非永住者の送金課税とは?|海外所得を日本へ送金した場合の税金を解説
著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)
「海外口座にあるお金を日本へ送金すると、その金額に税金がかかるのでしょうか」
「日本へ来る前から持っていた貯金を送っただけでも、海外所得として課税されるのでしょうか」
「同じ年の前半は非居住者でした。その期間に得た海外所得を、来日後に日本へ送金すると課税されるのでしょうか」
日本に住む外国人の方から、このような相談を受けることがあります。特に分かりにくいのが「非永住者の送金課税」です。「日本へ送金した金額そのものに税金がかかる」「海外で稼いだお金を日本へ持ってくると課税される」と理解されることがありますが、正確ではありません。
私は大阪国税局で国際課税や富裕層に対する調査事務に従事した後、現在は税理士として海外所得や居住者判定を含む国際税務の相談に対応しています。この記事では、非永住者の課税範囲と送金の計算について、過去の貯金、国外払いの給与、同一年中に非居住者から非永住者となった場合も含めて整理します。
結論:送金額そのものではなく、非永住者期間中の所得と送金で判定する
非永住者については、国外源泉所得以外の所得に加え、国外源泉所得のうち国内で支払われたものや、国外から日本へ送金されたものが日本の所得税の対象になります。ただし、「送金額=所得」として課税する制度ではありません。
また、送金した資金を一つずつ追跡して「これは昔の貯金だから非課税」「これは今年の配当だから課税」と決める仕組みでもありません。非永住者期間中に生じた所得を区分し、国内払い・国外払いと送金額を基に、所得税法施行令第17条の順序で課税対象額を計算します。
同じ年に非居住者から非永住者になった場合も重要です。非永住者の送金計算では、原則として非永住者であった期間内に生じた所得と、その期間内の国外からの送金を対象とします。非居住者期間中に生じた国外源泉所得を、後から送金しただけで非永住者の送金課税に取り込む仕組みではありません。
この記事でわかること
- 非永住者に該当する人
- 非永住者が日本で課税される所得の範囲
- 国外払いの給与などがある場合の送金計算
- 昔の貯金を日本へ送った場合の考え方
- 同一年中に非居住者から非永住者となった場合の取扱い
- 外国税額控除と送金に含まれる取引
第1章 非永住者とは?|外国人であれば全員が該当するわけではない
非永住者とは、居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である方をいいます。外国籍というだけで非永住者になるわけではありません。
非永住者はあくまで日本の「居住者」です。日本国内に住所を有するか、現在まで引き続いて1年以上居所を有するなどの要件により居住者に該当したうえで、一定の外国籍の方について課税範囲が限定されます。
年の途中で居住形態が変わることもあります。例えば、年初は非居住者であったものの、その後、日本国内に生活の本拠を持つことになり、途中から非永住者になるケースです。居住者・非居住者の判定については、居住者・非居住者の判定を解説した記事もご覧ください。
第2章 調査官が重点的に確認するポイント
非永住者の海外所得を確認する場合、送金額だけを見ればよいわけではありません。居住形態が変わった時期、所得が生じた時期、所得の種類、支払場所、送金時期を時系列で整理する必要があります。
(1)いつ非永住者になったのか
日本国籍の有無、過去10年間の国内居住期間に加え、年の途中で非居住者から居住者になっている場合には、その日を確認します。送金計算の対象期間を確定するためです。
(2)所得の源泉地と支払場所を分ける
「どこで生じた所得か」と「どこで支払われたか」は別の問題です。例えば、日本国内で勤務して得た給与は、国外で支払われても、その支払場所だけを理由に国外源泉所得にはなりません。一方、国外払いであれば送金計算では重要な要素になります。
(3)非永住者期間中の送金額を確認する
通常の銀行送金だけでなく、国外資金を使った国内での債務弁済など、送金に含まれる可能性がある取引も確認します。海外口座が複数ある場合は、口座間移動も含めて資金の流れを整理します。
私が大阪国税局で調査事務に従事していた経験から言えば、このような案件では「海外からいくら送ったか」だけではなく、所得と資金移動を同じ時系列に並べて確認することが実務上重要です。
第3章 非永住者はどこまで日本で課税されるのか
非永住者について日本で課税される所得は、大きく分けて、①国外源泉所得以外の所得、②国外源泉所得で国内において支払われたもの、③国外源泉所得で国外から送金されたものです。以下では、国外源泉所得以外の所得を「非国外源泉所得」と表記します。
例えば、国外にある銀行の預金利息は、一般に国外源泉所得となります。その利息が国外で支払われ、日本への送金もなければ、非永住者について日本の課税対象に含まれないことがあります。一方、日本の口座へ直接支払われた場合や、送金があった場合には課税対象となる部分が生じます。
なお、「海外口座に入った所得=国外源泉所得」ではありません。給与については、原則として勤務その他の人的役務をどこで行ったかが重要です。海外証券口座の所得については、海外証券口座の確定申告の記事でも解説しています。
(1)国外源泉所得でも国内払いなら送金の有無を待たず課税対象
「国外源泉所得」と「国外払い」も同じ意味ではありません。例えば、国外にある不動産の賃貸料が日本国内の預金口座へ直接振り込まれた場合、所得税基本通達7-4では国内において支払われたものの例として示されています。
この場合は、日本へ別途送金したかどうかを待たず、国内払いの国外源泉所得として非永住者の課税対象を検討します。非永住者の計算では、所得の源泉地、支払地、国外からの送金という三つを分けて確認することが重要です。
第4章 送金はまず「国外払いの非国外源泉所得」から行われたものとみなす
非永住者が国外から送金を受けた場合、その送金額を直ちに国外源泉所得と対応させるわけではありません。非永住者期間中に国外払いの非国外源泉所得がある場合には、まずその所得について送金があったものとみなします。
その金額を超えてなお送金額が残る場合に、その残額と国外払いの国外源泉所得を比較し、国外源泉所得について送金があったものとみなされる金額を計算します。
言い換えると、国外払いの非国外源泉所得が送金額以上なら、国外払いの国外源泉所得について送金があったものとみなされる金額は生じません。反対に、送金額の方が大きければ、その超過部分が国外払いの国外源泉所得の範囲内で送金相当額になります。
(1)給与が国内払いの場合
日本勤務の給与収入300万円が国内払い、外国銀行の預金利息100万円が国外払い、日本への送金が200万円だったとします。給与300万円は非国外源泉所得として日本で課税されますが、国内払いなので、送金200万円から先に控除する対象にはなりません。
国外払いの非国外源泉所得がないため、送金200万円と国外払いの利息100万円を比較します。この例では利息100万円について送金があったものとみなされ、課税対象になります。残りの100万円は、送金したことだけで新たな所得になるわけではありません。
(2)給与が国外払いの場合
日本勤務の給与収入300万円が国外払い、外国銀行の利息100万円も国外払い、日本への送金が200万円だったとします。日本勤務の給与は非国外源泉所得なので、国外払いでも日本の課税対象です。
送金200万円は、まず国外払いの非国外源泉所得である給与に対応するものとみなされます。送金額が給与300万円を超えていないため、この例では外国銀行の利息について送金があったものとはみなされません。
(3)国外払い給与を超えて送金した場合
同じ前提で日本への送金が350万円なら、300万円相当を国外払い給与に対応させ、残り50万円相当を国外払いの国外源泉所得に対応させます。したがって、利息100万円のうち50万円相当が送金されたものとして課税対象になります。
なお、給与所得についてこの送金計算を行う場合は、給与所得控除後の所得金額ではなく、所得税法施行令第17条の特殊計算により給与等の収入金額を基礎とします。
第5章 昔の貯金を日本へ送った場合はどうなる?
「日本へ来る前から海外口座にあった預金を送っただけ」という相談は少なくありません。過去から保有していた預金元本を日本へ移したこと自体で、その元本が新たな所得になるわけではありません。
ただし、非永住者期間中に国外払いの国外源泉所得がある場合は別です。例えば、以前からの預金1,000万円、非永住者期間中の国外払いの国外源泉所得200万円、日本への送金100万円というケースを考えます。
国外払いの非国外源泉所得がないという前提では、実際には以前からある預金から100万円を送ったとしても、税務上は100万円相当の国外源泉所得について送金があったものとして取り扱われます。実際の送金原資を個別に追跡して課税範囲を決める制度ではないためです。
反対に、非永住者期間中の国外払いの国外源泉所得が50万円しかなければ、300万円を送金しても、国外源泉所得との関係で送金があったものとみなされる金額は基本的に50万円までです。残りの資金は、送金したこと自体では所得になりません。
第6章 同じ年に非居住者から非永住者になった場合はどうなる?
例えば、1月1日から3月31日まで非居住者、4月1日から12月31日まで非永住者だったとします。非居住者期間中に外国銀行の利息120万円、非永住者期間中に外国銀行の利息40万円が生じ、8月に100万円を日本へ送金したケースです。
この場合、1年間の国外所得160万円と送金100万円をまとめて比較するわけではありません。所得税法第8条は居住形態が変わった場合の課税範囲を期間ごとに分け、所得税法施行令第17条第4項第6号も、非永住者であった期間内に生じた所得と同期間内の送金について送金計算を適用することとしています。
したがって、非居住者期間中に生じた利息120万円は、後から送金したことだけで非永住者の送金課税に入りません。一方、非永住者期間中に生じた国外払いの利息40万円は、国外払いの非国外源泉所得がないという前提では、8月の送金によって40万円について送金があったものとみなされます。
もし非居住者期間中の国外源泉所得しかなく、非永住者期間中には対象となる国外源泉所得がないのであれば、その過去の所得を非永住者期間中に送金したことだけを理由として日本の課税対象に変える取扱いにはなりません。
(1)所得がいつ生じたかは所得区分ごとに確認する
「非居住者だったときに働いたから、その給与も非居住者期間中の所得」と単純には決まりません。給与について支給日が定められている場合、原則としてその支給日が収入すべき時期となります。
ただし、「いつの所得になるか」と「国内源泉所得か国外源泉所得か」は別問題です。給与の源泉地は、原則として実際に勤務その他の人的役務を提供した場所などに基づいて判定します。非居住者期間中の国外勤務に対応する給与が、非永住者となった後に支給される場合には、この二つを分けて確認する必要があります。
第7章 複数の国外源泉所得がある場合は按分する
非永住者期間中に、国外払いの海外預金利息20万円、外国法人の配当80万円、海外不動産所得100万円があり、国外払いの非国外源泉所得がなく、日本への送金が100万円だったとします。
この場合、本人が「この100万円は不動産収入から送った」と任意に指定するものではありません。国外払いの国外源泉所得が複数あるときは、原則として各所得の金額が合計額に占める割合によって、送金されたものとみなされる金額を配分します。
この単純な例では、利息10%、配当40%、不動産所得50%です。したがって、100万円の送金相当額は、利息10万円、配当40万円、不動産所得50万円という形で配分されます。
第8章 銀行振込以外でも「送金」に含まれる場合がある
所得税基本通達7-6では、通常の銀行送金のほか、国内への通貨の持込み、小切手や為替手形などによる送金、通常の送金に代えて行われたと認められる物の国内への携行・送付なども送金に含まれるとされています。
さらに、国内で借入れや立替払いを受け、その債務を国外にある自己の預金等で弁済する行為なども、通常の送金に代わる行為として送金に含まれる場合があります。
外国発行のクレジットカードを日本で利用し、国外資金で決済しているケースも、具体的な決済関係を確認して判断する必要があります。「日本の銀行口座へ振り込んでいないから送金ではない」とは限りません。海外送金の情報が税務署にどう把握されるかは、海外送金と税務調査の記事で詳しく解説しています。
第9章 外国税額控除と保存しておきたい資料
日本で課税対象となる国外源泉所得について、外国でも所得税に相当する税が課されている場合には、外国税額控除を検討します。ただし、外国で納付した税額をそのまま日本の所得税から差し引く制度ではなく、控除限度額があります。
所得税基本通達95-29では、非永住者について所得税法第7条第1項第2号の課税対象とされる所得以外の所得に対して外国で課された税は、日本の外国税額控除の対象となる外国所得税に該当しないとされています。
また、居住者がその年以前の年において非居住者であった期間内に生じた所得に対して課される外国所得税額も、居住者に係る外国税額控除の対象外です。同じ年の途中で非居住者から非永住者になった場合は、外国税についても、どの期間に生じた所得に対応するかを整理します。
海外銀行・証券口座の取引明細、利息や配当の明細、海外不動産の収支資料、給与・年金の支払資料、日本への送金記録、外国で納付した税金の資料、入国日や居住形態が変わった日を確認できる資料を保存しておくと整理しやすくなります。海外年金については、海外年金の確定申告の記事も参考にしてください。
よくある質問
Q1. 海外口座から日本へ送金しなければ、国外所得は日本で課税されませんか?
非永住者で、国外源泉所得が国外で支払われ、非永住者期間中に日本への送金もない場合には、日本の課税対象に含まれないことがあります。ただし、非国外源泉所得は送金の有無だけで課税範囲が変わるものではなく、国外源泉所得でも国内で支払われている場合は課税対象になります。
Q2. 日本へ来る前から持っていた海外預金を送ると課税されますか?
過去から保有していた預金元本を日本へ移したこと自体で、その元本が新たな所得になるわけではありません。ただし、非永住者期間中に国外払いの国外源泉所得がある場合には、実際の送金原資が過去の預金であっても、その国外源泉所得について送金があったものとみなされることがあります。
Q3. 日本の給与を国外で受け取り、その後日本へ送金した場合はどうなりますか?
日本での勤務に基づく給与など非国外源泉所得は、国外払いであっても非永住者の課税対象です。国外払いの非国外源泉所得がある場合、国外からの送金額はまずその所得について送金されたものとみなし、その金額を超える部分について国外払いの国外源泉所得との関係を計算します。
Q4. 同じ年の非居住者期間中に得た海外所得を、非永住者になった後に送金すると課税されますか?
非居住者期間中に生じた国外源泉所得は、その後、同じ年の非永住者期間中に日本へ送金したというだけで、非永住者の送金課税の対象に入るわけではありません。ただし、非永住者となった後にも国外払いの国外源泉所得が生じている場合には、その所得について送金があったものとみなされることがあります。
Q5. 海外のクレジットカードを日本で使っても送金になりますか?
銀行振込だけが送金に該当するわけではありません。国内で立替払いを受け、その債務を国外の自己資金で弁済するなど、通常の送金に代わる行為も送金に含まれる場合があります。外国発行カードの国内利用については、具体的な決済関係を確認して判断する必要があります。
Q6. 海外ですでに税金を払っていても、日本で申告が必要ですか?
日本で課税対象となる所得であれば、外国で税金を払っていることだけを理由に日本で申告不要とはなりません。同じ国外源泉所得について外国所得税が課されている場合には、外国税額控除や租税条約を確認します。ただし、日本の課税対象とならない所得に対して課された外国税や、非居住者期間中に生じた所得に対して課された外国所得税額は、日本の居住者に係る外国税額控除の対象とはなりません。
まとめ:期間・所得区分・支払地・送金の順に整理する
非永住者の送金課税では、まず非永住者期間中に生じた所得を非国外源泉所得と国外源泉所得に分け、さらに国内払いと国外払いに分けます。国外払いの非国外源泉所得があれば、送金額はまずその所得に対応させ、残額がある場合に国外払いの国外源泉所得について送金相当額を計算します。
また、同じ年に非居住者から非永住者になった場合、非居住者期間中の国外源泉所得を後から送金しただけで、その所得が非永住者の送金課税に入るわけではありません。一方、非永住者期間中にも国外払いの国外源泉所得があれば、実際の送金原資にかかわらず、その所得について送金があったものとみなされることがあります。
非永住者の送金課税は、「何のお金を送ったつもりか」だけで判断せず、所得が生じた期間、所得区分、支払地、送金時期を順番に整理することが重要です。特に帰国年や来日年は、1年分を一括して判断せず、居住形態が変わった日を起点に資料を分け、各所得の支給日や入金日、送金日も併せて年分ごとに確認すると整理しやすくなります。
海外所得の申告漏れなどをきっかけに税務署から確認を受けている方は、「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもあわせてご覧ください。
引用・参考文献
- 所得税法第2条、第7条、第8条、第95条、第102条
- 所得税法施行令第17条
- 所得税法施行規則第47条の4
- 国税庁「No.2010 納税義務者となる個人」
- 国税庁「No.2509 給与所得の収入金額の収入すべき時期」
- 国税庁 所得税基本通達2-3、7-2、7-3、7-4、7-6
- 国税庁 所得税基本通達36-9「給与所得の収入金額の収入すべき時期」
- 国税庁 所得税基本通達95-29「非永住者の外国税額控除の対象となる外国所得税の範囲」
- 国税庁「居住形態等に関する確認書」
- 国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」
この記事を書いた人
市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。

