)が来たときの初動対応
実地調査の多くは、税務署からの電話による事前通知(対象税目・対象期間等の通知)から始まります。押さえておきたいのは次の3点です。
(1)日程をその場で即答しない
提示された日程の都合が悪い場合、合理的な理由があれば、税務署と協議して調整を求めることができます。仕事の状況や資料整理の時間を踏まえて、無理のない日程を相談しましょう。
(2)通知内容を正確にメモする
税務署名・担当部門・担当者名・対象税目・対象期間・調査場所を控えます。対象期間が何年分かは、その後の準備の範囲を決める重要な情報です。
(3)税理士に相談するかを早めに決める
税理士に依頼すると、事前の資料整理から当日の立会い、指摘事項への対応まで一貫したサポートを受けられます。
なお、電話ではなく「お尋ね」という文書が届くケースもあります。実地調査と行政指導では対応の考え方が異なるため、まず届いた連絡の性質を見極めることが重要です。詳しくは「税務署から「お尋ね」が届いたら」をご覧ください。また、事前通知をすると正確な事実関係の把握に支障が生じるおそれがある等と判断された場合には、事前連絡のない無予告調査が行われることもあります。その場合の対応は「無予告調査とは何か」で解説しています。
5. 調査当日から終了までの流れ
調査当日は、事業の概況や仕事の流れの聞き取りから始まり、帳簿や請求書、通帳などの資料確認へ進むのが一般的です。臨場の日数や期間は事案によって異なり、その後も電話や資料のやり取りで調査が続くことがあります。
調査の過程で、調査官が納税者の説明内容を「質問応答記録書」という書面にまとめることがあります。この書面は、後の課税処分や重加算税の判断に影響することがあるため、署名を求められた場合は、記載内容を十分に確認し、実際の事実関係と異なる点や誤解を招く表現があれば訂正を求めることが重要です。私が共著した『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)でも整理しましたが、調査時の受け答えは記録されるため、事実を正確に確認しながら回答することが、その後の事実認定における不要な誤解を防ぐことにつながります。
調査結果の内容について説明を受け、指摘に納得できれば、修正申告または期限後申告を提出し、追納税額や加算税等を納付します。指摘に納得できず、自主的な申告を行わない場合には、税務署が更正または決定を行うことがあります。調査対象期間は、実務上は当初3年分とされることが多く、状況により5年分に広がります。偽りその他不正の行為があると認められる場合は、最長7年分までさかのぼることがあります(法律上の更正・決定ができる期間は原則5年です)。詳しくは「税務調査は何年分さかのぼる?」をご覧ください。
6. 奈良の事業者でも問題となり得る主な論点
特定の業種に調査が集中するという意味ではなく、事業や収入の構造上、申告誤りが起きやすい論点があるという趣旨で、主な論点を挙げます。
- 観光地の店舗・飲食・宿泊:奈良市中心部や吉野などの観光地では、現金を含む売上の管理が課題になりやすく、レジ記録や売上日報と申告額の整合が確認されます。
- 兼業・副業:給与を受け取りながら事業や副業の収入がある方は、副業分の申告漏れが論点になりやすい傾向があります。
- 不動産・相続関連:相続した不動産の売却益や賃貸収入の申告漏れは、登記情報などから把握されやすい論点です。
- 無申告:開業から一度も申告していないケースです。国税庁は無申告を重点課題として調査に取り組む方針を公表しています。全国統計では、所得税無申告者に対する実地調査(特別調査・一般調査)の1件当たり追徴税額は524万円で、同調査全体の299万円の1.8倍です。
7. 事前通知の前にできること:自主的な期限後申告・修正申告
無申告の期間がある方や申告誤りに気づいている方は、調査の事前通知が来る前に自主的に申告することで、加算税の負担が変わります。
所得税について、税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は原則として納付すべき税額の5%です。事前通知後、調査による決定を予知する前に期限後申告をした場合、令和5年分以後は、納付すべき税額のうち50万円以下の部分は10%、50万円を超え300万円以下の部分は15%、300万円を超える部分は25%となります。決定を予知した後または税務署から決定を受けた場合は、それぞれ15%、20%、30%となります。延滞税は別途生じます(過年度分は法定申告期限により区分が異なります)。なお、一定の繰返し無申告や、調査時に帳簿を提示しなかった場合などには、さらに加重されることがあります。
一方、すでに期限内申告をしているものの、所得や税額を少なく申告していた場合は修正申告を行います。加算税の判定上の「調査通知」(実地調査を行う旨、調査対象となる税目および調査対象期間の3項目の通知)の前、かつ、調査による更正を予知する前に自主的に修正申告をした場合、過少申告加算税は原則として課されません。調査通知後、更正を予知する前に修正申告をした場合は、新たに納付する税額の5%、その税額のうち期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分については10%の過少申告加算税が原則として課されます。
すでに調査の事前通知を受けた後でも、調査による更正または決定を予知する前に期限後申告や修正申告を行うことで、調査結果を待って更正・決定を受ける場合より、加算税が軽くなることがあります。どの段階にいるかによって取扱いが異なるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
8. 奈良から税理士に依頼するには:相談先の選び方
相談先を選ぶ際は、次の点を確認するとよいでしょう。
(1)税務調査の対応実績
調査立会いの経験や、加算税・質問応答記録書への対応方針を確認しましょう。調査官側の実務を知る国税OB税理士に相談するのも選択肢の一つです。
(2)スポット対応の可否
顧問契約がなくても、税務調査の対応だけを依頼できる事務所があります。顧問税理士がいる方の立会いのみの依頼や、セカンドオピニオンも可能です。
(3)地理的な制約は小さい
資料のやり取りや打ち合わせの多くはオンラインや電話で完結するため、奈良県内の方が大阪の税理士に依頼することも一般的です。当事務所(大阪市)は関西全域に対応しており、奈良県内での調査立会いも承っています。
よくある質問
Q1. 奈良の税務調査はどこの税務署が担当しますか?
原則として納税地を管轄する税務署が担当します。納税地は通常は住所地ですが、事業所等を納税地としている場合もあります。奈良県内には奈良・葛城・桜井・吉野の4つの税務署があり、いずれも大阪国税局の管内です。事案の規模や内容等によっては、大阪国税局の担当部署が調査を行う場合もあります。
Q2. 奈良県内の事業者でも大阪の税理士に税務調査の対応を依頼できますか?
依頼できます。税理士への依頼に地理的な制約はなく、資料のやり取りや打ち合わせの多くはオンラインで完結します。当事務所も関西全域に対応しており、奈良県内での調査立会いも承っています。
Q3. 無申告のまま税務調査の連絡が来た場合はどうすればよいですか?
放置せず、早めに税理士へ相談することをおすすめします。調査の事前通知を受けた後でも、調査による決定を予知する前に自主的に期限後申告をすれば、加算税が軽くなる場合があります。資料が残っていない場合も、通帳などの客観的資料から所得を再整理できることがあります。
Q4. 税務調査は何年分さかのぼって調べられますか?
実務上は当初3年分とされることが多く、状況により5年分に広がります。偽りその他不正の行為があると認められる場合は、最長7年分までさかのぼることがあります。事前通知が行われる場合、当初の調査対象期間は事前通知の際に伝えられます。ただし、調査の過程で他の年分について申告誤りが疑われた場合には、説明の上で対象期間が追加されることがあります。
Q5. 顧問税理士がいなくても、調査の立会いだけを依頼できますか?
依頼できます。当事務所では、顧問契約がない方の税務調査のスポット対応や、顧問税理士がいる方の調査立会いのみのご依頼にも対応しています。
Q6. 税務署からの連絡を放置するとどうなりますか?
連絡を放置しても調査がなくなるわけではなく、税務署が保有する資料に基づいて税額が決定される(更正・決定)ことがあります。この場合、自主的に申告した場合より加算税が重くなる傾向があります。早めの対応をおすすめします。
まとめ:奈良の税務調査では、初動で事実関係と資料を整理することが重要
奈良県内の税務調査は、原則として奈良・葛城・桜井・吉野の4つの税務署が担当します。いずれも大阪国税局の管内にあり、調査は全国共通の法令と手続に基づいて行われます。日程の調整、通知内容の記録、資料の整理、そして税理士への相談という初動対応を落ち着いて進めることが、説明の正確性を高め、不要な誤解を防ぐことにつながります。
無申告の場合は、調査の事前通知前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は原則5%です。期限内申告済みで税額の不足に気づいた場合も、調査通知前、かつ、更正を予知する前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は原則として課されません。早く動くほど、加算税の負担を抑えられる可能性が残ります。奈良から大阪の税理士への依頼に地理的な壁はありません。一人で抱え込まず、税務調査の実務を知る専門家に早めにご相談ください。
税務調査の連絡が来た方、申告に不安がある方へ
市田税理士事務所は、元国税調査官(大阪国税局 資料調査課 出身)の税理士が運営する事務所です。調査官側の実務を踏まえて、事前準備から調査立会い、指摘事項への対応までサポートします。ご依頼内容に応じて、当事務所で対応するほか、必要に応じて外部専門家との連携も検討し、状況に応じた適切な対応を提供します。
顧問契約・税務調査に関する初回相談は無料です。ただし、個別具体的な税務判断、セカンドオピニオン等はスポット相談として有料にて承ります。関西全域・オンラインで全国対応。
奈良に限らず、関西で税務調査の連絡が来てお困りの方は、対応の流れや費用の考え方をまとめた「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもあわせてご覧ください。
引用・参考文献
- 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)
- 国税庁「税務署所在地・案内(大阪国税局・奈良県)」
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
- 国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」
- 市田佳祐(共著)『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)
- 市田佳祐「所得税 接触方法を見極めた上で対応の検討を」『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)
この記事を書いた人
市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。

