財産債務調書を出さないとどうなる?|提出義務・加算税・税務調査を元国税調査官が解説

著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)

「税務署から『財産債務調書の提出について』という文書が届いたが、出していない」
「所得が2,000万円を超えたが、自分が財産債務調書の対象になるのか分からない」
「出していない年分があると、税務調査で不利になるのか知りたい」

会社の売却や不動産の譲渡で大きな所得が出た方、株式や不動産を長く保有してきた方から、このような相談を受けることがあります。財産債務調書は、所得税の申告書とは別に提出する「財産と債務の一覧」ですが、制度を知らないまま提出していない方や、届いたお知らせをそのままにしている方が少なくありません。

私は大阪国税局で富裕層に対する調査事務などに従事していた、国税OBの税理士です。この記事では、財産債務調書を出さないとどうなるのか、誰に提出義務があるのか、そして税務調査の現場で調書がどのように使われるのかを整理します。

結論:刑事罰はないが、申告漏れがあれば加算税が5%重くなり、出していれば5%軽くなる

先に結論をまとめます。

  • 財産債務調書を出さなくても、国外財産調書のような刑事罰の規定はない
  • ただし、出していない(または記載が漏れている)財産・債務に関して所得税の申告漏れが生じた場合、その部分の過少申告加算税・無申告加算税が5%加重される
  • 逆に、期限内に提出した調書に記載のある財産・債務に関する所得税・相続税の申告漏れは、加算税が5%軽減される
  • 税務署は、調書がなくても国外送金等調書やCRS情報、不動産登記情報などから保有財産の推移を把握する手段を持っている。私の調査経験上、調書を出していないこと自体より、他の情報と申告内容が食い違っているときに調査の検討が深まる
  • 過去分は期限後でも提出できる。更正・決定を予知してされたものでなく、かつ調査通知前の提出であれば、期限内提出とみなされ加算税の特例を受けられる場合がある

この記事でわかること

  • 財産債務調書とは何か、国外財産調書と何が違うか
  • 調査官が財産債務調書をどう使うか(元調査官の内側視点)
  • 提出義務がある人の基準(所得2,000万円超×財産3億円以上、財産10億円以上)
  • 記載する財産・価額の考え方と、記載を省略できるもの
  • 出さなかった場合の加算税の加重と、出した場合の軽減
  • お知らせが届いたとき、過去分を出していないときの整理方法

1. 財産債務調書とは何か

(1)制度の概要

財産債務調書は、一定の所得・財産がある方が、その年の12月31日時点で保有する財産の種類・数量・価額・所在と、債務の金額を記載して税務署に提出する調書です。根拠は「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(以下「国外送金等調書法」)第6条の2で、平成27年分から従来の「財産及び債務の明細書」を改組する形で始まりました。

所得税の確定申告書が「1年間の収入と経費」の申告であるのに対し、財産債務調書は「年末時点の残高」の申告です。この二つを並べることで、所得と財産の動きが整合しているかを検討できる仕組みになっています。

(2)国外財産調書との違い

よく混同されるのが国外財産調書です。国外財産調書は、その年の12月31日において合計5,000万円を超える国外財産を保有する居住者(非永住者を除きます)が提出するもので、対象は国外財産に限られます。一方、財産債務調書は国内・国外を問わず財産と債務の全体が対象で、一定の所得・財産基準に該当する場合のほか、財産が10億円以上である場合にも提出義務が生じます。

両方の提出義務がある場合、国外財産調書に記載した国外財産については、財産債務調書への明細の記載を省略し、その価額の合計額を記載する取扱いになっています。また、後述するとおり、国外財産調書には不提出や虚偽記載に対する罰則がありますが、財産債務調書にはその規定がありません。

2. 調査官が財産債務調書を重点的に確認するポイント(元調査官の内側視点)

(1)所得の累積と財産の増減が見合っているか

毎年の申告所得を積み上げた金額と、財産の増加額が大きく食い違っていないかは、基本的な検討事項です。申告所得に比べて財産が大きく増えていれば、申告されていない収入や、贈与・相続による取得の可能性が検討されます。逆に、高い所得が続いているのに国内の財産が増えていなければ、資金の行き先(国外の口座、家族名義の財産、貸付金など)が確認の対象になります。

(2)他の情報との突合

税務署には、財産債務調書のほかにも財産に関する情報が集まります。国外送金等調書(100万円を超える国外送金・受領について金融機関から提出される調書)は令和6事務年度で約923万枚が提出され、CRS(共通報告基準)に基づく非居住者金融口座情報は101か国・地域から約275万件を受領しています(国税庁レポート2026)。このほか、不動産の登記情報なども確認材料となるほか、株式・配当や生命保険については各種の法定調書が税務署に提出されます。

調書を提出していない方でも、これらの情報から一定の財産状況は把握され得ます。調書がある場合は、記載内容とこれらの情報の乖離がないかが検討されます。

(3)相続が発生したときの照合

財産債務調書は、提出した本人の相続が発生したときにも使われます。被相続人が生前に提出していた調書に記載のある財産が相続税の申告書に現れていなければ、その財産がどこへ行ったのか(生前の贈与、名義変更、費消)を確認する出発点になります。

(4)調査現場から見た実感

私が大阪国税局で富裕層に対する調査事務に従事していた経験から言えば、財産債務調書を出していないこと自体が直ちに調査の理由になるというより、出していないうえに、国外送金や不動産取引などの他の情報と申告内容との間に説明のつかない食い違いがある場合に、検討が深まる傾向がありました。調書を出している方については、記載内容が申告や他の情報と整合していれば、財産面の検討はむしろ短く済むこともあります。

なお、国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、所得税の調査等の件数は73万6千件、追徴税額は過去最高の1,431億円でした。同資料では富裕層に対する調査の実績も公表されています。これらは調査対象として選定された事案の実績であり、調書の提出者・未提出者の調査確率を示すものではありません。

3. 財産債務調書の提出義務がある人

提出義務の基準は、令和5年分以後、次の二つの類型があります。いずれかに該当すれば提出義務があります。

(1)所得2,000万円超で、財産3億円以上(または国外転出特例対象財産1億円以上)

所得税の確定申告書を提出する必要がある方(または一定の所得税の還付申告書を提出できる方)で、その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日において、次のいずれかに該当する場合です。

  • 財産の価額の合計額が3億円以上
  • 国外転出特例対象財産(有価証券、未決済の信用取引・デリバティブ取引など)の価額の合計額が1億円以上

ここでいう所得金額には、給与や事業所得だけでなく、株式や不動産の譲渡所得などの申告分離課税の所得も、原則として特別控除後の所得金額で含まれます。会社を売却して株式譲渡益が出た年、不動産を売却した年など、その年に限って基準を超える方が少なくありません。

(2)財産10億円以上の居住者(所得基準なし)

令和5年分以後は、その年の12月31日において10億円以上の財産を有する居住者は、その年の所得金額にかかわらず提出義務があります。所得が少ない年でも、資産規模だけで対象になる類型です。

(3)判定の注意点

財産の価額は、債務を差し引く前の総額で判定します。借入金で購入した不動産があれば、その不動産の価額そのものが判定に含まれます。また、令和5年分以後、相続が開始した年に相続や遺贈で取得した財産については、その年分の調書の判定と記載から除くことができます。相続開始年の申告実務に配慮した取扱いです。

4. 記載する財産・債務と価額の考え方

(1)記載事項

記載するのは、12月31日時点の財産の種類・数量・価額・所在と、債務の金額です。財産には、土地・建物、預貯金、有価証券、暗号資産、貸付金、生命保険に関する権利(解約返戻金相当額など)、書画骨とう、自動車などの動産が含まれます。事業用・家事用の区別はなく、いずれも対象です。

暗号資産については、国外の取引所に保有していても、日本の居住者については国外財産調書の対象になりません(暗号資産の所在は保有者の住所で判定されるためです)。一方、財産債務調書では記載の対象になります。

(2)価額は時価または見積価額

価額は、12月31日時点の時価または見積価額で記載します。国税庁の「財産債務調書制度(FAQ)」には見積価額の算定例が示されており、たとえば土地・建物は固定資産税評価額を基にした金額、非上場株式については、売買実例価額等がない場合には、直近の決算書等に基づく帳簿純資産価額に持株割合を乗じる方法なども認められています。相続税評価額のような厳密な評価を求める制度ではなく、合理的な方法で見積もった価額で足ります。

(3)記載を省略・簡略化できるもの

令和5年分以後、記載の簡略化が拡充されています。「その他の動産」に区分される家庭用動産については、一個または一組の取得価額が300万円未満であれば、年末の見積価額を10万円未満として取り扱うことができ、財産債務調書への記載を省略できます(現金、書画骨とう・美術工芸品、貴金属類などは原則として別の区分です)。

また、青色申告決算書または収支内訳書の「減価償却費の計算」欄に記載している事業用の減価償却資産については、一定の場合、国内・国外に区分してその価額の総額を記載することが認められています。預貯金などについても一定の記載の簡略化が認められています。

5. 提出期限と提出方法

財産債務調書は、所得税の納税地等を所轄する税務署に、財産債務調書合計表を添えて提出します。提出期限は、令和5年分以後、その年の翌年6月30日です(令和4年分以前は3月15日でした)。

提出は書面のほか、e-Taxでも行えます。提出期限を過ぎても提出自体は受け付けられます(期限後提出の扱いは第7章で説明します)。

6. 財産債務調書を出さないとどうなるか

「出さないとどうなるか」を、法律上の効果に分けて整理します。

(1)刑事罰の規定はない

国外財産調書については、正当な理由なく期限内に提出しなかった場合や虚偽の記載をして提出した場合に、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という罰則が設けられています(国外送金等調書法第10条)。これに対し、財産債務調書にはこのような罰則規定がありません。出さなかったこと自体で処罰されることはない、というのが法律上の整理です。

(2)申告漏れがあった場合、加算税が5%加重される

財産債務調書の提出がない場合、または提出した調書に記載すべき財産・債務の記載がない場合に、その財産・債務に関して所得税の申告漏れが生じたときは、その部分に係る過少申告加算税または無申告加算税が5%加重されます(国外送金等調書法第6条の3)。たとえば、通常10%の過少申告加算税が15%になるイメージです。

この加重は「申告漏れがあった場合」に限られます。財産債務調書を出していないだけで、新たに税額が生じたり、加算税が課されたりするわけではありません。なお、亡くなった方に係る所得税の申告漏れは、この加重の対象から除かれています。

(3)逆に、出していれば加算税が5%軽減される

提出期限内に提出された財産債務調書に記載がある財産・債務に関して、所得税または相続税の申告漏れが生じたときは、その部分に係る過少申告加算税または無申告加算税が5%軽減されます。通常10%の過少申告加算税が5%になるイメージです。相続税については、被相続人が提出していた調書に記載のある財産が相続税の申告から漏れていた場合に、相続人の加算税が軽減される形で働きます。

財産債務調書は「出さないと不利益がある」制度であると同時に、「出しておくと有利になる」制度でもあります。

(4)重加算税との関係

財産の存在を隠蔽・仮装したうえで申告していた場合には、加算税の加重とは別に、重加算税の問題が生じます。重加算税は、課税標準等の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて申告した場合等に課されます。単なる計上漏れや見解の相違だけで直ちに適用されるものではありません。財産債務調書を出していないことだけを理由に重加算税が課されることもありません。

(5)調書がない状態では、説明の負担が重くなる

法律上の効果ではありませんが、調書を出していない場合には、税務調査で財産の取得時期や取得原資について、より詳しい説明を求められることがあります。毎年の調書があれば、その記録が自分の手元にも残ります。

7. お知らせが届いたとき、過去分を出していないときの整理

(1)「財産債務調書の提出について(お知らせ)」の性格

税務署は、確定申告書に記載された所得金額などから提出義務があると見込まれる方に、財産債務調書の提出を案内する文書を送ることがあります。この文書は、調査の事前通知ではなく、提出を促す案内(行政指導)の性格のものです。届いたからといって調査が始まるわけではありませんが、税務署が対象と見ていることの表れです。放置せず、対象かどうかを確認して対応してください。

(2)対応の手順

対応は、次の順で進めるのが実務的です。

  • 対象の判定:その年分の所得金額(退職所得を除く各種所得金額の合計)と、12月31日時点の財産の価額の合計を確認する
  • 財産の棚卸し:不動産、預貯金、有価証券、暗号資産、貸付金、生命保険、家庭用動産(一個または一組の取得価額が300万円以上のものなど)、債務を一覧にする
  • 価額の算定:固定資産税評価額、年末の残高証明、取引所の残高、決算書などの資料を集めて見積価額を決める
  • 作成・提出:財産債務調書と合計表を作成し、書面またはe-Taxで提出する

(3)過去分を出していない場合

提出期限を過ぎた財産債務調書でも提出できます。また、その提出が、税務調査により更正または決定があるべきことを予知してされたものではなく、かつ、その財産・債務に係る所得税または相続税について調査通知を受ける前に提出された場合には、期限内に提出されたものとみなされ、加算税の特例(5%軽減)を受けられる場合があります。過去分の提出は、遅れていても意味があります。

過去分を作成する際には、あわせて所得税の申告漏れがないかを点検してください。財産の棚卸しをすると、申告していなかった利子・配当や、譲渡所得の計上漏れが見つかることがあります。税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は課されません(延滞税は別途生じます)。

申告そのものをしていない年分がある場合は、無申告加算税の問題になります。実地調査に係る調査通知(対象税目・対象期間等の通知)を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は原則5%です(延滞税は別途生じます)。

調査通知を受けた後、調査による決定を予知する前の期限後申告では、令和5年分以後、50万円以下の部分10%・50万円超300万円以下の部分15%・300万円超の部分25%、決定を予知した後・決定後は同15%・20%・30%と、対応が遅れるほど段階的に重くなります(過年度分は法定申告期限により区分が異なります)。なお、繰り返し無申告となっている場合や帳簿の提示等がない場合には、別途加重措置が適用されることがあります。

(4)財産の棚卸しは相続対策にもつながる

財産債務調書のために作った財産一覧は、そのまま相続の準備資料になります。財産の全体像が分かれば、相続税の概算、生前贈与の検討、遺言の作成といった次の判断がしやすくなります。

次のような方は、早めに税理士へご相談ください。

  • 税務署から財産債務調書のお知らせが届いたが、対象かどうか判断がつかない
  • 会社売却や不動産売却で所得が大きく増えた年があり、調書を出していない
  • 過去分の調書とあわせて、申告漏れがないか点検したい

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8. 税務調査につながりやすいケースと備え

(1)検討対象になりやすい状況

財産債務調書との関係で税務調査の検討対象になりやすいのは、次のような状況です。

  • 会社売却や不動産売却で所得が急増した年に、財産債務調書の提出がない
  • 国外送金等調書やCRS情報に現れる国外の資金移動・口座残高と、申告内容や調書の記載に乖離がある
  • 被相続人が提出していた財産債務調書の財産と、相続税の申告財産に乖離がある
  • 提出された調書の財産の増加が、申告所得では説明できない

資産規模の大きい個人に対する調査の考え方は、富裕層への税務調査の記事で詳しく解説しています。

(2)お尋ねから調査へ

実地調査の前に、税務署から「お尋ね」と呼ばれる文書が届くことがあります。財産の取得資金や国外送金の内容を確認する内容が多く、回答の仕方によってはその後の対応が変わります。詳しくは税務署から「お尋ね」が届いたらの記事をご覧ください。

調査の対象となる年分はケースによって異なりますが、法律上、増額の更正・決定ができる期間は原則5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年です。詳細は税務調査は何年分さかのぼるかの記事で整理しています。調査では預貯金口座の入出金も確認の対象になります(税務調査と通帳)。

(3)日頃の備え

備えとして有効なのは、次の三つです。第一に、財産一覧を毎年更新し、取得時期・取得原資・価額の根拠資料を一緒に保管すること。第二に、家族への資金移動は贈与契約書や振込記録を残し、贈与税の申告が必要なものは申告しておくこと。第三に、国外の口座・不動産・保険は、現地の残高証明や契約書を日本で保管しておくことです。

よくある質問

財産債務調書の対象かどうかは、どう判定しますか?

その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ12月31日時点の財産の価額の合計額が3億円以上(または国外転出特例対象財産が1億円以上)であれば対象です。また、令和5年分以後は、所得にかかわらず12月31日時点で10億円以上の財産を有する居住者も対象です。財産の価額は債務を差し引く前の総額で判定します。

財産債務調書を出さないと罰則はありますか?

国外財産調書と異なり、財産債務調書には不提出や虚偽記載に対する刑事罰の規定はありません。ただし、出していない財産・債務に関して所得税の申告漏れが生じた場合には、その部分の過少申告加算税・無申告加算税が5%加重されます。逆に、期限内に提出した調書に記載のある財産に関する申告漏れは5%軽減されます。

国外財産調書を出していれば、財産債務調書は不要ですか?

不要にはなりません。国外財産調書は国外財産だけが対象で、財産債務調書は国内外の財産と債務の全体が対象です。両方の提出義務がある場合は両方を提出しますが、国外財産調書に記載した国外財産については、財産債務調書への明細の記載を省略し、価額の合計額を記載する取扱いになっています。

提出期限を過ぎてしまいました。今から出す意味はありますか?

あります。期限後に提出した財産債務調書でも、その提出が更正・決定を予知してされたものではなく、かつ、その財産・債務に係る所得税・相続税について調査通知を受ける前に提出された場合には、期限内に提出されたものとみなされ、記載のある財産に関する申告漏れについて加算税の5%軽減を受けられる場合があります。過去分の作成にあわせて、所得税の申告漏れがないかも点検しておくことをおすすめします。

記載を間違えたり、財産を書き漏らしたりした場合はどうなりますか?

記載がない財産・債務に関して所得税の申告漏れが生じた場合、その部分の加算税が5%加重される対象になります。見積価額の合理的な範囲での誤差が直ちに問題になるものではありませんが、記載すべき財産を漏らしていることに気づいたら、訂正した調書を提出しておくことをおすすめします。

財産債務調書は相続税の税務調査に影響しますか?

影響します。被相続人が生前に提出していた財産債務調書は、相続税の申告内容と照合される資料になります。調書に記載のあった財産が申告から漏れていれば確認の対象になる一方、その申告漏れに係る相続人の加算税は5%軽減されます。生前の調書は、相続人にとって財産の全体像を把握する資料にもなります。

まとめ:財産債務調書は「出さない不利益」と「出す利益」の両方がある

財産債務調書を出さなくても刑事罰はありませんが、財産に関する所得税の申告漏れがあった場合の加算税は5%重くなります。逆に、期限内に提出した場合や、一定の要件を満たす期限後提出が期限内提出とみなされる場合には、所得税・相続税の申告漏れに係る加算税が5%軽減されます。

税務署は、調書がなくても国外送金等調書やCRS情報、登記情報などから財産の動きを把握する手段を持っています。私の調査経験上、調書を出していないことより、他の情報と申告内容が食い違っていることのほうが、調査の検討を深める要因になります。お知らせが届いた方、所得が急増した年に調書を出していない方は、過去分の提出とあわせて申告漏れの有無を点検し、必要があれば税務調査の事前通知を受ける前に自主的に是正することをおすすめします。

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財産債務調書や国外財産調書の提出義務は、資産規模の大きい個人に対する税務調査と密接に関係する論点です。税務調査への対応全般については、「大阪の税務調査に強い国税OB税理士」のページもご覧ください。

引用・参考文献

  • 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第5条(国外財産調書の提出)、第6条(国外財産調書に係る加算税の特例)、第6条の2(財産債務調書の提出)、第6条の3(財産債務調書に係る加算税の特例)、第10条(罰則)
  • 国税庁タックスアンサーNo.7457「財産債務調書の提出義務」、No.7456「国外財産調書の提出義務」
  • 国税庁「財産債務調書制度(FAQ)」
  • 国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月)
  • 国税庁「国税庁レポート2026」(国外送金等調書の提出枚数、CRS情報の受領件数)
  • 国税通則法第65条(過少申告加算税)、第66条(無申告加算税)、第68条(重加算税)
  • 市田佳祐ほか『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)

この記事を書いた人

市田佳祐(いちだ けいすけ)
税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。
共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。