海外不動産の売却と確定申告|分離課税・為替換算・外国税額控除を元国税調査官が解説
著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)
「海外の物件を売却したが、現地で税金を払ったので日本では申告不要だと思っていた」
「取得費や売却代金を、どの時点の為替レートで円換算するのか分からない」
「国外中古建物の損益通算否認を受けていたが、売却時の取得費はどう計算するのか知りたい」
海外赴任中に購入した自宅、投資目的で保有していた海外のコンドミニアム、相続で取得した海外の土地など、日本の居住者が海外不動産を売却する場面は増えています。現地で課税されることが多いため「日本では関係ない」と考えがちですが、日本の居住者のうち非永住者以外の方は、海外不動産の譲渡益についても日本で申告が必要です。為替換算や現地税の調整など、国内不動産にはない論点も加わります。
私は大阪国税局で国際課税や富裕層に対する調査事務などに従事していた、国税OBの税理士です。この記事では、日本の居住者が海外不動産を売却した場合の課税の仕組み、為替換算、取得費、外国税額控除、居住用財産の特例を整理し、税務署が把握する経路と調査で確認されるポイントを解説します。
結論:海外不動産の譲渡益も日本で分離課税。為替換算・取得費・現地税の調整が3つの論点
- 日本の居住者(非永住者以外)が海外の土地建物を売却した利益は、国内不動産と同じく分離課税の譲渡所得として日本で申告する。譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年超なら税率20.315%、5年以下なら39.63%
- 取得価額は取得時、譲渡価額は譲渡時の取引日のレート(原則TTM)で円換算する。取得から売却までの為替変動は譲渡所得に含まれる
- 国外中古建物の不動産所得について損益通算が否認された減価償却費は、売却時の取得費の計算では控除しない
- 現地で課された譲渡益に対する税金は、日本の申告で外国税額控除の対象になり得る。現地で払ったから日本で不要、にはならない
- 海外に住んでいた自宅を売却した場合、居住用財産の3,000万円特別控除の適用余地がある(10年超の軽減税率と買換え特例は国内の自宅に限られる)
- 100万円を超える売却代金の国内への送金は国外送金等調書に、海外口座の残高はCRS情報に、一定の要件を満たせば保有状況は国外財産調書にも現れる。把握される前提で申告する
この記事でわかること
- 海外不動産の売却が日本で課税される理由と、税務署の把握経路
- 調査官が海外不動産の売却で重点的に確認するポイント(元調査官の内側視点)
- 分離課税の仕組み(5年判定・税率・損失の扱い)
- 為替換算のルールと、為替差損益の扱い
- 取得費と減価償却、国外中古建物の損益通算否認との関係
- 外国税額控除、居住用財産の特例、国外財産調書との関係
1. 海外不動産の売却が日本で課税される理由と把握の経路
(1)非永住者以外の居住者は国内外すべての所得が課税対象
日本の居住者のうち非永住者以外の方は、所得が生じた場所を問わず、国内外すべての所得について日本の所得税の課税対象になります。海外の不動産を売却した利益も、日本の課税対象です。現地で課税されている場合は、二重課税を外国税額控除で調整する仕組みになっており、日本での申告が不要になるわけではありません。
(2)税務署が把握する経路
海外不動産の売却は、次のような記録から把握され得ます。売却代金を日本に送金すれば、100万円を超える国外からの受領として金融機関から国外送金等調書が提出されます(令和6事務年度の提出枚数は約923万枚)。売却代金を海外の口座に置いたままでも、CRS(共通報告基準)参加国・地域の報告対象口座であれば、口座残高の情報が日本の国税庁に提供されます(令和6事務年度は101か国・地域から約275万件)。
また、国外財産調書を提出していた方が、翌年の調書からその不動産を記載しなくなれば、売却などの異動があったことが分かります。租税条約に基づく情報交換により、相手国の税務当局から不動産の取引情報が提供されることもあります。
(3)海外投資に対する調査の実績
国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、海外投資等を行っている個人に対する実地調査は2,666件、1件当たりの申告漏れ所得金額は3,459万円、追徴税額は866万円でした。これらは調査対象として選定された事案の実績であり、海外不動産を保有する方全体の申告漏れ額や調査確率を示すものではありません。資産規模の大きい個人への調査の考え方は、富裕層への税務調査の記事で解説しています。
2. 調査官が海外不動産の売却で重点的に確認するポイント(元調査官の内側視点)
(1)売却代金の動きと申告の突合
国外送金等調書やCRS情報に現れた高額な資金の受領・残高増加と、その年分の申告書に譲渡所得が記載されているかの突合が、検討の出発点です。海外口座に置いたままの売却代金は、国外財産調書の提出対象者であれば翌年以後の調書から、そうでなくてもその後の送金などで把握され得ます。
(2)取得費と為替レートの根拠
申告している方については、取得費の根拠が確認されます。現地の売買契約書や決済明細、取得時の為替レートの記録があるか、建物の減価償却費相当額が正しく控除されているか、譲渡費用に現地の仲介手数料や登記費用が適切に含まれているかといった点です。
(3)国外中古建物の損益通算否認との整合
国外の中古建物を賃貸し、簡便法による短い耐用年数で多額の減価償却費を計上して不動産所得の赤字を給与所得などと損益通算していた方については、令和3年分以後、その赤字のうち償却費に相当する部分は生じなかったものとみなされています。売却時には、この否認された償却費を取得費の計算上どう扱っているかが確認されます。否認された償却費を取得費から控除してしまうと、二重に不利になります。
(4)現地税の証明
外国税額控除を適用している場合、現地で課された税金の内容と金額を証明する書類(現地の申告書、納税証明、源泉徴収の明細など)が確認されます。租税条約の限度税率を超えて徴収された税額など、控除の対象にならないものが含まれていないかも検討されます。
(5)調査現場から見た実感
私が大阪国税局で国際課税や富裕層に対する調査事務に従事していた経験から言えば、海外不動産の売却に関する申告漏れは、「現地で税金を払ったから終わり」という誤解によるものが目立ちました。悪質さより理解不足のケースが多い一方、売却代金が海外口座に長期間置かれ、その後の運用益も申告されていないケースでは、論点が広がります。売却の年に正しく申告し、代金の行方を記録しておくことが、その後の余計な確認を避ける対策になります。
3. 分離課税の仕組み
(1)土地建物等の譲渡所得は分離課税
土地や建物の譲渡による所得は、国内・国外を問わず、他の所得と分けて課税される分離課税の譲渡所得です。給与所得などと合算されず、独自の税率で課税されます。
(2)5年判定と税率
譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得で、税率は20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)です。5年以下であれば短期譲渡所得で、税率は39.63%(同30.63%、住民税9%)です。金地金など総合課税の譲渡所得と異なり、「取得日から売却日まで」ではなく「譲渡年の1月1日」で判定する点に注意が必要です。
(3)損失が出た場合
海外不動産の売却で損失が出た場合、同じ年の国内不動産を含む他の土地建物等の譲渡益と通算できます。ただし、給与所得や事業所得など他の所得との損益通算は原則としてできません。
4. 為替換算のルール
(1)取得時と譲渡時、それぞれのレートで換算
海外不動産は外貨で売買されるため、譲渡所得の計算では各金額を円換算します。譲渡価額や取得価額は、それぞれの取引日における対顧客直物電信売買相場の仲値(TTM)で円換算するのが原則です。譲渡価額は譲渡時、取得価額は取得時のレートを使用し、譲渡費用はその費用に係る取引日のレートによります。なお、不動産の売却代金として受け取った外貨を直ちに円転した場合には対顧客直物電信買相場(TTB)、円を外貨に換えて直ちに海外不動産の取得代金を支払った場合には対顧客直物電信売相場(TTS)によることができます。
(2)為替差損益は譲渡所得に含まれる
取得時と譲渡時で為替レートが異なるため、現地通貨建てでは利益が出ていなくても、円安が進んでいれば円換算では譲渡益が生じることがあります。この為替変動による差額は、譲渡所得の計算に含まれ、別途為替差損益として区分するものではありません。
(3)売却代金を外貨のまま保有した場合
売却代金を外貨で受領した後、その外貨を保有し、後日円転した場合や別の資産の購入に使った場合には、外貨を取得した時点から円転時等までの為替差損益が、譲渡所得とは別に原則として雑所得の対象になります。譲渡日と代金受領日がずれる場合には、外貨建ての未収金の決済に伴う為替差損益という別の論点も生じ得ます。この点は、為替差益の確定申告と税務調査の記事もあわせてご覧ください。
5. 取得費と減価償却
(1)取得費の範囲
取得費には、購入代金のほか、購入時の仲介手数料、登記に相当する費用、取得税に相当する現地の税金など、取得に直接要した費用が含まれます。建物については、取得費から所有期間中の減価償却費相当額を控除します。賃貸に使っていた建物は不動産所得の計算で計上した償却費の累計、自宅など非業務用の建物は、法定耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率を用いて計算した減価償却費相当額を控除します。
(2)国外中古建物の損益通算否認と取得費
令和3年分以後、国外中古建物の貸付けによる不動産所得の損失のうち、簡便法などで計算した減価償却費に相当する部分は、生じなかったものとみなされ、他の所得と損益通算できません(租税特別措置法第41条の4の3)。この否認された償却費相当額は、売却時の取得費の計算においては、減価償却費の累計額から除いて計算します。つまり、否認された部分は取得費として残り、譲渡所得の計算で控除できます。過去の申告書で否認額を把握しておく必要があります。
(3)取得費が分からない場合
取得時の資料がなく取得費が分からない場合、譲渡価額の5%を取得費とする概算取得費の取扱いがあります。ただし、実際の取得費より不利になることが多いため、現地の登記記録や売買契約書、送金記録などから実額の把握を試みることをおすすめします。
(4)相続・贈与で取得した場合
相続や贈与で取得した海外不動産は、被相続人・贈与者の取得費と取得時期を引き継ぎます。相続税が課税された方が、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却した場合には、相続税の取得費加算の特例を受けられることがあります。
6. 現地の税金と外国税額控除
海外不動産の売却では、現地で譲渡益に対する所得税や源泉徴収が課されることが一般的です。この現地の税金のうち、外国税額控除の対象となる外国所得税に該当するものは、日本の申告で控除限度額の範囲内で所得税から控除できます(所得税法第95条)。控除限度額は、その年の所得税額に国外所得の割合を乗じて計算し、控除しきれない外国所得税額等については一定の要件の下で3年間の繰越控除が認められています。
租税条約の限度税率を超えて徴収された税額や、不動産取引に伴う流通税など所得に対する税でないものは、外国税額控除の対象になりません。適用には、外国所得税を課されたことを証する書類等と外国税額控除に関する明細書が必要です。現地の税金が後に減額・還付された場合は、その減額額が具体的に確定した日の属する年分で控除額を調整するのが原則です(実際に還付を受けた日の属する年分で調整することも認められます)。
7. 居住用財産の特例
海外赴任中などに自分が住んでいた海外の自宅を売却した場合、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除(租税特別措置法第35条)は、その他の要件を満たせば適用可能です。国税庁の質疑応答事例でも、居住用財産は日本国内にあるものに限られないとされています。
一方、所有期間10年超の居住用財産に対する軽減税率の特例(同第31条の3)は日本国内にある居住用財産に限られるため、国外の自宅には適用できません。特定の居住用財産の買換え特例も、譲渡資産・買換資産の国内所在を要件としています。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること、親子や夫婦など特別の関係がある人への譲渡でないことなど、国内の自宅と同じ要件を満たす必要があります。適用を受けるには確定申告が必要で、居住の事実を示す現地の資料を揃えておきます。
8. 国外財産調書との関係と、無申告の加算税
(1)国外財産調書
12月31日時点で合計5,000万円を超える国外財産を保有する居住者(非永住者を除きます)は、翌年6月30日までに国外財産調書を提出する義務があります。売却した年の12月31日時点で不動産を保有していなければその不動産の記載は不要ですが、売却代金を海外口座に置いていればその預金は国外財産です。
国外財産調書を期限内に提出し、対象となる国外財産を適切に記載していれば、その財産に関する所得税・相続税の申告漏れについて、過少申告加算税・無申告加算税が5%軽減されます。一方、期限内提出がない場合や記載漏れがある場合は、原則として5%加重されます。
(2)無申告・申告漏れの加算税
海外不動産の譲渡所得を申告していなかった場合、本税に加えて加算税と延滞税がかかります。すでに確定申告をしている年分であれば、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は課されません(延滞税は別途生じます)。
申告そのものをしていない年分については、無申告加算税の問題になります。実地調査に係る調査通知(対象税目・対象期間等の通知)を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は原則5%です(延滞税は別途生じます)。
調査通知を受けた後、調査による決定を予知する前の期限後申告では、令和5年分以後、50万円以下の部分10%・50万円超300万円以下の部分15%・300万円超の部分25%、決定を予知した後・決定後は同15%・20%・30%と、対応が遅れるほど段階的に重くなります(過年度分は法定申告期限により区分が異なります)。なお、繰り返し無申告となっている場合や帳簿の提示等がない場合には、別途加重措置が適用されることがあります。
重加算税は、課税標準等の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて申告した場合等に課されます。単に申告漏れを認識していたというだけで、直ちに重加算税が課されるわけではありません。
調査の対象となる年分はケースによって異なりますが、法律上、増額の更正・決定ができる期間は原則5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年です。詳細は税務調査は何年分さかのぼるかの記事で整理しています。税務署から「お尋ね」と呼ばれる文書が届いた場合の対応は、税務署から「お尋ね」が届いたらの記事をご覧ください。
次のような方は、早めに税理士へご相談ください。
- 海外不動産を売却したが日本で申告しておらず、把握されていないか不安がある
- 国外中古建物の損益通算否認を受けており、売却時の取得費の計算を整理したい
- 税務署からお尋ねが届いた、または税務調査の連絡があった
9. 売却前後に揃えておきたい資料
海外不動産の申告を正しく行うために、次の資料を売却の前後で揃えておきます。
- 取得時の売買契約書、決済明細、仲介手数料や現地の取得税の領収書、取得時の送金記録
- 取得日・譲渡日・譲渡費用の支払日それぞれの為替レートの記録
- 賃貸していた場合は、過去の不動産所得の申告書と減価償却の明細(損益通算否認額を含む)
- 譲渡時の売買契約書、決済明細、仲介手数料・現地の税金・登記関連費用の領収書
- 現地で課された税金の申告書・納税証明・源泉徴収の明細(外国税額控除用)
- 自宅として住んでいた場合は、居住の事実を示す現地の資料(住民登録、公共料金の明細など)
- 売却代金の送金記録、または海外口座の残高が分かる書類(国外財産調書用)
現地の専門家(不動産業者、現地の税理士・会計士)と日本の税理士の両方に関わる論点が多いため、売却前から資料の受け渡しを整理しておくと、申告時の負担が軽くなります。
よくある質問
現地で税金を払っていれば、日本での申告は不要ですか?
不要にはなりません。日本の居住者(非永住者以外)は、海外不動産の譲渡益についても日本で申告する必要があります。現地で課された税金は、外国税額控除の対象となるものについて、控除限度額の範囲内で日本の所得税から控除することで二重課税を調整します。
取得費や売却代金は、どの為替レートで円換算しますか?
取得価額は取得時、譲渡価額は譲渡時の取引日のレートで換算し、換算レートは取引日の仲値(TTM)によるのが原則です。売却代金の外貨を直ちに円転した場合はTTB、円を外貨に換えて直ちに取得代金を支払った場合はTTSによることもできます。取得時のレートが分からない場合は、当時の公表レートを金融機関のデータなどで確認します。
円安で円換算の利益が出ました。為替差益は雑所得ですか、譲渡所得ですか?
不動産の取得から売却までの為替変動による差額は、譲渡所得の計算に含まれます。別途、雑所得として区分するものではありません。一方、売却代金を外貨で受領した後、その外貨を保有して後日円転した場合には、外貨を取得した時点から円転時までの為替差損益が、譲渡所得とは別に原則として雑所得の対象になります。
損益通算の否認を受けていた国外中古建物を売却しました。取得費はどうなりますか?
令和3年分以後に生じなかったものとみなされた減価償却費相当額は、売却時の取得費の計算において減価償却費の累計額から除きます。つまり、否認された部分は取得費として残ります。過去の申告書から否認額を集計しておく必要があります。
海外赴任中に住んでいた自宅を売却しました。3,000万円控除は使えますか?
居住用財産の3,000万円特別控除は、居住用財産が日本国内にあるものに限られないため、海外の自宅にも適用を受けられる余地があります。なお、10年超の軽減税率の特例は国内の自宅に限られます。住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であることなど、国内の自宅と同じ要件を満たす必要があり、確定申告が前提です。居住の事実を示す現地の資料を揃えておいてください。
売却代金を海外の口座に置いたままです。それでも日本で申告が必要ですか?
必要です。日本に送金するかどうかにかかわらず、売却した年分の譲渡所得として申告します。海外口座に置いた代金は、CRS参加国・地域の報告対象口座であれば残高情報が日本の国税庁に提供され、5,000万円超の国外財産があれば国外財産調書の記載対象にもなります。
まとめ:現地課税で終わりではない。為替・取得費・外国税額控除を整えて日本で申告する
日本の居住者(非永住者以外)が海外不動産を売却した利益は、国内不動産と同じく分離課税の譲渡所得として日本で申告が必要です。5年判定は譲渡年の1月1日で行い、長期なら20.315%、短期なら39.63%の税率が適用されます。取得価額は取得時、譲渡価額は譲渡時の取引日のレートで円換算し、為替変動による差額は譲渡所得に含まれます。国外中古建物の損益通算否認を受けていた方は、否認された償却費を取得費から控除しない点が重要です。
現地で課された税金は外国税額控除で調整し、海外の自宅であれば3,000万円特別控除の適用余地もあります(10年超の軽減税率は国内の自宅に限られます)。売却代金の送金や海外口座の残高、国外財産調書の異動から売却は把握され得るため、「現地で払ったから終わり」という前提は成り立ちません。
取得時と譲渡時の資料、為替レート、現地税の証明を揃え、売却した年分に正しく申告することをおすすめします。申告していない年分がある方は、税務調査の事前通知を受ける前の自主的な見直しで、加算税の負担を抑えられる可能性があります。
関連する記事もあわせてご覧ください。
海外資産の売却は、国際的な情報交換の進展により調査の検討対象になりやすい分野です。税務調査への対応全般については、「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもご覧ください。
引用・参考文献
- 所得税法第7条(課税所得の範囲)、第33条(譲渡所得)、第38条(取得費)、第57条の3(外貨建取引の換算)、第60条(贈与等により取得した資産の取得費等)、第95条(外国税額控除)
- 所得税基本通達57の3-2(外貨建取引の円換算)、95-14(外国所得税が減額された場合の特例の適用時期)
- 国税庁質疑応答事例「イギリスから帰国した居住者がイギリス国内で居住の用に供していた資産を譲渡した場合」
- 租税特別措置法第31条(長期譲渡所得の課税の特例)、第31条の3(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)、第31条の4(長期譲渡所得の概算取得費控除)、第32条(短期譲渡所得の課税の特例)、第35条(居住用財産の譲渡所得の特別控除)、第39条(相続財産に係る譲渡所得の課税の特例)、第41条の4の3(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例)
- 国税庁タックスアンサーNo.3560「居住者が海外の不動産を売却した場合の課税関係等」、No.3261「建物の取得費の計算」、No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」、No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」、No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」、No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」、No.3302「マイホームを売ったときの特例」、No.1240「居住者に係る外国税額控除」、No.7456「国外財産調書の提出義務」
- 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第5条・第6条
- 国税庁「国税庁レポート2026」(CRS情報の受領件数、国外送金等調書の提出枚数)
- 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月)
- 国税通則法第65条(過少申告加算税)、第66条(無申告加算税)、第68条(重加算税)、第70条(国税の更正、決定等の期間制限)
- 市田佳祐ほか『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)
この記事を書いた人
市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。

