外資系企業のRSU・ストックオプションの確定申告と税務調査|元国税調査官が解説

著者:市田佳祐(税理士・元国税調査官)

「外国親会社からRSUを受け取ったが、日本で確定申告が必要なのか分からない」
「海外赴任中に付与されたストックオプションを、帰国後に行使した。どこまで日本で課税されるのか知りたい」
「日本法人の源泉徴収票に株式報酬が載っていないので、そのままでよいのか不安」

外資系企業では、現金給与とは別にRSU(Restricted Stock Unit)やストックオプションなどの株式報酬が付与されることがあります。海外勤務者に限らず、日本で勤務する従業員が外国親会社から直接付与を受けるケースもあります。

株式報酬の税務では、付与、権利確定、権利行使、株式交付、売却のどの段階なのか、その時点の居住者区分、どの勤務期間の対価なのかを分けて確認する必要があります。

私は大阪国税局で個人課税や富裕層に対する調査事務に従事した後、税理士として税務調査への対応に強みを持っています。この記事では、日本勤務中のケースから海外赴任・帰国をまたぐケースまで、RSU・ストックオプションの確定申告と税務調査を整理します。

結論:RSU・ストックオプションは「外国親会社から付与された」だけでは日本課税を判断できない

RSUやストックオプションは、外国親会社から付与されたという理由だけで日本の課税対象外になるものではありません。日本の居住者である場合は、非永住者に関する課税範囲などの例外を除き、国外で支払われる給与等も日本の課税対象となり得ます。

Vestによって株式を受け取る権利が確定するRSUでは、Vest時が収入計上時期となります。ただし、日本の所得税法にRSUを一律にVest日課税とする専用規定があるわけではありません。Vest後にも追加条件がある場合などは、株式の引渡請求権がいつ確定するかをPlan DocumentやAward Agreementから確認して判断します。

税制非適格ストックオプションは、雇用関係等に基づいて付与された場合、原則として権利行使時の経済的利益が給与所得となり、その後の株式売却時に別途、株式等の譲渡所得等を計算します。一方、日本の税制適格SOは一定の要件の下で行使時課税が繰り延べられます。

海外赴任の前後をまたぐ場合は、居住者・非居住者の区分と、その株式報酬がどの勤務に対応するかを分け、必要に応じて租税条約も確認します。

この記事でわかること

  • RSUとストックオプションの違い
  • RSUの収入計上時期の考え方
  • 税制適格・非適格ストックオプションの課税時期
  • 外国親会社から受ける株式報酬と確定申告
  • 海外勤務期間をまたぐ場合の日本課税
  • 帰国後にVest・行使した場合の注意点
  • 株式売却時の取得価額と為替換算
  • 法定調書、国外財産調書、税務調査で確認される資料

第1章 RSU・ストックオプションとは?

(1)RSUは将来株式等を受け取る株式報酬

RSUは、一定の勤務期間や業績条件などを満たした場合に、将来、会社の株式等を受け取る株式報酬制度です。典型的にはGrant(付与)の後、勤務条件等を満たすとVest(権利確定)し、株式が交付されます。

ただし、Vestと株式交付が同日とは限りません。追加条件がある制度、株式交付が繰り延べられる制度、現金決済型などもあるため、「RSU」という名称だけで課税時期を決めることはできません。

(2)ストックオプションは一定価格で株式を取得する権利

ストックオプションは、あらかじめ定められた価格で株式を取得できる権利です。日本の税務では、日本法上の税制適格SOと、それ以外の税制非適格SOで課税時期が大きく異なります。

外国でISOなどの税制優遇を受けていることや、会社資料に「Qualified」と記載されていることだけで、日本でも税制適格SOになるわけではありません。日本の租税特別措置法上の要件を確認します。

(3)Grant・Vest・Exercise・Saleを分ける

Grantは権利の付与、Vestは権利確定、Exerciseはストックオプションの権利行使、Saleは株式売却です。

RSUでは株式等を受け取る権利がいつ確定したか、SOでは行使時と売却時が重要になります。課税時期と株式売却時の譲渡所得を混同しないことが基本です。

第2章 調査官が重点的に確認するポイント

外国親会社から直接株式報酬を受けるケースでは、日本法人の源泉徴収票だけでは全体像を確認できないことがあります。税務上は、制度資料、勤務歴、証券口座、給与資料を時系列でつなげて整理することが重要です。

(1)Award Agreement・Plan Document

まず確認するのは、Grant Notice、Award Agreement、Plan Document、Vesting Schedule、Exercise Statement、株式交付明細などです。

RSUの課税時期は、単に「Vest」という表示だけでなく、どの時点で株式の引渡請求権等が確定する制度なのかを確認します。税務大学校の研究資料でも、個別規定のないインセンティブ報酬は所得税法36条の一般原則に基づき、株式の引渡請求権等が確定する時点を検討する考え方が示されています。なお、同資料は研究論文であり、法令解釈通達そのものではありません。

(2)源泉徴収票と株式報酬の明細

外国親会社から直接付与された株式報酬が、日本法人の源泉徴収票に反映されていない場合があります。しかし、源泉徴収票への記載の有無と、日本で課税されるかどうかは別問題です。

外国親会社から受ける給与等が日本で源泉徴収の対象とされていない場合には、その所得を含め、所得税法120条・121条に従って確定申告義務を判定します。「源泉徴収票に載っていないから非課税」でも、「載っていないから常に確定申告が必要」でもありません。

(3)外国親会社等の経済的利益に関する法定調書

一定の外国親会社等から対象となる役員・使用人が経済的利益の供与を受けた場合には、その人が勤務する内国法人や外国法人の国内営業所等の長に「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」の提出義務が生じることがあります。

国税庁の様式では、権利の種類としてストックオプション、制限株式、制限株式ユニットなどが例示されています。ただし、所得税法228条の3の2の要件に該当することが前提であり、外国親会社から受ける株式報酬がすべてこの調書で税務署に報告されるわけではありません。

(4)日本勤務・海外勤務の期間

海外赴任をまたぐ場合は、Grant日、出国日、帰国日、Vest日、Exercise日、Sale日を時系列に並べます。その上で、その報酬がどの勤務に対応するか、各時点の居住者区分を確認します。

私が大阪国税局で調査事務に従事していた経験から言えば、株式報酬は一つの資料だけで判断せず、勤務歴、付与契約、給与資料、証券口座の数字がつながるかを確認しておくことが重要です。

(5)国外財産調書

外国株式だけでなく、外国法人のストックオプションやRSUに関する権利も、国外財産調書の論点となる場合があります。国税庁のFAQでは、ストックオプション等の権利について年末価額の算定方法が示され、RSUについても同様に算定する取扱いが示されています。

ただし、RSUを保有していれば一律に記載するという意味ではありません。国外財産調書の提出義務があるのは、原則として非永住者を除く居住者で、その年の12月31日時点における国外財産の価額の合計額が5,000万円を超える場合です。その上で、国外財産への該当性、年末時点の権利の状態や価額を確認します。

国外財産調書の提出要件や未提出時の注意点は、「国外財産調書の未提出と税務調査」でも詳しく解説しています。

第3章 RSUはいつ日本で課税される?

(1)Grant時に直ちに課税されるとは限らない

RSUはGrant時点では、将来株式等を受け取るための条件が残っていることが一般的です。そのため、Grant日だけを理由に給与所得を計上するのではなく、いつ収入の原因となる権利が確定したのかを確認します。

(2)RSUはVest時が収入時期となることがあるが、契約により異なる

Vestによって株式を受け取る権利が確定するRSUでは、結果としてVest時が収入計上時期となります。

ただし、Vest後にも追加条件がある場合、株式交付が繰り延べられる場合、現金決済型である場合などは結論が変わり得ます。日本の所得税法にRSUを一律にVest日課税とする専用規定があるわけではないため、Plan DocumentやAward Agreementに基づき、株式の引渡請求権等がいつ確定するかを確認します。

(3)給与所得となる金額と円換算

RSUがVest時に給与課税され、その時点で株式が交付される一般的なケースでは、Vest時に取得する株式の時価相当額が給与所得の収入金額の基礎となります。一方、株式の引渡請求権が確定する時期と実際の株式交付時期が異なる制度では、収入時期だけでなく、その時点で取得する経済的利益の内容と評価額も契約内容に応じて確認します。

外貨建ての株式報酬は、原則として収入計上日のTTM(電信売買相場の仲値)で円換算します。為替相場は原則として主たる取引金融機関のものを使用しますが、合理的な金融機関等の相場を継続して使用することも認められています。TTB・TTSや月・週平均等を使用できる特例は適用対象となる所得が限定されているため、給与所得となるRSU・SOに一律に適用することはできません。

第4章 ストックオプションはいつ日本で課税される?

(1)税制非適格SOは原則として行使時に課税

国税庁No.1543では、税制非適格SOについて、雇用関係等に基づいて付与された場合、原則として権利行使時の経済的利益が給与所得になるとされています。

基本的な計算は、

(権利行使時の株価-権利行使価額)×株式数

です。その後に株式を売却すると、売却時には別途、株式等の譲渡所得等を計算します。

なお、退職後行使など、職務遂行との関連が認められない一定の場合には所得区分が異なる例外もあります。

(2)税制適格SOは行使時課税を繰り延べる

租税特別措置法29条の2の要件を満たす税制適格SOは、一定の要件の下で行使時の経済的利益への課税が繰り延べられ、株式売却時に行使益部分を含めて株式等の譲渡所得等として課税されます。

この場合、売却時の取得価額は原則として権利行使価額です。外国法上の優遇制度と、日本の税制適格性は別に判定します。

第5章 日本勤務中に外国親会社からRSU・SOを受けた場合

日本で勤務している従業員でも、外国親会社からRSUやSOを直接付与されることがあります。日本の居住者である場合、外国法人から支払われたという理由だけで日本の課税対象外になるものではありません。

確認すべきなのは、源泉徴収票だけではありません。株式報酬の年間明細、Vest・Exercise履歴、外国親会社のTax Statement等と照合し、日本で課税される給与等が申告に反映されているか確認します。

源泉徴収の対象とされない外国親会社からの給与等がある場合には、給与所得者に対する20万円以下の申告不要制度をそのまま適用することはできません。その外国給与の金額が20万円以下であっても、所得税法120条の確定申告要件を満たす場合には確定申告が必要です。

第6章 海外勤務期間をまたぐRSU・SOの日本課税

(1)居住者区分と所得の源泉を分ける

非永住者以外の居住者は、原則として国内外のすべての所得が日本の課税対象です。非永住者は国外源泉所得について課税範囲が限定され、非居住者は原則として国内源泉所得のみが日本の課税対象です。

そのため、「海外勤務中にもらったから日本では非課税」「帰国後に行使したからすべて日本源泉」と一律に判断することはできません。

(2)海外勤務按分は制度・条約ごとに確認する

非居住者が国内外双方の勤務に基因する給与を受ける場合、所得税基本通達161-41には国内勤務部分を按分計算する取扱いがあります。

また、国税庁の日米ストックオプションの質疑事例では、付与から行使までの期間のうち日本勤務期間に対応する部分を国内源泉所得としています。ただし、この取扱いは当該SOと日米租税条約を前提とした事例です。

RSUについて一律にGrantからVestまで、すべてのSOについて一律にGrantからExerciseまでを按分期間とするものではありません。報酬制度、対応する勤務期間、居住者区分、適用租税条約を確認します。

非居住者の課税範囲や海外移住・出国時の税務については、「非居住者に税務調査は来る?」もあわせてご覧ください。

(3)国外払いでも日本の源泉徴収が生じる場合がある

非居住者に対する株式報酬のうち、日本勤務に対応する部分が国内源泉所得となる場合、国外で支払われるからといって日本の源泉徴収が生じないとは限りません。非居住者に国内源泉所得を国外で支払う場合でも、支払者が日本国内に住所・居所または事務所等を有するときは、所得税法212条2項により国内で支払われたものとみなされ、源泉徴収が必要となることがあります。

国税庁の日米ストックオプション事例でも、米国法人が日本支店を有していたため、日本支店に源泉徴収税額の納付義務が生じる取扱いが示されています。実際の判断では、支払者、国内拠点の有無、報酬の支払主体、国内源泉所得の範囲、適用租税条約を確認します。

第7章 海外赴任から帰国した後にVest・行使した場合

帰国して日本に生活の本拠を戻した場合、通常は帰国後に居住者となります。日本国籍を有する人は所得税法上の非永住者には該当しないため、帰国して居住者となった場合は、原則として帰国後の国内外の所得が日本の課税対象となります。

ただし、海外勤務に対応する株式報酬が外国でも課税される場合があります。日本と外国で同じ経済的利益に課税が生じる場合は、外国所得税に該当するか、国外所得金額、控除限度額、租税条約などを確認して外国税額控除を検討します。

外国税額控除は、外国で払った税金がそのまま日本の税額から控除される制度ではありません。一定の控除限度額があり、控除余裕額・控除限度超過額には3年間の繰越制度があります。

外国籍の人が帰国・転勤して日本の居住者になった場合は、非永住者に該当する可能性があるため、国外源泉所得の範囲や国内払い・国内送金も別途検討します。

海外から帰国した後の申告や海外資産の整理は、「海外から帰国した人の税金と税務調査」で詳しく整理しています。

第8章 RSU・SOで取得した株式を売却した場合

(1)給与課税と株式売却は別に計算する

RSUや税制非適格SOで給与課税が生じた後に株式を売却した場合、給与所得とは別に株式等の譲渡所得等を計算します。給与課税済みの経済的利益を、売却時にもう一度すべて譲渡益として計上しないよう取得価額を確認します。

税制非適格SOについては、国税庁No.1543で、売却価格から権利行使時株価を差し引いて譲渡所得等を計算する取扱いが示されています。一方、税制適格SOは取得価額が原則として権利行使価額となります。

RSUについても「Vest日の株価が常に取得価額」と決めつけず、株式を取得した時点と給与所得として認識した価額を確認します。一般の株式取得価額の規定では、購入等以外の方法で取得した株式は、一定の場合を除き取得時の通常要する価額が基礎となります。

(2)外国株式は取得時と売却時をそれぞれ円換算する

外国株式の譲渡所得は、取得価額と譲渡価額をそれぞれ適切な時点の為替相場で円換算して計算します。売却日の為替レートだけで取得価額まで換算するものではありません。

外国株式の保有期間中の為替変動部分を別に雑所得へ切り分ける必要はなく、円換算した株式等の譲渡所得等に反映されます。

第9章 RSU・SOの申告漏れに気付いた場合

過去年分の申告を確認するときは、Grant、Vest、株式交付、Exercise、Saleの履歴、株価、為替レート、日本・海外の勤務期間、外国での課税資料を年分ごとに整理します。

外国で税金を払っている場合でも、日本の申告が不要とは限りません。逆に、日本で課税される金額と外国で課税された金額が同じとは限らないため、外国税額控除も個別に計算します。

申告漏れがあれば、修正申告や期限後申告を検討します。単にRSU・SOの申告方法を誤ったことだけで直ちに重加算税となるものではなく、隠蔽・仮装の有無が重要な論点です。

外国親会社等の株式報酬について法定調書が提出される場合もありますが、全件が一律に把握される制度ではありません。「海外の証券口座だから確認されない」と考えるのではなく、申告内容と客観資料の整合性を確認してください。

海外送金が税務調査でどのように確認されるかについては、「海外送金は税務署にどう把握される?」も参考にしてください。

よくある質問

Q1. 日本勤務だけでもRSUは確定申告の対象になりますか?

日本勤務中でも外国親会社からRSUを付与されることがあります。源泉徴収票に記載されているかどうかだけでは判断せず、日本で給与所得等として課税される金額と、所得税法上の確定申告義務を確認します。

Q2. RSUはVestした日に課税されますか?

Vestによって株式を受け取る権利が確定するRSUでは、Vest時が給与課税の収入時期となります。ただし、一律にVest日で決まるわけではありません。Vest後に追加条件がある場合などは、Plan DocumentやAward Agreementから株式の引渡請求権等がいつ確定するかを確認します。

Q3. 税制非適格ストックオプションはいつ課税されますか?

雇用関係等に基づいて付与された場合、原則として権利行使時の経済的利益が給与所得となり、その後の株式売却時に別途、株式等の譲渡所得等を計算します。

Q4. 海外勤務中に付与されたRSUを帰国後に受け取った場合は?

帰国後の居住者区分だけでなく、その報酬がどの勤務期間に対応するか、外国での課税、適用租税条約を確認します。外国籍の人は非永住者に該当するかも検討が必要です。

Q5. 外国親会社のRSU・SOは税務署へ報告されていますか?

一定の要件を満たす場合には、勤務先の内国法人等に法定調書の提出義務が生じることがあります。ただし、外国親会社から受ける株式報酬がすべてこの調書の対象となるわけではありません。

Q6. 過去のRSU・SOを申告していませんでした。どうすればよいですか?

契約書、Grant・Vest・Exercise・Sale履歴、株価、為替レート、勤務期間、外国課税資料を年分ごとに整理し、申告漏れとなる所得を確認します。必要に応じて修正申告・期限後申告や外国税額控除を検討します。

まとめ:RSU・SOは「権利がいつ確定し、どの勤務の対価か」を分けて確認する

RSU・ストックオプションの日本課税は、外国親会社から付与されたという事実だけでは決まりません。RSUは株式の引渡請求権等がいつ確定するか、SOは税制適格・非適格の別と行使時・売却時を確認します。

海外勤務をまたぐ場合は、居住者区分と報酬の源泉を分け、制度内容と租税条約に応じて日本勤務部分を検討します。外国で課税されている場合は外国税額控除、年末に外国株式や権利を保有する場合は国外財産調書等も確認します。

過去の申告に不安がある場合は、源泉徴収票だけでなくAward Agreement、株式報酬明細、証券口座、勤務歴をそろえ、申告内容との整合性を確認することが重要です。

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引用・参考文献

この記事を書いた人

市田佳祐(いちだ けいすけ)

税理士。市田税理士事務所代表(大阪市)。平成23年に大阪国税局入局後、令和5年6月まで国税職員として勤務し、同年8月に税理士登録(登録番号151935、近畿税理士会所属)。大阪国税局では資料調査課にて国際課税や富裕層に対する調査事務に従事したほか、総務課、個人課税課において税務行政に関する事務に従事。1級FP技能士。

共著に『質問応答記録書のポイントと税理士の対応策』(税務研究会出版局、2025年12月)、『税務弘報』2026年3月号(中央経済社)に寄稿。